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外れスキル【分身】は装備も増やせたので、追放された俺は一人軍隊でダンジョン配信したら企業案件が止まりません  作者: 月影光貴


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第25話 企業案件:MA-RG01P

 律を除いたいつものメンバーで、那由多の部屋に集まっていた。


 そして今、レイ、美琴、ヴェルナ、那由多の4人が堪能しているのは、那由多が企業案件で稼いだ金で買った1瓶35000円の青森産リンゴジュースである。


「いやー、レベチ! 甘い飲み物は堪らんねぇ〜♪」


 トロリと濃厚でフルーティーな味わいが口いっぱいに広がる。


『私も、ご主人を経由して得る味の情報は堪りません!』


「いや、だからってジュースに十何万も使うなよっ!」


 美琴が部屋の隅に並んだ、多種多様な空き瓶を見ながらツッコむ。


「まあ、本人が満足するのが1番じゃねぇの?」


 そう言いながら、意外にもチビチビと飲んでいるのはヴェルナだ。


「そうね。でも糖尿病には気をつけなさい。……まあ、運動しているアンタなら大丈夫でしょうけど」


 レイは遠慮なくグビグビ飲んでいる。


「デブになったら恥ずかしいけど、将来は避けられぬデブ親父になるんだろうなぁ……あ、マギアアームズから連絡だ」


 那由多のスマホに通知が届く。


 画面を確認すると、マギアアームズから案件の案内が来ていた。


「マギアアームズから案件だ。なるべく早く来てほしいらしいから、ちょっと行ってくる。親には言っとくから、好きに俺の部屋で溜まっててくれ」


 そう言って那由多は着替えようとする。


 だが、自分以外が全員女性だということに気づかず、その場で上半身の服を脱ぎ始めた。


「ばっ、ばか! 着替えるにしたって、異性がいるんだから気をつけろ!」


 美琴が思わず目を逸らしきれずに叫ぶ。


「あぁ、悪い。見たくないもの見せたな」


 那由多はそう言って、服を持って廊下へ出ていった。


「やっぱりアイツの身体は引き締まっているな。甘いもの好きだというのに」


 ヴェルナが感心したように呟く。


「美琴、顔赤いわよ」


「うっさい! レイも人のこと言えないでしょ!」


 そんなやり取りをしていると、着替えを終えた那由多が戻ってくる。


「じゃあ、行ってくるわ」


「いえ、私も着いて行くわ」


「ナユタンのDランク初ダンジョンだからね〜。しかも今回は案件。また何かあったら嫌だから着いてく!」


「同上」


「お前ら……」


 こうして那由多は、レイたち3人を連れてマギアアームズ本社へ向かうことになった。

 レイがいるおかげで移動は一瞬。

 光速移動によって、4人はあっという間にマギアアームズ本社へ到着した。


 そのまま研究室へ案内されると、担当の研究者がやってくる。


「Dランク昇格、おめでとうございます。弊社としても大変喜ばしく思います」


「ありがとうございます!」


 すると、別の研究者たちが大きなケースを運んできた。


 ドスンッ!


 机の上に置かれたケースは、見るからに重そうだ。


「これですか?」


「そうです」


 研究者が指紋認証を行う。

 ロックが解除され、ゆっくりとケースが開かれた。


「こちらがMA-RG01Pです」


 ケースの中には、巨大な銃器が収められていた。


「……簡単に言えば、魔導レールガンですね。いつも通り、科学と魔法の融合です」


 研究者が説明を始める。

 エネルギー源は魔石による魔力と電力。

 特殊な合金で作られた弾丸を高速で射出し、その威力は凄まじい。


 ただし、当然ながら欠点もある。

 チャージ時間が長い。

 反動が強い。

 そして、とにかく重い。


「現状では小型化が難しく、1人での運用は想定していません」


「じゃあ、何故自分に?」


「神楽さんの分身で、その欠点を補っていただきたいのです」


 研究者は真剣な顔で続ける。


「複数人による運用を前提とした場合、この兵器が実戦でどこまで通用するのか。その確信が欲しいのです」


「なるほど。分身なら人手不足も解決できますからね」


「はい。まさにそこです」


 そうして那由多たちは、魔法&射撃演習場へ移動した。


「よっこいしょ」


 那由多はMA-RG01Pを持ち上げ、そのまま肩に担ぐ。


「まあ、割と持てる範囲かな?」


「それ、1つで100kgを軽く超えているんですけどね……」


 研究者たちは、那由多が持ち上げられること自体は予測していた。

 だが、まるで重さを感じていないように扱う姿は想定外だった。


 一方、レイたちはというと――


「まあ、那由多だし」


「ナユタンなら普通じゃない?」


「いつものことだな」


 完全に慣れていた。


「じゃあ、試しますね」


 那由多が引き金を構える。


「チャージして……長いな。15秒もかかるのか」


 銃身が徐々に発光していく。


「発射!」


 ドォンッ!!


「うわっ!?」


 強烈な反動で那由多の身体が跳ね上がった。


 だが、なんとか姿勢を立て直す。


「すっげぇ反動……!」


 そして放たれた弾丸は、厚さ約13cmの鉄板を容易く貫通した。


「威力はやはり素晴らしいですね!」


 研究者たちの顔が輝く。


「では、早速行ってきます!」


「えっ、もうですか?」


 那由多はMA-RG01Pを軽々と肩に担ぐと、そのまま演習場を後にする。

 レイたちも続いていった。


 取り残された研究者たちは顔を見合わせる。


「カンタレラは、彼に何を注入したんだ?」


「わからないな……あれだけ身体能力が向上するなら、何かしら代償があってもおかしくないはずだが……」


「まあ、神代工業のことだから安全基準のテストはクリアしているだろう。認めたくはないが、真っ当な会社だからな」


「それより、我々の兵器を世界中が注目している彼の配信で披露できるんですよ」


「ああ。楽しみだな」


 こうして、那由多たちはダンジョンへ向かった。

 そして、那由多はいつものように、適当に配信タイトルを入力する。


『マギアアームズの案件』


 配信開始。


「どうもー! 今日はレイ、美琴、ヴェルナがいるよ!」


 那由多はカメラドローンを掴み、3人を映す。


「今日もただの見張りよ」


「何かあったら、もう我慢しないけどね」


「私のことは放っておけ」


〈ナユタン保護者の会〉

〈那由多はマジで危なっかしいからな〉

〈マギアアームズの案件って久しぶりじゃん〉


「そうそう。んで、これが今日のメインのMA……なんだったっけ?」


『案件でそれはないでしょ! ご主人! MA-RG01Pですよ!』


「あ! ネアが教えてくれたよ。MA-RG01Pです! ごめんなさい!」


〈体内にも保護者おるやんけ〉

〈てかデカくね? なんで平気な顔して持ってるの?〉

〈カンタレラの薬ってそんなに身体強化されんの!?〉


「あー……それは、確か元々の身体機能が優れていたから相性が良かったらしい」

「んで、武器の説明は――」


 那由多は視聴者に向けてMA-RG01Pの性能を説明していく。


 そして説明を終えると、そのままダンジョンの奥へ進んでいった。


「そうだ! 剣は置いてきました!」


『馬鹿!』


「……てか、忘れただけです」


『ホント馬鹿!!』


 ネアがわざわざ作ったスピーカーから怒鳴り声が響く。


「そうです……」


〈フェムトマシンあって良かったな〉

〈ジェミニの時みたいになるなよ〉

〈英語のコメントも結構流れるな〉


 そんなやり取りをしていると、前方からホブゴブリンの群れが走ってきた。


「動きが微妙に速い奴に、これを当てるのか……」


 那由多はMA-RG01Pを見る。

 チャージには15秒。

 その間、相手が止まってくれる保証はない。


「……そうだ!」


 那由多はニヤリと笑った。


「分身!」


 光が走り、那由多の姿が次々と増える。

 6人全員がMA-RG01Pを構えた。


「これなら15秒なんて関係ない!」


 6人の那由多が、それぞれタイミングをずらしてチャージを開始する。


 1人がチャージしている間、残りの5人が周囲を警戒する。

 チャージが終われば発射。

 そして次の1人が撃つ。

 また次が撃つ。

 

 まるで人間ではなく、巨大な砲台が6基並んでいるかのようだった。


「レールガン照準!」


 1人目が構える。


「撃てぇー!!」


 ドォンッ!!


 ホブゴブリンが吹き飛ぶ。


「次!」


 ドォンッ!!


「次!」


 ドォンッ!!


 次々と放たれる弾丸が、ホブゴブリンの群れを一掃していく。


〈はい火力バカ〉

〈買いたくなる威力だけど持てねぇよ……〉

〈複数人で持つのを想定した持ち手っぽいしな〉


「今回は威力のテストです! なので、まだ一般販売はされないんじゃないかなと!」


 レイが補足する。


「それに弾も特殊合金だからね。あと型番の最後のPはプロトタイプって意味でしょうから、販売はまだ先でしょうね」


〈うーむ……金ならあるのに〉

〈まあ、どうせ高級そうだし趣味程度の探索者にはいらないかな〉


 そんな話をしていると、奥からサイのような巨大な魔物が何匹も現れた。


「おっ、また来たか」


 那由多は笑う。


「まあ、続けて来たなら捌こうか!」


 すでにチャージを終えていた5人が構える。


「撃てぇー!!」


 ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!


 続けざまに放たれた弾丸が魔物たちを一掃する。


「ひゅ〜!! 最高だぜ、これ!」


〈久々に無双していて気持ちいい〉

〈苦労しているし、たまには楽しても良いとされている〉

〈Good!〉

〈保護者組、空気やね〉


「あーしらの出番がないのが1番だけど、暇だナ〜」


 美琴はスマホを取り出し、戦う那由多をバックに自撮りを始める。


「そもそもレイと美琴は歳下なのに、保護者扱いなのか」


「まあ、私たちの方がまだ流石に強いからね」


 そんな会話をしている間にも、那由多たちは1発ずつ撃ちながら進んでいく。


 6人がそれぞれチャージするタイミングをずらしているため、15秒というチャージ時間がまったく問題になっていない。


「ナユタ5、発射!」


 ドドドドドン!!


 魔物が吹き飛ぶ。


「そして俺、発射!」


 ドォン!!


 最後の魔物も倒れた。


〈マジの1人軍隊やな〉

〈火縄銃の使い方みたい〉

〈たしかに〉

〈分身で装備の欠点全部潰してるの草〉


 そして那由多たちは、ついにボス部屋へ辿り着いた。


「行くぜ! 行くぜ! 行くぜぇー!!」


 那由多が扉を蹴破る。


 カメラドローンが即座に解析を開始した。


『対象:鏖殺魔人カネイジ』

『推奨ランク:Dランク以上』

『推奨人数:フルパーティ』


 部屋の中央に立っていたのは、3mはある巨大な人型魔物だった。

 赤い身体に、異様なほど発達した剥き出しの赤い筋肉。


「グロっ!?」


 美琴が思わず声を上げる。


〈こいつか〜。見た目肉なのに硬いんだよな〉

〈確かアメコミに似たのがいたから命名されたんだよな〉

〈そいつジェミニの時の化け物と同じで手足伸びるよ!〉


「なるほどな……」


 那由多はMA-RG01Pを構える。


「ナユタ5! 突っ込め!」


 5人目の那由多が走り出す。


「俺たちはチャージして発射!」


 ナユタ5はチャージ中のレールガンを一旦置き、両手をフェムトマシンで覆う。


 そしてカネイジへ突っ込んだ。


「おおおおっ!」


 両腕の刃を振るう。

 しかし――


 ガキィン!


「なっ!?」


 容易く弾かれた。

 その直後、カネイジの拳がナユタ5の脇腹へ叩き込まれる。


「ぐっ……! なんのこれしきっ!」


 ナユタ5の身体が吹き飛んだ。

 だが、その間にも残りの5人はチャージを終えている。


「準備完了!」


 那由多が叫ぶ。


「撃てぇー!!」


 ドドォン!!


 5発の弾丸が同時に放たれた。

 カネイジは両腕を交差して防御する。

 しかし――


 ズガガガガンッ!!


 5発の特殊合金弾が防御を貫き、カネイジの巨体を大きく揺らした。


 膝をつく。

 だが、まだ倒れない。


「やべっ!」


 那由多が叫ぶ。


「ナユタ5のレールガン!」


 吹き飛ばされていたナユタ5が、すでに立ち上がっていた。

 足元に置いていたMA-RG01Pを拾う。


「チャージ完了!」


「これで終わりだぁ!!」


 ドォンッ!!


 最後の1発が放たれ――。

 カネイジはその場に崩れ落ちた。


『分析! 対象制圧完了です!』


『圧勝でしたね!』


「決着ぅーっ!!」


「……」


「……」


 レイと美琴は、口を開けたまま固まっていた。


「バカみたいな武器だな」


 ヴェルナは感心したように呟く。


「6発だけでケリついたね……」


〈十分すぎる〉

〈Dランクで持ってくるものじゃない〉

〈6発だけ()〉

〈この雰囲気、マギアアームズは責任取れ〉


 その配信を見ていたマギアアームズの研究者たちは、大喜びしていた。


「やはりフルパーティ程度の人数で運用するのが良さそうだな!」


「やったな! これで大きさと重量さえクリアできれば、十分ヒット商品を狙える!」


「いや、待て」


 別の研究者が口を挟む。


「彼の魔力量は世界レベルだ。もしかすると、彼自身の魔力が混ざったことで威力が上がっているのかもしれない」


「なら、それを仕様にしましょう!」


「仕様に?」


「魔石だけではなく、使用者自身の魔力も込められるようにするんです。魔力量が多いほど強力になる兵器なら、探索者向けの武器としても差別化できます!」


「……なるほど」


 研究者は顎に手を当てる。


「それでいくか」


 こうして、MA-RG01Pの開発方針は新たな方向へ進み始めた。

 その頃、那由多たちは配信を終え、マギアアームズ本社へ戻っていた。


「ありがとうございました!」


 那由多がMA-RG01Pを返却する。


「こちらこそ、ありがとうございました」


 研究者は武器を受け取ると、少しだけ意味深な笑みを浮かべた。


「……ところで、神楽さん」


「はい?」


「今度は、神楽さん専用の装備を作りたいと思っています」


「俺……専用?」


 その言葉を聞いた瞬間。

 那由多の目が輝いた。

 専用装備。

 なんという心躍る響きだろう。

 今まで愛用してきた魔剣もある。


 だが、そろそろ魔剣以外にも自分専用の装備が欲しいと思っていたところだった。


「やったぁ!」


 那由多は思わず拳を握る。

 こうして那由多は、着実に仕事をこなしながら、企業の広告塔としても成長していく。


 そして那由多専用装備が、一体どんなものになるのか。

 それは、まだ誰も知らない。

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