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外れスキル【分身】は装備も増やせたので、追放された俺は一人軍隊でダンジョン配信したら企業案件が止まりません  作者: 月影光貴


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第15話 W案件の始まりと新たな同居人

同居するしかなし。

「えっ、本当にどちら様??」


 母は口元に手を当て、ヴェルナを上から下まで見つめる。


「身長も那由多より少し低いくらいって……」


「コ、コスプレ??」


 父は2本の角と黒い翼を見て、困惑した表情を浮かべていた。

 

「今も言ったけどヴェルナって子……子? ヴェルナ、何歳?」


「……今年で19になる」


「おお、同い年か!」


 那由多は妙に嬉しそうに頷く。


「ということでよろしく!」


「いや、もう少し説明しなさいよ!」


「まあまあ。少し長くなるけど……」


 魔族だということ、別世界から来た人とは違う存在、奴隷だったことなど全て説明した。

 話を聞き終えた両親の表情が変わる。


「……それでこの子を助けたの?」


「助けたっていうか……普通に人だしね。現代で奴隷とかあり得ないよ」


 その言葉を聞いたヴェルナの瞳に、ほんの少しだけ光が戻った。


「……この世界で奴隷はいないのか?」


「過去にはいたけどね。昔、偉い人たちが制度をなくしたんだよ」


「そうか……」


 ヴェルナは小さく呟く。


「……それなら、私はこの世界に来られた方が僥倖だったのかもしれないな……」


 しかし、その表情はどこか寂しそうだった。


「まあ、難しいことは後でいいって!」


 那由多は明るく声をかける。


「これからは自由なんだからさ! それにただ自由だと放り投げないで責任は取るからさ!」


「責任……自由……」


 ヴェルナは、その言葉を噛み締めるように呟いた。


「でも、いきなり女の子を連れて帰ってくるとか驚くから連絡して欲しかったわね!」


 母が腰に手を当てる。


「本当にびっくりしたんだから!」


「めんごめんご!」


「謝り方が軽い!」


 そう母は笑いつつも怒って言う。

 そしてこの後、急いで服を買いに行くも、やっぱりサキュバスだろと言ってしまいそうなほどに大きな胸と尻にサイズが合わず苦戦。

 

 結果、ヘソ出しにホットパンツというかなり攻めた格好になった。

 だが、本人は満足げだ。

 

「……まあ、本人がいいならいいか」

 

 そして翼の穴は母に加工してもらった。


「今日は疲れたでしょ? 風呂入りな」


「風呂? ああ、助かる」


 数分後。


「使い方がわかんない!」


 全裸で那由多の前に現れたヴェルナに心臓がドキッとして痛む。


「ば、馬鹿! 服着なさいよ!」


「別にお前なら見られてもいい。頼むから一緒に入ってくれ」


「……〜〜っ。わかったよ」


 馬鹿言うな!

 お前の裸で俺の息子が張り切ってんぞ!!

 素数を数えて落ち着くんだ……

 俺は必死に視線を逸らしながら、なんとか風呂場を脱出した。



「この世界の風呂は便利だ!」


 風呂から上がったヴェルナは妙に感動していた。


「それはなにより……」


 気が狂う。

 いや元からかもしれない。


 そして夕食。

 家族に迎え入れた記念ということで、母がいつもより豪華な料理を用意した。

 中でもステーキを見たヴェルナは目を輝かせた。


「……肉。牛か!」


「好きなの?」


「嫌いな奴がいるのか?」


「それはそう」


 ヴィーガンとかベジタリアンはいないのかな。

 そんな贅沢してられないか。


 ヴェルナはステーキを一口食べる。


「……!」


 そして、もう一口。


「美味い」


 さらに一口。


「美味い! 美味い!」


「そんなに!?」


 那由多は思わず笑う。


「この肉が……この世界では楽に……普通に食べられるのか?」


「まあ、毎日がそうではないがな」


「そうか……」


 ヴェルナは乱雑に握るフォークを止めた。


「……あれ?」

 

 ぽつり。

 その頬を涙が伝った。

 


「どうしてだ?」


 ヴェルナ自身が驚いている。


「……なんだこれは??」


「……」


「私は、悲しくなんて——」


 それでも涙は止まらず。


「……苦労したんだな」


 那由多は静かに呟いた。

 そして、ヴェルナの頭をそっと撫でる。


「うぅ……」


 ヴェルナは俯いた。

 父と母は何も言わず、そっと席を外した。

 今は2人きりにしてあげた方がいい。

 そんな配慮だった。


「……いいのか?」


 しばらくしてから、ヴェルナが尋ねる。


「私、がこんな良い環境にいて」


「いいに決まっている。不幸でいなきゃならない理由なんて無いよ」


 那由多は笑った。

 それがヴェルナには眩しかった。


「それに、これから魔族がどう扱われるかも変えていけばいい」


「……変える?」


「俺がもっと有名になって、もっと影響力を持てるようになったらさ」

 

 那由多は拳を握る。

 怒りか悲しみか。


「魔族にも人権が必要だって、堂々と言えるくらいにな!」


「まあ、まずは金を稼がないとな!」


「ふっ……」

 

 ヴェルナが小さく笑った。


「お前は本当に変な奴だ」


「よく言われるよ」


 それにも笑って答えてみせた。


 そして夜。

 空いている部屋がなかったため、ヴェルナは那由多の部屋で寝ることになった。


「俺はソファで寝る。そのベッド臭いかもしれないが使ってくれ」


「なぜだ?」


「いや、流石に来客用ベッドとか無いし」


「このサイズがあれば2人で寝れるだろ」


「……え?」


 ヴェルナは那由多を軽々と持ち上げる。


「うわっ!?」


 そのままベッドへ放り込まれた。


「うぎゃっ」


「じゃあ、明日から本格的にこの世界の説明をしてくれ」


「……お前、意外と強引だな」


「今日は疲れた」


 そう言うと那由多を抱きしめて横になる。


「おやすみ、那由多」


「お、おやすみ……」


 しばらくするとスゥスゥとヴェルナは眠りについた。

 那由多は真横を見て、頬を赤くする。


「……距離感どうなってんだよ……いい匂いする……」


 翌朝。


「……」


 目を覚ました那由多は、隣で眠るヴェルナを見る。

 その顔には、涙の跡が残っていた。


「……元の世界でも、酷い目に遭っていたんだろうな」


 那由多は小さく息を吐く。


「無責任に元の世界に返すのも、違うよなぁ……」


 その時。


「……あ!」


 スマホが目に入る。

 

「そうだ。企業案件!」


 画面を確認すると、SNSの通知に埋もれていた、マギアアームズからの連絡を発見する。

 

『先日はありがとうございました。早速一件、企業案件をご用意しました。既に発送済みですので、本日中に到着する予定です。内容は届いてからのお楽しみということで』


「くぅ〜!!」


 那由多は嬉しそうにスマホを握る。


「こいつらサプライズ好き過ぎだろ!」


 すると隣から声がする。


「……何がそんなに嬉しい?」


「あ、悪い起こしたか。おはよう」


「おはよう」


「仕事が決まったんだよ! つまり金が手に入るってこった!」


 低俗なのは自覚している。

 でも何をするにも金が始まりなんだ、綺麗事だけで生きていけねえ。


「仕事……お前は、この私より身長が高い男だ。狩りでもするのか?」


「そんなところだ」


「お前がいたようなダンジョンは、この世界に何個もある。それを配信しながら攻略して、お金をもらう。それで終わり」


()()()()……? 攻略?」


 那由多はインターネットのことから、何まで朝食を挟み昼食も挟み、この世界のことを教え尽くした。

 スマホ。

 インターネット。

 探索者。

 ダンジョン。

 配信。

 などなど。


「ってなわけ」


「情報の濁流で溺れそうだ」


 角をカリカリと指で弄りながら困り顔のヴェルナ。


「まあ慣れていこう。……あ、俺の友達が家に来る。って律も来るのかよ」


「友達?」


「ああ、全員女で良い奴らだ」


「……全員?」


「うん」


 ヴェルナは少し考えた。


「お前は女とばかりつるむのだな」


「まあ……最近はそうかも?」


 その直後。


 ピンポーン。


「来た!」


 那由多が玄関へ向かう。


「おーい、那由多!」


「お邪魔しまーす!」


「失礼します」


 美琴、レイ、律の三人が入ってきた。


「おお!?」


 美琴がヴェルナを見る。


「何もかもデカっ!? あーし、魔族ってもっと肌が紫とか青とかだと思ってた!」


「美琴、声が大きい」


 レイが注意しながらも、ヴェルナを警戒する。


「……魔族」


「知ってるのか?」


 那由多が尋ねる。


「私の家は名家だから。魔族に関する情報は、一部だけど入ってきていた」


 レイの視線は鋭い。


「魔族は、人間の言葉を使って人間を誘き寄せることがある」


「……」


「子供の泣き声を真似した魔族に誘き寄せられて、ほぼ全滅した探索者パーティもある」


 空気が少し重くなる。

 那由多はヴェルナを見る。


「ヴェルナは違う」


「……私は突然変異の異端者だ」


 ヴェルナが口を開いた。


「人間を狩ることを拒んだから、同族から追放された」


「そしてダンジョンを通じて、この世界に来たってことか」


「そうだ」


 レイはしばらくヴェルナを見つめる。


「……今後も警戒はする」

 

「好きにしろ」

 

「あなたが普通の魔族じゃないと証明できるまではね」

 

「分かったよ」

 

「でも、那由多が信用しているなら、私も頭ごなしには否定しない」

 

「……ああ」


 フン、と鼻を鳴らして顔を背ける。


「でも」


 レイは少しだけ表情を和らげた。


「とりあえず、よろしく」


「……ああ」


 ヴェルナも頷いた。


 その横から、律が興味深そうにヴェルナを観察する。


「角の組成ってどうなってるんだろう」


「律、いきなり研究者モードになるなよ」


「ごめんごめん。差別的な意味はないよ。ただ純粋に興味が――」


「怖いぞ、お前」


「褒め言葉?」


「違う」


 美琴が笑いながら割って入る。


「あ! だったらさ!」


「ん?」


「次の那由多の案件配信にヴェルナも連れてけば?」


「……!」


 那由多の目が輝いた。


「それだ!」


「みんなに魔族がどういう存在なのか見せられるじゃん」


「確かに」


 那由多はすぐにスマートフォンを取り出した。


「一応、マギアアームズに確認を取る!」


 数分後。

 返信が届いた。


『魔族の戦闘データにも興味があります。ぜひ同行をお願いします』


「よっしゃ!」


 那由多が拳を握る。


「これでヴェルナも探索者デビューだな!」


「私が?」


「うん!」


「……分かった」


 すると。


「待って!」


 律が突然スマートフォンを取り出した。


「うちの会社もヴェルナのデータが欲しい!」


「え?」


「今から案件化できるか確認する!」


「おいおい……」


 那由多の顔に、みるみる笑みが広がる。


「ダブルで案件か!」


「お金のことになると、本当に嬉しそうだね」


 美琴が呆れたように笑う。


「そりゃそうだろ!」


 那由多はスマートフォンを掲げる。


「金は力! 力は可能性! 可能性があれば、できることが増える!」


「妙に説得力あるな……」


 ヴェルナが呟く。

 その時。


「……あ!」


 玄関から声がした。


「那由多ー! 荷物届いたぞ!」


「おお! 来たか!」


 那由多は箱へ駆け寄る。

 そこには、見覚えのある企業ロゴ。

 ――マギアアームズ。


「スポンサー最高だぜ!」


 那由多は箱を見つめ、満面の笑みを浮かべる。

 新しい同居人。

 新しい仲間。


 そして、新しい企業案件。

 神楽那由多の探索者生活は、また一段階上へ進もうとしていた。

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