第13話 準決勝だぜ!普通に仲間が強いぜ!
中弛みするからだいぶ端折って準決勝に
「はぁっ!!」
最後の敵を斬り伏せる。
〈またナユタンの勝ちや!!〉
〈今回抜きん出て強いなやっぱり〉
〈ドローンの時みたいな派手さはないけど堅実に攻めるね〉
那由多は魔剣を振り払い、息を整える。
「ふぅ」
そうだ、このVR空間であるのに疲労があるのが気持ち悪いのだ。
これでベスト4進出。
準々決勝突破だ。
「次は準決勝か」
『ベスト4進出チームが決まりましたぁー!』
ギルド公式配信の実況が響く。
『神楽那由多率いるチームも、当然の如く勝ち上がっています!』
「当然って言われると、なんかプレッシャーだなぁ……」
那由多は苦笑。
とはいえEランクになるのは確定だ。
ならば、残る目的は1つだ。
「……早く優勝景品教えてくれないかな」
那由多は本気でそう思っている。
控え室。
那由多はチームのメンバーを見回した。
「Eランクのラインはとうに過ぎ去った!」
拳を握った。
「今回も勝った! 皆さんとなら優勝も夢じゃないですね! 行ってきましょー!!!」
「おー!!」
即席で組まれたチーム。
それでも、ここまで勝ち上がったことで、最初にはなかった一体感が生まれていた。
そんな中で。
『それでは、準決勝を開始します!!』
視界が白く染まる。
次の瞬間。
「へぇ……」
那由多は周囲を見回した。
「今度は市街地戦ね」
立ち並ぶ建物に道路、路地。
森とは全く違うコンクリートジャングル。
そして正面には、対戦相手の5人
相手はバランスの取れた編成か。
運の良いやつらめ。
「剣士、盾役、魔法使い、弓矢使い、あと1人は……」
那由多は目を細める。
「なんだ、アイツは?」
武器がないって事は、美琴みたいな格闘家なのか?
にしては体格が華奢だ。
「戦闘の時間が被って、こいつらのチェックができて無いのがキツいな……」
そう呟いた瞬間カウントダウンが始まる。
そして開幕直後。
武器を持っていない男が、ふわりと宙に浮かび上がった。
「……え?」
男が手を掲げる。
そして、念力のような力が仲間に飛んだ。
「……武闘家ではないな」
那由多はヤバいと直感で感じた。
だから、魔剣をソイツ目掛けて本気の投擲をする。
「うおらぁ!!」
魔剣は風を切り、一直線に飛んでいく。
しかし——
「俺らの核を壊されちゃう困るんだよォ!!!」
盾役の男が人間離れの跳躍をした。
そして速度もまた人間とは思えなかった。
魔剣を盾で弾き飛ばす。
「なっ!?」
弾かれた魔剣が地面に落ちる。
だが――
シュンッ!
魔剣は自らの意思を持つかのように、那由多の手元へ戻ってきた。
これには盾役も驚く。
「剣が戻って行ったっ!?」
盾役が驚愕する。
それを見た宙に浮かぶ男が冷静に言う。
「関係ない」
男は薄く笑う。
「僕の力で君たちは常人のパワーじゃないんだ」
剣士と盾役が構える。
「やってしまえ」
男の声が低くなる。
「僕が血肉沸き立つような戦いを見せてくれ」
剣士と盾役が、一斉に駆け出した。
魔法使いは巨大な炎魔法をチャージ。
弓矢使いは番える。
それを隙と見て、三ヶ島が二丁拳銃を放つ。
だが、弾は当たったにもかかわらず、ポロポロと地面へ落ちていく
「嘘でしょ……」
「効かねえなぁ! そぉらぁ!!」
まずは近くの那由多を捕捉した盾役。
「まずっ……」
言い終わるより早く。
ドゴォッ!!
「ぐぁっ……」
盾役の一撃が那由多を吹き飛ばした。
「那由多さん!」
「司令塔がやられた!?」
仲間たちが焦り動く。
「ガラスの粉塵を吸えっ」
田中がガラスの粉を生成する。
鮫島は地面の中に退避。
中島はパルクールで建物を利用して高所へ退避。
三ヶ島は安全な距離を保ちつつ、ロープを伸ばして剣士と盾役の2人を足止めする。
「くっ……」
「このロープが邪魔だっ!!」
強化された敵2人は必死にロープをちぎろうとするも、千切れた先からまた生えてくる。
下手をすれば裂けた先から複数のロープが生えてくる。
その隙に田中のガラスの粉塵が襲う。
「これでも喰らえ!」
「ごほっ、ぐはっ……あ゛あ゛!!いでぇええ!!」
「ガラスが目と肺にっ!! おがぇっ……」
だがしかし。
「落ち着け」
宙に浮かぶ男が彼らに手をかざす。
すると2人の動きは落ち着きを取り戻した。
「ふぅ……アイツがいてくれて助かったぜ」
「良かったですよ、ホントに」
だが、その瞬間。
「——来るっ!!」
腕を押さえる那由多が叫ぶ。
後方からはFランクに不相応な巨大な炎魔法が迫る。
同時に、大量の矢が雨のように降り注いだ。
「きゃー!!」
田中はガラスで分厚く自分を覆うも溶けたガラスに包まれもがき苦しみリタイア。
『田中選手、強制ログアウト!』
「田中っ!」
中島はなすすべなく矢の雨に飲まれる。
『続いて中島選手、強制ログアウトーッ! これは那由多チーム万事休すか!』
「ああ! 畜生っ!」
那由多は自分自身を盾にして攻撃を受け止める。
「ぐっ……!!」
全身を突き刺す痛みが分身の数だけフィードバックされ顔は歪む。
だが、倒れない。
三ヶ島もロープを建物へ絡め、空中を移動しながら矢を回避していく。
まるで有名な蜘蛛のようだ。
だが、この劣勢な中で鮫島は弓矢使いに奇襲を仕掛けた。
「死ねっ!!」
爪が敵の心臓に届く。
しかし——
「なっ……!?」
弓使いは倒れなかった。
カウンターに短剣を首に刺された。
「わ、私は彼に強化されているからただでは死なないわ……」
そう言うと倒れた。
『おーっと! 両者相打ちです!』
これを聞いた那由多は思う。
「つまり……」
宙に浮かぶ男を見る。
「アイツはバフ役……か……」
マズい。
左腕は開放骨折し、骨が皮膚を突き破って露出している。
分身もその状態で出てしまう。
「厄介だな」
敵は残り4人、対してこちらは2人。
不利としか言えない状況だ。
敵の剣士が笑う。
「どうしたのですか?」
「オラァ! さっきまでの威勢はどうしたどうしたァ!」
那由多は片手で魔剣を握り直した。
「ははっ。俺にはまだ片腕はあるんだよっ!」
虚勢張ったって何にもならねぇが己の鼓舞くらいにはなる。
とにかく盾役が邪魔過ぎる。
あの身体能力は多分やつのスキルも込みだろう。
その時だった。
「戻ったわ」
そこに三ヶ島が戻ってきた。
「あなたの分身や味方が邪魔で使えなかった技が使えるわ」
那由多は目を見開く。
「……! あるのか! 打開策が!」
「えぇ」
三ヶ島は淡々と答えた。
「少し時間を稼いでください」
「どうするんだ?」
「編み物をしますので」
「ん……?」
那由多は一瞬固まった。
「編み物……?」
そして三ヶ島の能力を思い出す。
「あ、ああ!!」
ロープ。
それを編むのか!
「わかった!」
那由多は突撃するために魔剣を構える。
「分身! いいか!?」
分身が現れる。
「何をするか知らないが俺ごと敵を倒せっ!」
「任せて、期待に応えるわ!!」
隻腕状態の那由多5人が飛びかかる。
「どうしたァ!!」
盾役は真正面から攻撃を受け止める。
強い。
正直、イカれてる程に強い。
「くっ」
どこまで強化されているのかはわからない、だが動体視力も異常だ。
なんせ隻腕とはいえ俺の剣を捌き切るなんてFランクにいて堪るか。
「どうした! どうしたァア!!!」
那由多は分身を重ね、攻撃を繰り返す。
しかし、敵の魔法使いのチャージが終えた。
「クバ!!!」
巨大な爆発が巻き起こる。
下級爆発魔法なのに、そんな規模じゃないぞっ!?
ダメだ、分身を盾に——
「うぎゃあああ!!!」
分身全員が炸裂して、その痛みがフィードバックされた。那由多は痛みに倒れ悶える。
「ぐっ……」
敵の剣士が迫る。
「これで終いですよ」
そこに勝ち誇った様に剣士が那由多の両腕を切断する。
「がぁっ! うぅ……いてぇ……」
「味方のバフ役のSSランクの固有スキル【身体強化】があればEランクスキルなんか相手になりませんね」
コメントは大荒れになる。
〈剣士のくせに騎士道精神やら武士道精神がねぇぞ〉
〈ナユタン負けないで!〉
〈那由多のファンやめます〉
〈↑ガキが喚くな、運営は何をしている!〉
〈これが試合か? 必要以上に痛ぶっているだけだ!〉
〈そういうテメェの固有スキルはあんまり戦闘向けじゃないらしいじゃねぇか!〉
それを受けて、実況者が言う。
『ルール上は問題ありません! ですが、かなり苛烈な攻撃ですね!』
剣士の発言に対して、那由多は笑い言う。
「お前は……頭を狙わなかったのが間違いだったな」
魔剣が宙を舞い、那由多の口元へ吸い寄せられる。
魔剣を咥えた那由多は、それで剣士を切り裂いた。
男は膝をつく。
「うごぁっ!! ぐふっ……てめぇ……」
〈うっはwwダサすぎるwww〉
〈悦に浸りすぎたな〉
〈ナユタン口で剣使っても強いのかよ!〉
その時だった。
ズズズズズズズ……。
地面が震える。
那由多の背後から、巨大な影が現れた。
〈なんだ?〉
〈ん???〉
〈デカ過ぎるだろ!!〉
三ヶ島の声が響く。
「今よ! 走れ!!」
三ヶ島の姿は異形な生物になっていた。
大量のロープが絡み合い、組み込まれている。
1本、2本、3本、10本、100本……
それらが巨大な蛇の姿に変わっていく。
「——手編み大蛇!!!」
蛇の鼻の先端に三ヶ島の上半身がついている巨大な蛇が現れた。
それも何十メートルと言うサイズだ。
それが今襲いかかる。
「やっちまえ、三ヶ島!!!」
「残忍な奴には残忍な結末をッ」
即席のチームとはいえメンバーの那由多を嬲られた。
怒らないわけない。
「ぎゃああ!! なんだありゃあ!!」
「ダメだ、傷が開く……」
「何よなんなのよっ!!」
近接の男2人、魔法使いは悲鳴にもならない声をあげて後方に走り逃げ始めた。
だが、蛇の体から伸びた無数のロープが彼らを追いかける。
「逃げられると?」
バフ役は空に飛べば安全だとさらに高度を上げるも足にロープが絡まる。
「ぼっ僕の足にっ!! う、うわぁあああああ!!!」
「捕まえた」
ロープは身体の穴という穴から入り、バフ役は無惨に始末される。
当然、バフも無くなり大蛇に追いつかれる敵の3人。
「うわああああ!!!」
「来るなぁああ!!」
「魔法が効かないっ、助け……」
巨大な大蛇が地面を覆い、地面のコンクリートごと敵を粉砕。
そして——
『敵チーム、全員戦闘不能!!』
静寂。
那由多は呆然と三ヶ島を見る。
「……」
そして。
「なんだよ、最高じゃん!」
那由多が笑う。
「確かに時間はかかるし、仲間がいると邪魔になるけど――」
三ヶ島を見る。
「スゲー技だよ!!」
「あ、ありがとう……」
三ヶ島は少し照れながら答えた。
視界に《VICTORY》の文字が浮かぶ。
こうして――
那由多たちは、決勝進出を決めた。
「俺なんもできなかった……マジでありがとう……」
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控え室。
「俺、今回何にもできなかった……」
深く頭を下げる中島。
「マジでありがとう……」
三ヶ島は機嫌良さそうに言う。
「いいわよ、久しぶりにアレ使えたの楽しかったし」
「あんな死に方体験したくなかった……」
少しトラウマになっているのか震えている田中。
「まさか心臓一突きで死なないなんてね……それより腕切り落とされた痛み大丈夫だった?」
鮫島は嬲られた那由多の心配をする。
「へーきへーき! 慣れてるから!」
那由多は笑いながら言う。
「説得力が違うわね……」
三ヶ島が腕を組む。
「とにかくこれで決勝よ」
「よっしゃ!」
那由多は拳を握る。
しかし、三ヶ島は少し困ったように続けた。
「本当は、私の必殺技は最後まで隠しておきたかったのだけど……」
「まあ、仕方ないな」
「次も勝って、よく分からん報酬を頂くとしよう!!!」
「おー!!」
こうして那由多一行は決勝へと進むのであった。




