サッカー部の撮影
「じゃあ、男手が増えたから。それぞれ、手伝ってもらおうかな。私には川湊君と及林さん、スミレの方には高巻君と江菜、お願いね。」
影陽先輩はそうてきぱきと指示を出す。
そして、それぞれ3人組で各々別れ、僕たち3人の方は運動場の端を歩き、道路があるほうを目指すことになった。
この高校は校舎の西南側に運動場が広がっており、校舎の西側に体育館がある。一応、体育館と運動場の間にはプールがあるようなのだが、老朽化のため現在は使われていない。よって、この高校にはプールの授業がない。
これは本当に良かった。自分の肌を見せるのも少し抵抗があるし、陽キャたちがきゃっきゃっしてるところで、混ざっても行けず、だからといって何かしたいことがあるわけでもない虚無の時間が流れることが目に見えている。
「じゃあ、ここで撮ろうかな。」
影陽先輩はそう言って立ち止まる。
到着したのは運動場の一番奥の角だ。
運動場の向こう側にはフェンスを隔てて一般道路があるのだが、それを背に、運動場全体が撮れる位置で撮影するらしい。
すぐ近くで、サッカー部たちが汗を流しているので、それを撮るのだろう。
影陽先輩がちゃっちゃか三脚を立てており、それの手伝いを及林さんがしていた。
僕は手持無沙汰になり、その光景をボーっとみていた。
……これは僕から指示を仰ぎにいったほうが良いのだろうか。それとも待っていた方がよいのだろうか。
それに、トートバックも持たされているが、これは何用なのだろうか……。
「よし、じゃあ、川湊君。それ持ってきて。」
一人で勝手にあせあせしていた僕に影陽先輩が手招きする。
役割を貰い、僕は心の中でホッとしながら近づいていく。
「ごめん、ちょっとバックを開いてくれる?」
影陽先輩に言われた通り、バックを開けると中には黒いきんちゃく袋のようなものがいくつか入っていた。
先輩はそれをいくつかまさぐりながら、あれでもないこれでもないと悩んでいた。
……こんだけたくさんあったら迷うのは仕方ないと思うんですけど、出来たらもう少し早くしてくれないでしょうか?
……これ結構重くて、腕が持たない。
「よし、これにしよう!」
影陽先輩は元気よくそう言って、一つのきんちゃく袋を取り出す。
中身はカメラのレンズで、テキパキと今カメラについているレンズと交換していった。
「……すごい、高そう。」
「しかもこれ自前の物らしいからな。ねぇ、影陽先輩。」
横から及林さんがそう言ってくる。
一つ上の先輩に対してもその強気な姿勢を取れるのはすごいな……。
引いてしまう気持ちもあるけど、少し羨ましくもある。
「まあ、昔からの趣味でね。親もカメラ好きだから、色んなもの持ってるし。自分の物はこれくらいだけどね。家にはもっといっぱいあるんだよ!今度見に来る?説明したげるよ!」
影陽先輩は意気揚々と僕に問いかける。
キラキラ輝いた笑顔の表情になっており、その顔はなぜか眩しく見えた。
……ああ、これは後ろに西日があるからか。
「いや、ちょっと遠慮しときます……。」
その熱量についていける気がしない。
多分、説明されたところで素っ気ない返事をしてしまうだろう。僕的にはきちんと聞いているつもりなのだが、どうやら周りの人たちはそう受け取ってくれないらしい(経験則)。
それに、まあカメラとか写真とかいうものにさして興味はないし。撮られるのも嫌だし。
「また気が向いたらお願いね!じゃあ、とりあえず私が撮り終わるまで自由にしてていいから!」
僕が断っても関係なく元気はつらつな影陽先輩は撮影の準備にとりかかる。
三脚にカメラを取り付けている様を見ながら、僕は変な空気にならなかったことにホッと胸を撫でおろした。
「あの人、写真に対する熱量がすごすぎるんだよな。」
「そうですね……。」
僕が持っていない部分である。
僕にも影陽先輩みたいに身体から湧き上がる熱意があったなら、違う人生を送れたかもしれないな……。
影陽先輩はウキウキしながら色んな角度から写真を撮っている。
遂には三脚からカメラを外し、手に持ちながら撮り始めた。
まあしかし、あれだけ情熱をもって楽しそうにしている人を見ると、こちらまで楽しい気持ちになってくる。
自然と口角が上がってしまうな……。




