写真部の二人
先に行った二人を追いかける形で、僕と天都先輩二人で歩いていた。
話によると、運動場の近くに写真部の人たちがいるということなので、そこへと向かっていく。
下駄箱から外に出ると、少し強い風が舞った。
学校でも引きこもるような形で校舎の外に出ない僕にとって、少し新鮮なような気がした。放課後も外の風景を身体が感じ取る前に颯爽と直帰してるし。
そして、運動場へと向かう最中、運動部たちの声が徐々に耳へと届いてきた。
普段、ほぼ聞くことがないその喧騒はなぜか少し輝きを持って耳へと入ってくる。別に羨ましいとか僕もあのなかに混ざりたいとかそんな思いは毛頭ないはずなのに。
逆に、今の僕ではあそこに入る資格はないと卑屈な思いをするまである。僕は自分の意志であそこからは離れた人間だ。
この学校は下駄箱から運動場へ行くまでは中庭を通るのが一番早い。
通路脇には少しの緑が広がっており、半分くらい進んだところには右側の校舎と左側の校舎を結ぶ連絡通路があり、その真ん中には自動販売機とベンチがある。
そして、上には渡り廊下が繋がっており、良い感じに日陰になっているのでここで涼む人もいるのではないだろうか。まあ、僕はここに腰を下ろしたことはないので、知らないけど。
「あ、あそこにいるみたいだよ。」
中庭を抜け、運動場のそばにあるベンチに4人の生徒たちがいた。
見ると、高巻先輩と及林さん、そして見知らぬ女子生徒が二人いた。恐らく、写真部の二人だろう。
「いつもいつもありがとうございますぅ。手伝ってもらっちゃって。」
おさげ髪に黒の丸い眼鏡をしている女子生徒が2人に向かってそんなことを言っていた。
首から一眼レフカメラをさげており、十中八九写真部の人だろう。
そして、その横にはもう一人ショートカットの女子生徒がいた。こちらもカメラを持っているので、写真部の人だろう。
「別にいいよ。暇だし、ポイント稼ぎになるしね。」
天都先輩は言いながら、その4人がいるところに向かっていく。
「俺は暇じゃないんだがな。」
高巻先輩は怪訝そうな顔で反論する。
自分の作業しか予定がないというのは、暇ということではないのだろうか。
「そう言いながらいつも手伝ってくれるじゃないですか~。」
おさげの人がそんなことを言いながら高巻先輩に絡んでいた。
チラッと高巻先輩の方を見ると、それはそれはとても嫌そうな顔をしていた。普段も鋭い目つきをさらに細め、顔をそらしている。
……もしかしてこの二人、仲悪いのだろうか。
「あ、紹介するね。新しく部員になった川湊君。多分、頼んだら何でもしてくれる子だから、どんどん頼んじゃって。」
油断していると、天都先輩が突然自己紹介を始めた。
僕は気持ち居住まいを正し、おさげの先輩に向き直る。
……が、天都先輩が突然意味の分からないことを言っていた。
「天都先輩?何でそんなこと言っちゃうんですか?僕、身体動かすこと全般苦手ですよ?」
「あれ?でも、小中時代に運動してたって豪語してたじゃない?」
「……それは。」
確かに、言ってしまっていた。
でもあれは売り言葉に買い言葉で僕の本心としては純度が低い。
……それをここで持ち出すとは……、天都先輩、その表情確信犯ですね?
「あはは。川湊君、面白いね。江菜、良い人が入ってくれたね。」
僕が天都先輩のことを憎らしく思っていると、おさげの人が高らかに笑う。……笑う要素ありましたかね?
このおさげの人からは明るい人という印象を受け、恐らく皆から好かれる人気者なのだろう。
誰にでも分け隔てなく接することができ、知らない人が怖くないのだろう。……ちょっと苦手な人種かもしれない。
「それで評価が上がるのはそこはかとなく嫌なのですが……。」
「大丈夫よ。そこまで面倒なことは頼まないから。」
ニコッとした笑顔でおさげの人はそう返してくれる。
良かった……。薄々冗談と思いつつも、本当だったらどうしようと思ってた。
ちょっとだけ苦手じゃなくなったかもしれない。
「あ、私の自己紹介まだだったね。私は影陽ひまり。江菜と同じ2年生。そして、こっちは同じく2年生の月川スミレ。」
影陽先輩が言い終わると、隣にいた月川先輩は少し顔を赤らめながら控えめにお辞儀をする。
影陽先輩とは対照的に少し大人しい人な印象を受ける。……勝手に少し親近感がわいてます。
「それで、今日も荷物持ち?」
「うん。申し訳ないんだけどねぇ。大会前だから色んな部活の写真を撮らなくちゃいけなくて。HPとか学校誌ように。」
「なるほどね。」
一応、この学校にはホームページと学校誌があり、それぞれ定期的に発信されている。
といってもどちらもそんなに出来が良いものではなく、ちょっとしたものだ。
学校誌のほうはまだそれなりに体裁はなしているのだが、ホームページのほうは10年前以上のものから全くアップグレードされていない感じである。
まあ、だからといって僕が綺麗にできるかと言えば、全くできないので文句を言える立場ではないが。
「いつも顧問の先生に持ってもらってるんだけど、……また腰痛になっちゃって。」
「……まあ、もう驚かないよ。」
天都先輩は珍しく優しい目をしていた。
話を聞いている感じ、写真部の顧問の先生はよく腰を痛めるのだろう。天都先輩は悟りの境地にたどり着いているようである。




