及林さんとの会話
一試合目と二試合目の合間、僕は教室にいた。
特に話す相手もおらず、教室には誰もいないので一人、悠々自適に過ごしてた。恐らく皆は観戦にでも行っているのだろう。エアコン効いてて涼しいし、ここより良いところはないのに。
ただ、そんな時間もあと少し、もうすぐ2試合目が始まる。
……よし、いきますか。
覚悟を決め廊下へと出ると、一人の女子生徒がこちらに歩いて来ていた。
驚いてしまい、反射的にパッと教室に戻ってしまったが、チラッと見えた風貌から知っている人な気がした。
「ああ、川湊か。」
恐る恐る顔を出すと、そこには及林さんがいた。
金色の長い髪をポニーテールのような感じにしており、いつもつけているアクセサリー類はつけていなかった。こういうときは意外と真面目なんだな。
「もうすぐ試合?」
「うん。あと2試合後かな。」
「そっか。あたしももうちょっとで試合なんだけど、地味に期待されてるんだよね。体育でちょっと活躍しただけなのに。」
気だるそうに及林さんは言う。
口ぶりから察するに今から1試合目なのだろう。
僕らのクラスは1試合目は最初のほうだったが、及林さんのクラスは後のほうみたいだ。
「じゃあ、活躍しちゃえばいいんじゃない?」
僕は面白半分でそう言った。
活躍したほうが楽しい部分もあるだろうし。良いのではないだろうか。
ただ、僕の感情半面、及林さんの表情は段々と曇っていった。
「……川湊、あんたも鬱陶しくなったね。」
「いやでも、大多数の人がそう思うんじゃない?活躍したいって。及林さんはそう思わなさそうだけど。」
「……うざ。」
及林さんは曇った表情からさらに眉間に皺が寄る。
やっぱり本心を言葉を精査せずに適当に喋るのは、あまり良くないか。
「で、あんたも活躍できるんじゃない?サッカーやってたんでしょ?」
及林さんは反撃とばかりにそう言って、ニヒルな笑みを浮かべる。
ただ、それに関しては僕には圧倒的な盾がある。
「実は1試合目が終わりまして。僕の活躍もあり、勝ちました。」
「調子乗ってて、ウザさが増してる……。だから、さっきからちょっとテンション高いのか……。……え?ていうか、もう1試合目終わったの?それに活躍って。」
あ、僕今テンション上がってるのか。……ちょっと恥ずかしいな。
「左サイドバックでスタメンで1試合ずっと出ました。」
「……それだけ?」
「うん。」
「あんた、それで活躍ってよく言えたね……。」
及林さんは期待外れとばかりに肩を落とす。
そうは言っても活躍度合いは主観だから仕方ない。
「でも、僕のスペックで考えれば、大活躍じゃない?」
「それはそうね。」
「否定しなくてもいいから、ちょっとは言い淀んでよ……。」
即答された分、傷が深いんですが……。
「あ、あたしももうちょっとで試合だから。」
「了解です。」
及林さんは手をひらひらさせながら、廊下を進んでいく。
それに、ちょっとだけ手を振り返しながら僕も試合のために反対方向に足を向けた……くらいのところで、及林さんの足音が止まった。
僕が振り返ると、及林さんもちょうど振り返ったところだった。
「……まあ、お互い頑張ろう。」
及林さんは斜め上を見ながら、恥ずかしそうに手を上げる。
「……うん。頑張ろう。」
僕は笑みを浮かべながら、同じく手を上げてそう返した。




