来訪者
今日も今日とて部室内は静かだった。
最初の頃はこの静けさがちょっと落ち着かなかったが最近は慣れてきて、良い感じに集中できる空間になっている。
課題も捗るので、毎回それをこなす時間になっている。
もはや、自習室になっているな、ここ。これはある意味私物化しているのかもしれない。
まあ、空間としては心が落ち着く場所となっているのだが、僕の心はここ最近ずっとざわついていた。
右斜め前に見える天都先輩のことを何分かに一回、チラチラ見るようになってしまっている。
あの発言が数日経っても頭から離れない。忘れよう忘れようと思っても、日に日にあの声が記憶領域を支配していき、ずっと頭の中を反芻している。
今でもあの光景を鮮明に思い出せ、悲しそうな諦めているような声がずっと耳の中に住んでいる。
かといって、恐らく僕にできることは何もないだろう。今の最善択は多分、知らぬ存ぜぬを貫き通すことだ。
……まあ、人付き合いが苦手な僕の結論なので、間違っているかもしれないが。
そんなことを考えながらまたぞろボーっと先輩の方を見ていると、突然ドアをノックする音が部室内に響いた。
「失礼します。」
「失礼します。」
そう挨拶しながら、男女の生徒二人が部室内に入ってきた。
男子生徒の方は厳格な人だなという印象で黒ぶち眼鏡をかけている。高巻先輩と雰囲気は似ているが、先輩とは違い風格が漂っており何故か惹きつけられる魅力を持っている。
女子生徒のほうはさらっとした黒髪ロングヘアの人だ。大きな瞳をしており、真顔では怖い印象を受けるが、笑った顔は親しみやすく映る。顔立ちもどちらかといえば、可愛らしいものだ。
この二人は僕でも知っている生徒会長様と副会長様だ。同じ生徒という立場ではあるが、ちょっと恐れ多く感じてしまう。
……こんな近くで見たのは初めてだな。集会のときに見たことあるだけなので、生徒たちの中で格が一番上の人という印象だ。何なら、ちょっと怖くもある。
「……綾利。」
「天都、久しぶりね。」
副会長の顔を見るや否や天都先輩は苦々しい顔をする。対する副会長は微笑を持って挨拶を返していた。
どうやら、副会長と天都先輩は知り合いらしい。というか、学年が一緒だから当たり前か。クラスとかも同じなのかもしれない。
「今日はどういったご用件で?」
このままでは話し合いが進まないと思ったのか、珍しく高巻先輩が問いかける。
高巻先輩も最初の印象のときより社交性があるんだよな。写真部の手伝いをしたときもそこそこ話してたし。
「生徒会のお手伝いをしてほしい。」
生徒会長様が端的に質問に答える。
次は生徒会の手伝いか……。
結構何でも屋と化してないこの部活?最初聞いてた話と違うんですけど。もしかして割とこの部活認知されているんだろうか?それとも、知る人ぞ知る穴場部活にでもなっているのだろうか。まあ、どちらにしても面倒な頼まれごとはごめんである。
まあ、メリットとしては何もない時は私物化できるってところだけど。
しかし、説明会や面接のときの話とは違うブラック企業みたいだな……この部活。ストライキ起こしても文句は言われないだろうか。
「……分かった。」
天都先輩が言い淀みながら了承の意を示す。目線の先には綾利先輩がおり、少し睨んでいるようだった。
この雰囲気から察するに、天都先輩と綾利先輩の間には何かあるのだろうか。
「じゃあ、今から来てくれないか?」
生徒会長のその言葉に天都先輩は頷き、僕ら3人の方を見る。それぞれ首を縦に振って同意の意を示し、そぞろ立って生徒会長たちの後をついていく。
やる気まんまんで向かっている感じをだしてるけど、本心としてはめんどそうだから帰りたいんだよなあ……。
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「向山田先生には話通してるの?」
「ああ、形式上な。いつも二つ返事で了承するから、話通す意味があるのか疑問なところだ。」
……はりぼて顧問だな。




