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なにやぶ。それは青春に馴染めなかった人たちが集まる部活です。  作者: 早瀬 渚
1週間後

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10/24

二人の過去と関係性

「それじゃあ、次行きますか!」


 仕切り直した影陽先輩がそう元気よく声を張り上げる。

 これで終わりではなく、まだ続くようである。

 カメラだけしか持っていない先輩は元気よく駆け足で先に行く。

 はぁ……、ということはまだこれ持ってなきゃいけないのか。しんどい。

 地面に置くのも忍びないと思いずっと肩にかけていたが、なかなかずっしりとくる。


「まだ持つのか……。」


 影陽先輩、もうちょっとこっちの気持ちを汲んでくれないでしょうか……。


「レンズはなかなか重いよな。あたしもこの前持たされたんだが、投げつけてやろうかと思った。」


「いや、そこまでではないんだけど……。」


 それはちょっと乱暴すぎないですか?及林さん?

 少し後方にいた彼女の方を見ると、歩くスピードが上がり、先に行ってしまった。

 ……どうやら、僕の返答が気に食わなかったらしい。


 いつもより地面に足跡をつけながら歩いていると、サッカー部の掛け声が遠くなり、いつの間にか野球部の声が大きくなっていた。

 さきほどの場所から道路と運動場を隔てているフェンス沿いを進んだ一番奥で野球部たちは練習をしていた。


 先ほどと同じように影陽先輩はてきぱきと準備をし、レンズを渡すと僕たち二人は木陰にあるベンチに座ることを許された。


 野球ボールが金属バットに当たる甲高い音が鳴り響く。少し傾いてきた陽に照らされ、少しだけ輝いて見える。ただ、サッカーとは違い野球部たちは長ズボンで練習しているので、暑くて大変そうだなと思う。僕は絶対にやりたくない。見るのは好きだけど。全くしんどくないし。

 部員同士の掛け声や顧問の激も飛ぶ。

 ゴロの処理をミスった部員が顧問から叱咤されている。色々厳しくなってきている時代にあんな汚い言葉使っていいんだな。僕だったら1週間くらい寝込みそう。


 ただ、めんどくさそうにしている部員とかだらだらしている部員とかは誰一人おらず、みな一様にボールを追いかけ練習に取り組んでいる。

 ……僕にはあまりなかった気持ちだな。

 特に結果が出せず、次第に部活に行くのも嫌になっていき、惰性で行っていた僕には眩しく見える。

 皆で一つの目標に向かって悪口も陰口も文句も言わず、頑張ることができるのは本当に良い。見てるこちらも見入ってしまうものがある。


「川湊はサッカーとテニスやってたんだっけ。」


 ふいに及林さんが質問してきた。

 自己紹介の時に一回言っただけなのによく覚えてるな。


「一応。まあ、鳴かず飛ばずだったけど。」


 あまり思い出したくない記憶でもある。

 ずっと落ちこぼれだったからな。


「でも、やめずに続けたんでしょ?」


「惰性でね。」


「それだけでもすごいと思うよ。」


 素直な褒め言葉に僕はちょっとだけ体温が上がった。

 急にどうしたのだろう。

 思わず及林さんを見つめてしまったが、彼女は何事もなかったように前を向いている。

 鋭いが綺麗な目とシャープな輪郭、白い肌が目に入っただけだった。

 時折、風で揺れるピアスだかイヤリングだかが僕の興味をさらに惹きつけていた。


「……そういえば、ちょっと気になったんだけど、バイトまでの暇つぶしなら他にもできるんじゃない?なんでこの部活を選んだの。」


 僕は自分の感情をごまかすように話題を変える。

 さきほど気になったが、聞きそびれた事項だ。この質問をする合理性はあるだろう。


「……家にはうるさい家族がいるし、他に遊ぶところもないからな。それに、外にいると変なやつに絡まれたりするし。あと……」


 及林さんはそこで一度言葉を切る。

 彼女は少し俯き、唇を噛んでいた。

 歯に衣着せぬ及林さんでも言い淀むことがあるんだな。……まあ、誰にでも言いたくない過去の一つや二つあるだろう。


「まあ、一番誰にも干渉されず、自分の時間を過ごせるってだけだ。あたしはあんまり干渉されるのは嫌いだからな。」


 しばらく沈黙していた及林さんだったが、いつもより少し早口でそう捲し立てた。

 それは分かるなと思いながら、僕はうんうんと頷く。


 が、……果たしてそれは僕に対して言っているのでしょうか。確かに、ちょっと踏み込んだ質問したけど。


 しかし、そうだとしてもさきほど及林さんも突っ込んできたので、おあいこのはずだ。うん。


「……実はあなたたち二人は仲良いの?」


 近くで写真をパシャパシャと撮っていた影陽先輩がニヤっとしながらそう聞いてくる。

 そんな事実は全くないので、否定しようと口を開きかけた瞬間、及林さんが先に答えた。


「いや、そんなことないですよ。ただ、川湊が無駄な質問ばかりしてくるので、答えていただけです。それに、こんなヌボーッとしたやつこの前まで知りませんでした。」


 歯に衣着せなさすぎじゃない?この人。


「フフフっ。及林さんが誰かと喋ってるところあんまり見たことないから、仲いいのかなと思ってね。」


 影陽先輩がニコやかな笑顔で僕のほうを見てくる。

 ただ、こちらに問いかけられたところで結論としては変わらない。


「……まあ、仲良くはないですね。実際、ちゃんと喋ったの今日が初めてなので。」


「じゃあ、これからってことね。」


 影陽先輩は含みを持たせた発言をする。


 その発言は色々まずいんではないでしょうか。ほら、及林さんも苦々しい顔してるし。

 これからの関係をほのめかす軽率な発言は、却って気まずくさせるだけですよ?


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