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一角のアネモイ  作者: pandanikus
第2章 スパイダーフォレスト
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第45話 装填

密林の夜が明け、無惨に倒れた戦士たちの亡骸が陽の光に晒される。


怪人ネプチューンが、族長ジョンストンに槍を突き立てる。

ジョンストンは満身創痍ながらも、身をよじり急所を外した。


「くぁっ...!」

槍先の鋭い刃が横っ腹を裂く。


「おやおや。心臓を差し出せばよかったものを。痛いでしょうねえ。」

マンダリンの足元でジョンストンが腹を押さえ悶える。


「魔槍テトラデント。傷口はじっくりと対象を蝕む。よくぞ即死を避けていただきました。開発したかいがあります。」

「殺るなら、殺れ...!」

ジョンストンが断末魔に近い声色を出す。


「ご自分で避けたんでしょう。たっぷりと苦しんでからお逝きなさい。」

ジョンストンにとどめを刺さず、マンダリンとネプチューンが進む。


その先、シャーマン・メリーが隠れていた。

きらびやかな首飾りに結ばれた宝石を握りしめ震える。


「お父様...お父様...。密林の神よ、ホモデラをお救いください...!この私に力を...」


風が一瞬、メリーの頬を撫でた。

丸い目玉の仮面をつけたグランディアトールが音を立てずに駆け寄る。


「兄様...!お父様が...。」

グランディアトールが面を外し、真っ直ぐにメリーを見つめる。


「メリー、よく堪えた。族長がまだ生きてるのが見えた。きっと、助け出せる。」

「あの怪人...恐ろしい...戦ったら終わり...。」


メリーの震える手をグランディアトールが優しく包む。

「兄ちゃんに任せろ。獣 面(トーテム・サージュ)をすべて使えば...」


「すべて...!そんなことしたら、兄様の精神が...」

「戻れなくなるかもしれない。だが、お前を守るためだ。ホモデラを。」

グランディアトールが手に持った仮面を撫でる。


「戦闘後の回復を頼んだ。」

「兄様...。ホモデラの名にかけて。」

メリーの瞳に光が宿る。


グランディアトールが仮面をつけ、怪人たちのいるほうに駆け出していく。



_______



「最後の戦士が来たようです。ネプチューン。」

マンダリンが周囲を警戒する。

ネプチューンが両手で槍を掲げる。


二対の大きな刃と二対の短いトゲが前方に飛び出した魔槍テトラデント。

明け方の淡い日差しが紫がかった黒刃を美しく照らす。


「ン...!?」

マンダリンが死角からの攻撃を寸前で察知し、大きくのけぞる。


攻撃の気配がした方向を見ても、深い森が延々と続いているだけだった。


「ネプチューン、彼の動きを止めてみなさい。」

ネプチューンが槍を強く握り、振り抜く。


死角から現れたグランディアトールが地面に不時着する。

ぶらさがっていた木のツルが、ネプチューンに切断された。

しかし音も立てずマンダリンと距離を詰める。


「――梟 面(オウル・サージュ)


ネプチューンが槍で進路を阻む。

グランディアトールが逆手に構えた短剣を打ち付け距離を取る。


首をかしげるように、大きな丸い目を持つ仮面を揺らす。

顔と仮面の隙間から、濃い煙が漏れている。

その奇怪な姿にマンダリンがたじろぎ後退りする。


今度はグランディアトールが姿勢を低くし、地面を這うようにネプチューンとの距離を詰める。

「ネプチューン、殺ってしまいなさい。」


マンダリンが離れると、テトラデントが円を描くように振り回される。

全身で転げながら、グランディアトールが巧みに回避していく。


「――蛇 面(サーペント・サージュ)


いつの間にか仮面の目つきが鋭く切れ、牙のような意匠を形成している。

ネプチューンは身を翻しテトラデントを全方位に振るう。


「シュルシュル...」

変わった呼吸音と共に、煙が吐き出される。

槍撃が当たらず、ネプチューンが困惑を見せている。


「――豹面(ジャガー・サージュ)


グランディアトールが呟くと仮面の目が見開かれ、瞳孔のような構造が収縮する。

「グルァアア!」

獣のように吠え、ネプチューンに肉薄する。


繰り出された槍を足場にして跳び、短剣を叩き込む。

「ヂャッ」


ネプチューンの額が切り裂かれる。

着地したグランディアトールが再び剣を構えるが、刃が欠けている。


「ガルル...!」

グランディアトールは四つ足でネプチューンに近づき、素手での連撃を繰り出す。


ネプチューンの身体に強烈な拳が叩き込まれていく。

グランディアトールの衣装の鳥の羽が鮮やかに踊る。


一度距離を取り呼吸を整える。

凄まじい体術を浴びたネプチューンは驚きこそすれ、ダメージを負った様子がない。


「グルル...」

仮面から煙を漏らしながら、グランディアトールが息を切らす。


「面白い戦いでしたがネプチューン、終わらせてあげましょう。」

マンダリンが遠巻きに眺め呟く。


「グァウ!!」

グランディアトールが叫び出し飛びかかる。

ネプチューンの刃を躱すも、続けて迫る柄が顔面を強打する。


「バギッ」

仮面が割れ、グランディアトールの顔半分が露わになる。

衝撃で吹き飛び、地面に叩きつけられる。


閉じ込められていた煙のなかに、グランディアトールの血走った目が光る。


ネプチューンがテトラデントを回す音が激しさを増す。

グランディアトールは露出した顔を片手で隠し、口元から更に煙を出した。


呼吸が乱れ、意識が朦朧とするも、グランディアトールは煙を吸い込み、最後の力を得ようとする。

ネプチューンが地面を蹴り、グランディアトールに全力の槍撃を見舞う。


「―――!」

暴風が魔槍を払い除ける。


「シナト」

木の葉が乱れ舞うなか、剣を振り抜いたムサシが着地する。



突如現れた風の戦士の姿に、グランディアトールは目を見張る。

ネプチューンも再度槍を高く構える。


「来ましたか...アネモイ!!」

マンダリンが指先から五本の毒針を射出する。


ミコトがムサシの横に降り立ち、アリコンで毒針をひとつ打ち返した。


「ひっ!」

打ち返された毒針がマンダリンの身体をかすめる。


「一本刺さった。」

ムサシが羽織に刺さった一本を抜くが、その下に纏った五戦士の鎧は傷ひとつついていない。


「ぐ...くそ。」

ミコトは肩に毒針が刺さるも、すぐに片手で抜き捨てた。

アリコンで軽く肩を叩くと、傷口が治癒される。


「治るからって回避を怠るな。」

「わかってる。」

ムサシがミコトに耳打ちする。


「即死してもおかしくない毒ですよ...!?」

木陰に隠れたマンダリンが震えながら呟く。


「聞き覚えがある声だな。」

「出てこいマンダリン!」

ムサシとミコトの声にマンダリンが身を縮める。


「...あなたたちの相手は、私じゃありません。」

テトラデントを回し唸らせながら、ネプチューンがふたりに襲いかかる。


「シュウ!」

「ソク!」

長大な槍の動きをふたりの風が包み込む。

華麗な連携でネプチューンの攻撃に対応する。


「ヘラクレスに槍を持たせたみたいだ!」

「いや遅い。ヘラクレスがここに着く前に仕留める。」


鋭い斬撃とアリコンの打撃が同時に繰り出され、ネプチューンが押される。

「なんと...。短期間でここまで磨きましたか。私も、ネプチューンに加勢いたしましょう。」

マンダリンが呟きながら毒針を一本放つ。


「毒針来た!」

「おぅ!」

ミコトとムサシが躱した毒針が、ネプチューンに突き刺さる。


「ウォ...」

ネプチューンが苦悶の表情を浮かべる。


「魔力注入です...。」

マンダリンの言葉と共に、ネプチューンが震え出す。


「ウワァァァアア!」

ネプチューンが叫び出し、ふたりが距離をとる。


目の色を変えたネプチューンが再びテトラデントを回しはじめる。

「出力上昇か。」

呟いたムサシに、ネプチューンが一瞬で接近する。


ムサシの胸を、魔槍が貫く。

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