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一角のアネモイ  作者: pandanikus
第2章 スパイダーフォレスト
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第44話 主導

喝采のなか、遠征部隊が城門をくぐっていく。

ギデオンが先頭で拳を突き上げ、民を鼓舞する。


ヘラクレスとビノダロスもギデオンの後ろを歩き、その堂々たる風貌を人々の目に触れさせた。

鎧に傷をつけた戦士たちの迫力に皆が目を丸くする。


ムサシもミコトに促され、馬車の上から民に姿を見せる。

多くの黄色い声援がムサシに届いた。


城のほうから、真っ白な人影が走ってくる。


「グラント!」

グラントはヘラクレスに抱きつこうと手を広げかけたが、人々の視線を感じぎこちなく直立した。


見かねたヘラクレスがグラントに近づき、軽々と持ち上げる。

「お!っと!え?」

動揺するグラントを肩に乗せ、ヘラクレスは行進を続けた。


「かわいー!グラント様!」

「ヘラクレス!こっち向いて!」

民の呼びかけに包まれながら、グラントは嬉しいような情けないような顔をする。


「大層な人気だな!子ども戦士!シュッ!」

ギデオンが上機嫌に揺れながら城門をくぐり抜ける。

人々の活気を目にし、ミコトの顔に笑顔が戻っていた。

ムサシも少し口元を緩め、自身を歓迎する街を眺める。


青空の下、色とりどりの織物が風にたなびく。

くぐりぬけた城門が閉じられるまで、ムサシはただその街の色彩に見とれていた。



_______



庭園でギデオン部隊と別れ、ミコトたちは五戦士の間へ向かう。


「グラント、すごい人気じゃないか。」

ミコトの声掛けにグラントが得意げな顔をする。


「剣術の実演が好評でな。」

ホミニスが笑顔で出迎えに現れる。

「剣ジュツ...」

ヘラクレスが口をすぼめて感心している。


「やるなチビ。」

ムサシが呟く横で、リオは不満げな顔をしている。

「よかった。みんな、無事で。」

一同が目を合わせ微笑む。


「実演以外には何もなかったかのう?」

ビノダロスが尋ねる。


「あ...ホ」

「ああ!至って平和。この私がしっかりと見守っていたぞ。」

グラントの声をホミニスが遮る。


「ん?グラント、おぬし」

「グラント、父さんとは毎日稽古かい?」

今度はビノダロスの言葉をミコトが遮る。


「...そ、そうだね。今朝も見てもらったよ。」

「そうか。ホミニス。王の間で少しお茶をしないかい?お土産に温泉まんじゅう持ってきた。父さんにも食べさせたい。」

ミコトがホミニスを真っ直ぐ見つめる。


「お、気が利くな!甘いものは好物だ。お父上も喜ぶだろう。」

満面の笑みのホミニスにミコトがうなずく。


「ムサシも来てくれ。」

「わかってる。」

ふたりは小さく声を交わし、ホミニスと共に王の間へと向かう。



_______



王の間にミコトの声が響く。

「ホモデラ族が襲われている!?」

「落ち着けミコト...!」

フェイフェリスがうろたえる。


グラントが何か言いかけたのを怪しんだミコトが問い詰めると、フェイフェリスがグランディアトールとの面会について明かした。


「たったひとりの、愉快犯の仕業だ。もう確保されているはず。」

ホミニスが淡々と言い放つ。


「ホミニスも、見たでしょ、ヘラクレスの力を。アルテミスも、ニジーロも。部隊を投入しても敵わない敵がこんなにも存在してる。なぜギデオン部隊まで伝令を寄越さない。」

ホミニスは平然と茶をすする。


「ゴロファ殲滅もそうだ。なぜ僕に共有がない?彼らは正当な経緯がある勢力だ。それを国家の一存で抹殺する?それがラーフィール王国のやり方ですか。僕はこんなことをするために、五戦士を引き受けたんじゃない。」

取り乱すミコトをムサシがじっと見る。


「僕らの、ラーフィールの敵は、もっといる。今ラーフィールは危機的状況です。王都で一呼吸置いてる場合じゃない...。」

「ミコトマス、」

ホミニスが口を開く。


「ついこの間までただの“いい人”だったお前が、急に王様気分か?」

ミコトの目が見開かれる。


「たしかに私はお前たちを五戦士に任命した。しかしお前たちが先代のように動けるとは到底思っておらん。

お前たちの動きに関しては私に責任がある。そして、私はその責任のもと、今の五戦士でも国を守れるよう采配をしているんだよ。」


ホミニスがミコトから視線を逸らさず続ける。


「ミコトマスお前は、独断で戦地に赴き、結果ゴロファ族を取り逃がしたな?ムサシナタスお前もだ。

作戦を無視した。結果、正体不明の敵が、なんらかの動機でゴロファを仕留めるのを許している。」

ムサシもホミニスを鋭く睨む。


「お前たちの動きが制御できないことで、次に起きるすべてのことが想定外の事件になってる。

お前たちが温泉旅行してる間に、王都の民が襲われ、殺されたら、どうする?

お前は、癒しの戦士は。どう責任を取れるというんだ?」

ミコトの拳の震えをムサシは感じていた。

フェイフェリスはうつむき黙っている。


「ホモデラ族は...大丈夫だよね?彼らは、この国に必要な部族だ。父さんもかつて必死で守ったはず...」

ミコトは知る限りのホモデラ族の文化に思いを馳せる。


「大丈夫だ。もうじき新たな伝令が入るだろう。」

ホミニスが冷ややかに告げる。


フェイフェリスの声を聞かぬまま、ミコトはムサシを連れ王の間を後にした。



_______



長く鋭い刃を持つ槍に切り裂かれたホモデラ戦士の死体が、森に点々と転がる。


視界の先に次の獲物を見つけた怪人ネプチューンは一歩でその身を貫く。

移動の衝撃で土が飛び散り、枝が吹き飛んだ。


「その調子ですよ。ネプチューン。」

マンダリンが木の上から声をかける。


「な、なぜだ...シャーマン様が精神の樹海に閉じ込めたはず...!」

戦士が血を吐きながら叫んだが、すぐに毒針が彼にトドメを刺す。


「精神の樹海...?ただの幻覚魔術に大層な意味を持たせるんですねえ。何事も再現性が大切です。」

マンダリンは器用に樹上を移動しながらネプチューンの殺戮を見守る。


見守ると言っても、逃げ遅れたホモデラ族をネプチューンは一方的に始末していくだけだった。

ネプチューンが進む先に、ホモデラの本拠地らしき明かりが見えてくる。


「さあ、片付けて早めに上がりましょう。」

マンダリンがほくそ笑む下で、ネプチューンは表情を変えずに明かりに向かって突き進んでいく。


槍が地面を引きずる音が森に響く。



_______



「ターーン、ターーン、」


淡い月明かりが差し込むミコトの部屋でムサシが剣を研ぐ。

階段の方から軽快な響きが迫る。


「ターーン、ターーン、ターーン」

「なんだ?この音。」

ムサシが呟く。


ミコトは真紅に輝く鎧を身に纏い、寝台に腰掛けている。

「ターン」

歓迎するように、部屋の入り口を見た。


「ミコト、だいじょぶか。」

巨体が狭そうに部屋の入り口をくぐる。

ムサシが音の正体に気づき表情を変えた。


「ヘラクレス。心配してくれたのか。」

「ミコトが、やろうって時は、わかる。」

ヘラクレスがうなずきながら話す。


「...殺ろうって?」

ムサシが口元を歪める。


「ホモデラ族が気になる。グランディアトールに失望されたままではいられない。」

ミコトが机から大陸の地図を取り出し、ふたりに見せる。


「ここだ。ホモデラ居住区。北北西の果て。スパイダーフォレストと王国の境界を守る。

スパイダーフォレストには入っちゃダメだ。生きて出られない。」

「ワカった。オレ記憶はいい。」

ヘラクレスが頼もしく微笑む。


「ムサシ、一緒に飛んでくれるか?」

ムサシがミコトに視線を返す。


「飛ぶのハマっただろ。」

「ああ。」

ミコトがアリコンを颯爽と手に取る。


三人の戦士はバルコニーに出ると、青く静かな夜空に飛び立った。

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