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だから剣聖は救われない  作者: ココア
第2章
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罪の始まり

どうもココアです。


こちらの作品を更新するのはちょっと久しぶりです。


ご覧ください。


――これは今から数百年前の出来事。

 人間よりも遙かに永いときを生きるエルフは、100歳でようやく成人を迎えると言う。


 そしてこれは、丁度セリアが100歳になって成人を迎えたときのことだった。


「さて、今日も張り切って仕事をするか」


 当時のセリアは今とあまり性格は変わっておらず、気が強くて自分の主張を簡単に曲げたりはしなかった。


「おはようセリア。今日も朝早いね」


「おはようグロス。……むしろお前が遅すぎるんじゃないのか?」


 今のように、他のエルフから一目置かれていることもなく、皆と分け隔て無く接していたセリア。今日もいつもと変わらない日常が続くのだと、そう実感していた。


 だが、いつも通り見張りの仕事へ行ったところで日常が非日常へと変化した。


「……あれは」


 侵入者を排除するための見張り。特に隠密に優れていたセリアは若くしてその仕事を任命されていた。完全に気配を消し、相手に気取られないまま遠距離から弓を放つ。


 これまでセリアによって侵入に失敗した者は数知れず。それほどの腕を持つセリアが、今日だけは対応に困っているようだった。


「……」


 遠くを見据えるための器具を取り出し、草原に転がっている生物を見る。そうして映ったのは、殆ど虫の息の状態の人間だった。


「人間か……」


 魔物に襲われたのか、それともただ崖から落ちたのか分からない。ただセリアに分かるのは、放っておけば勝ってに死ぬということだった。


「……」


 一度器具を目から外し、背中にかけていた弓を構えると米粒のように小さな人間に狙いを定める。苦しい時間が長く続いて死ぬよりも、一瞬で死んだ方が幸せだろうとセリアは考えていた。


 これはセリアなりの慈悲のつもりだったが、狙いを定めているところで近くの茂みから魔物が姿を現す。倒れている人間が流す血のにおいに誘われたのか、涎を零した巨大な人食い猪が現れたのだ。


「グルゥゥゥ……」


 涎を垂らしながら鼻を大きく含まらせる。鼻息の勢いに地面の草がなびく。


 そして、人食い猪が現れたと同時にセリアは構えていた弓を下ろす。自分には関係ないと、そう考えているような表情をしながらも、猪に喰われそうな人間から目を離せないでいた。


「そのまま朽ち果てるより、獣に喰われて死んだ方がいいだろう」


 自分に言い聞かせるように言った。しかし、それでも目の前の状況からは目が離せない。


「……すけて」


「……」


 そよ風にすらかき消されてしまいそうなほど小さなうめき声が、セリアの耳に届く。


「だれか……たすけて……」


「~~!!」


 そして、次にうめき声が耳に届いたところでセリアの体は勝手に動いていた。一度収めた弓を取り出し、狙いを済ませて矢を放った。


「グギャァァァァァ!!」


 空気抵抗もむなしく、セリアが放った矢は人食い猪の眼球に深く突き刺さる。一呼吸、まばたきする時間よりも短い間に視界の半分を奪われた猪は、動揺と尋常ではない痛みで断末魔の声を上げながらのたうち回る。


 そして何も考えず、ただ矢が飛んできたと思われる方へ突進する。


「グギャァァァァァ!!」


 野生の勘と言うのか、猪はセリアが潜んでいる木に向かっている。徐々に突進する速度は上がっていき、300キロはある巨体が迫ってきていた。


「……」


 それでも全く焦る素振りを見せず、セリアは悠々と弓を構え――


「グギャァァァ!!」


「……」


――静かに矢を放った。


 一ミリの狂いもなく、突進する猪に放たれた矢はもう一つの眼球を容赦なく貫いた。


「~~~!!!」


 両目を潰され、方向感覚を完全に失った猪は木ではなく近くにあった巨大な岩へと突進する。


――自身の突進によって岩は砕かれ、その瓦礫に下敷きになった猪はその場で潰されてしまう。


「……」


 猪を仕留めた後、木の上から飛び降りたセリアは助けた人間の元へ歩いて行った。


「た、やすけて……くれたのか?」


 怪我でちゃんと見えていないのか、人間はかすかに感じる気配を信じて声を出す。


「獣はいない。たが、お前の怪我はもう治せない」


「そう……か」


 セリアの言葉を聞いた人間は、絶望するというより納得がいったように呟いた。自分の怪我は自分は一番よく分かっているということだろう。


 痛みで意識を保つのもやっとな状態でありながら、目を瞑ってしまえば二度と覚ますことができないだろうと悟っていた。


「最後に何か言い残すことはあるか?」


 死を覚悟している人間に、最後の希望を与えようとセリアが問いかけた。


「……」


 人間は暫く何も言わなくなってしまったが、閉じている瞳から涙を流した。


――そして、


「――死にたくない」


 今際の際に立ち、震えた声で呟いた。


「……」


 その言葉を聞いたセリアは黙って手をかざすと緑色の光を発せた。すると、人間の傷がみるみるうちに癒えていく。


 古くから、魔法を得意とするエルフ。セリアも例外ではなく、魔法を使うことができた。その中でも回復魔法を使い、人間の傷を癒した。


――これが、のちに起こる事件の始まりだったことはまだ誰も知らない。

読んでいただきありがとうございます。


次回もお楽しみに!!

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