歩み寄る
どうもココアです。
お久しぶりの登校になります。
皆さん、よろしくお願いします。
「……こ、ここは?」
次に目が覚めたのは小さな小屋の中だった。人一人が暮らすのが精いっぱい程度の広さで、家具は最低限のものしかない。唯一良いと感じられるところは日当たりがいいところくらいだ。
「いっ!?」
ベッドから起き上がろうとすると、全身に激痛が走る。
「あれ……生きてる?」
記憶が曖昧になっていて、どうしてここにいるのか思い出せなかった。確か俺は任務に失敗して、敵に追われてそれで……
「目が覚めたか?」
「うわ!?」
空白となっている記憶を取り戻そうと頭を動かしていたところで急に声をかけられ、思わず飛び跳ねる。無駄に動いてしまい、先ほどよりも強い痛みが走る。
「大丈夫か?」
「ぐっ……」
まだ叫ぶようにズキズキと痛む肩を押さえながら、近づいてくる人の方をゆっくりとみる。
「えっ……」
――そこにいたのは美しい女性だった。
背が高く、スラッとした体型に長い手足。顔のパーツも整っていて、緑色の瞳に日の光で輝く金色の髪。さらに、人間には無い特徴的な形で長い耳。
それが彼女――セリアとの出会いだった。
※※
――僕が目を覚ましてから一週間が経過した。
怪我の具合は段々と良くなり、歩いたりするくらいは難なくできるように。
だからこうして散歩と称してのリハビリもはかどるというものだ。
「おい」
「ん?」
――長閑な村を歩いていると後ろから声をかけられた。少々乱暴な言葉遣いだけど、その口調と声色で僕が誰が声をかけてきたのか直ぐに分かった。
「どうしたのセリア?」
「どうしたのじゃない。あまり村をうろつくなと忠告したはずだ」
「ええ……でも、水を汲みに行く手伝いをするって約束しちゃったし」
そう。実は先日、同じように村を歩いていたら村の人に頼まれてしまったのだ。僕としてはリハビリにもなるので一石二鳥だと思い、快くそれを引き付けた。そして今、その手伝いに向かおうとしているところでセリアに声をかけられた。
「全く……本来なら、お前のようなよそ者を受け入れることはないんだからな。分かっているのか、ヨグ」
「もちろん、分かってるよ」
彼女の言葉に、僕は何の迷いもなくそう返事をした。エルフという種族がこれまでどのように暮らしていたのか、そしてどうしてこんな暮らしをしているのか僕は知っていたからだ。
本来なら僕は殺されるべき存在だったんだ。けど、心優しいセリアが僕を助けてくれた。よそ者である僕を、人間である僕を助けてくれた。
「だから僕は……」
「何か言ったか?」
「何でも無いよ」
小さな声で零したつもりなのに、聞こえてしまったらしい。僕は少し慌てながら簡単に誤魔化した。するとセリアは、首を軽く傾げた後に先を歩き出す。
僕はその背中を見ながら、心の中で呟いた。
――“だから僕は君たちに精一杯の恩返しがしたい”と。
「あれ、そういえばセリアはどうしてここにいるの?この時間はいつも見張りじゃなかった?」
「今日は私の番じゃない」
「じゃあ、家に戻らないの?」
そう問いかけると、隣を歩いていたはずのセリアが足を止める。顔をリンゴのように赤らめて、心底恥ずかしそうな素振りを見せる。
「違うぞ!決してお前を手伝おうとしてたとか、お前と一緒に居たいとかそんなこと思ってないからな」
「……」
何も聞いていないのに、一人で取り乱し始めたセリア。普段はとってもクールなのに、少し動揺するだけでこんなに表情が変わるんだ。
「ハハハ!」
「な、何を笑っているんだ!!」
「ハハハ!!」
涙目になっている瞳で睨んできたけど、それすらも可愛かった。可愛くて優しくて、そして誰よりも曲がったことが嫌い。
それが彼女――セリアという人物だった。
「ねえセリア。さすがにもう少し持ってくれない?」
「……」
村の奥にある泉で水を汲んだ後、来た道を戻っているが予想よりも水が重かった。両手に大きなバケツが二つずつ。
運ぶのは全部でバケツ五つだけど、セリアは一個しか持っていない。
「セリアってば」
「……」
どんなに話かけてもセリアは答えてくれなかった。多分、さっき僕が笑ったことを怒っているんだろう。けれど、少し辛そうな表情をしている。
……優しいセリアは、人に冷たくするということができない。だからただ無視するだけでも心を痛めてしまうのだろう。
「さっきは笑い過ぎたよ。ごめんて」
「……」
それでもセリアは何も答えてくれない。優しいだけではなく、セリアはとても頑固ということに気がついた。
「ハア……さすがに限界だ」
まだ完全に怪我が治ったわけではない。特に腕は怪我が酷かったらしく、直りが遅いのだ。リハビリだと思って普通に受けてしまったけど、これでは余計に治るのが遅くなってしまう。
「……」
「セリア……?」
バケツを置いて息を切らしていると、前を歩いていたはずのセリアが僕の目の前にいた。そして、無言のままバケツを二つ持つ。
重そうな素振りなど見せずに、再びスタスタと歩いて行ってしまった。
「……全く」
僕はそんな彼女のことを見て、
「素直じゃないんだから」
小さくそう呟いた。
読んで頂きありがとうございます。
次回もよろしくお願い致します。




