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だから剣聖は救われない  作者: ココア
第2章
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天真爛漫な少女

どうもココアです!


すごーくお久しぶりな気がしますね。

更新がまさかの約2ヶ月ぶりという………。


まだまだ書き続けるつもりなのて、皆さんも懲りずに読んでいただけると幸いです!


「アキレス、お前ニーナに会ったのか?」


「ニーナ?それってあの子の名前か?それなら直ぐに外に出ていったけど」


 確かに一度訪れたが、出ていってしまってから随分と時間が経つことに気がつくアキレス。

 ニーナが来たときはまだ青空だったけれど、今は茜色に染まって夜が来る準備をしているようだった。


「私のところに来るのは明日だと言っておいたのに……」


 一人の少女が家を訪ねてきた。ただそれだけのはずのに、セレナの動揺はとても大きかった。既に頭の中は、ニーナという少女のことで一杯なのだろう。


 そう思わざるを得ないほど、セレナは慌てていた。


「少しニーナを探してくる。二人はここで待っていてくれ」


「探すって言うなら手伝う。世話になりっぱなしは嫌だからな」


 アキレスからしたら、少しでも恩返しになればという意味での提案だったが、セリアはその好意を素直に受け取らなかった。


「いや、アキレスとレムリアはここで待っていてくれ。絶対にこの小屋から出ないでくれ」


「えっ、お、おう」


「私は行くが、お前はレムリアの傍に居てやれ」


 最後にそう言い残し、セリアは颯爽と表へ飛び出していった。


「……いったいなんなんだ?」


 いまいち納得がいかないような表情を浮かべながらアキレスは呟く。そして、レムリアの元に駆け寄ると、布団から少しだけ顔を出している右手に己の手を重ねる。


「とりあえず今は傷を治してくれ。こんなことしか言えないのが情けないけど」


「そんなことはないです。アレン様……いえ、アキレス様がそうやって優しく接してくれながら優しく手を握ってくれるだけで、私は十分なんです」


 包帯に包まれたレムリアの瞳が潤む。


「俺はこんなことしかできない。こんなことしか、お前にしてやれることがない」


 胸の内から溢れる罪悪感を、己の力不足さを恨むように言葉をこぼすアキレス。

 すると、レムリアがそっとアキレスの手に自分の手を重ねる。サンドイッチのうにアキレスの右手を包むと、その手が何かを堪えるように震える。


「俺は……またお前を……傷つけて。またお前を不安にさせて、俺のせいで……」


「あなたのお陰でここにいます。アキレス様がいたから、私はここにいるんです。アキレス様が失ったものより、アキレス様が救い出した私を見てください」


 擦りきれて、疲れはてて、押し潰されそうなアキレスの心をレムリアの想いが潤す。そして、アキレスはまた立ち上がり、歩き出す。


「何度も何度も弱いところを見せてられないな……。ちょっと俺もセリアの後を追って探すのを手伝ってーー」


 溢れそうな涙を拭ってそう言いかけたところで背後に気配を感じ、焦りながら視線を向ける。


「なぜ人間がここにいる!」


「べ、別のエルフ?」


 アキレスが向けた視線の先には血相を変えたエルフが立っていた。人間の女性と同じ華奢な体で、白い肌と銀色の髪の毛が美しいエルフ。

 だが、その表情から“歓迎”という感情を全く感じさせない。アキレスたちに向けられている感情は、“嫌悪”と“殺意”といった感情だった。


「どこから入った!人間がここにいるなんて、私は聞いていないぞ」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺たちはセレナに案内されて……」


「セレナが?……あんなことがあったのに、懲りずにこんなことを」


 激昂するエルフだったが、アキレスがセレナの名前を出すと熱が覚めたように怒りをおさめる。

 ぶつぶつと何かを呟いているようだが、声が聞こえないアキレスとレムリアはただ置き去りにされている。


「いきなり怒鳴ってすまなかった。だが、私に限らずエルフは人間を嫌っている。それはどんな善人であろうと例外じゃない」


 暫くしてから頭を下げたエルフ。そして、謝罪と共に述べられた言葉を聞いて、アキレスはセレナの言っていた意味を初めて理解したのだった。


「……こんなことを聞いたら駄目なんだろうけど、なぜそこまで人を人間を嫌うんだ?」


「……悪いがその理由は答えられない。それより、ここに滞在するのは止めておいた方がいい。私はセレナの顔に免じてなにもしないが、他の者はなにをするか分からない」


「分かった。見逃してくれてありがとう」


 アキレスがそう言うと、どこか反応に困ったような表情を浮かべるエルフ。そして、自分の名前も言わずに出ていってしまった。


「エルフが人間を嫌う理由、レムリアは知っているか?」


「いえ、そもそもエルフという存在はおとぎ話だと思っていましたから」


「俺も本で見たことあるくらいだからな。まあ、ここは忠告通り大人しくした方がいいか」


 さっきのエルフの忠告がなければ、アキレスはセレナの後を追って少女を探しだそうとしていた。だが、それで他のエルフに見つかってしまえばどんな仕打ちが待っているか分からない。


 アキレスは狙われるのが自分自身だけなら構わないと考えているが、矛先がレムリアに向く可能性がある以上、下手な行動はとれなかった。


「ところでアレン様……いえ、アキレス様、これからどうするのですか?」


 外に出られないことが確定したアキレスは、意識か無意識か自然にレムリアの傍にある椅子に腰かけた。

 その瞬間、レムリアの口から出てきた問いかけに硬直してしまうアキレス。


「……これからか。そうか、いつまでもここにはいられないしな」


 レムリアの傷を治すということだけを考えていたアキレスは、この先のことをなにも考えていなかった。もちろん、いつかは再びメルド王国に戻るつもりではあるが、そこまでの道のりが全く想像できていなかった。


「正直……なにも考えていなかった。元々俺の濡れ衣を晴らすために王国に乗り込んだのに、乗り込んだ前よりも濡れ衣を着せられているだろうし」


 弱々しく吐き出された言葉は紛れもない本音であった。八方ふさがりといっても過言ではないこの状況、アキレス自身にもどうしたらいいのか分かっていない。


「いつかは戻っても、それは今じゃない。分からないことも多いからな」


「そうですね・・・・・・。確かに今は分からないことだらけです」


「ああ。一番分からないのはあの国王だ。一回は確実に殺したはずなのに生き返った。死体が蘇るなんて聞いたことあるか?」


 アキレスが言ったとおり、国王ツラナークは一度殺された。しかし、その後まるでゾンビのように動きだしたのである。

 首に穴が空いていても生きている人間は後にも先にも、あのツラナークだけのことだろう


「死なない理由・・・・・・少なくともそれを突き止めておかないと戻る意味はなさそうですね」


「情報が欲しいとなると、やっぱり人間よりも長寿であるエルフから話が聞きたいが・・・・・・」


 全てを言い終える前にアキレスは言葉を止める。その先は語らなくても分かるだろうと、そう言っているようだった。レムリアもまた、それ以上何か聞いてくることは無く起こしていた体を倒して天井と向き合う。


「……」


「……」


 そして、二人の間を沈黙が包み込んだ。最後の目標は決まっていても、そこに辿り着くための小さな目標が見つからない。

 いきなり越えようとするには高すぎる目標だけが目の前にあるだけだった。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん!」


 その時、二人が無意識に作っていた沈黙を少女の無邪気がかき消す。


「どうしたの?悲しいことがあったの?」


 首を少し傾げて、滲み出る暗い表情をしたアキレスに近づく。不意に顔を手で隠そうとするが、下から覗き混もうとする少女には隠しきれなかった。


「こらニーナ。客人に対して何をしている」


「ご、ごめんなさい。セリアお姉ちゃん」


 そんな少女を軽くたしなめるように声を上げたのは少女の少し後に小屋に戻ってきたセリアだった。少女は素直にセリアの言葉を聞き入れると、アキレスに頭を下げて謝罪をした。


「お兄ちゃんごめんなさい」


「あ、ああ・・・・・・。俺も少し驚いただけだ。それより、君は昼間一度ここに来た――」


「そうだよ!私ニーナって言うの。時々お姉ちゃんの家に来て遊んでもらってるの!」


 天真爛漫が笑顔を浮かべながら言ったニーナ。今まで暗い雰囲気が漂っていた空気が嘘のように明るくなり、アキレスとレムリアの表情に笑顔が戻ろうとしていた。


「ねえお兄ちゃん。お兄ちゃんはどうしてここにいるの?」


「俺はそこのお姉ちゃんの仲間なんだ。そして、お姉ちゃんは今怪我をしてる。だから治るまでここにいるんだよ」


 視線を合わせるように立て膝になり、どこか慣れているような子ども口調で話したアキレス。それを聞いたニーナは一目散にベッドの上で寝ているレムリアに駆け寄る。


「お姉ちゃんケガをしてるの?痛くない?」


「私は大丈夫ですよ。ありがとうございます」


「そうだ!ニーナがおまじないをかけてあげるね」


 そう言うと、布団からはみ出していたレムリアの手を両手で強く握りだした。“おまじない”と言っても、それは握ったレムリアの手を自分のおでこにつけて、何かを念じているように目を瞑っているだけだった。


「どう?おまじない効いた?」


 しばらく同じ体勢を続けていたニーナが、目を輝かせながらレムリアに問いかけた。


「はい。とってもよく効きました。これで怪我も早く治りますよ」


「ほんと?良かった~!!」


 ニーナの笑顔に負けないくらいの笑顔を浮かべながらお礼を言ったレムリア。本当に、さっきまでの表情と空気が嘘のように明るくなった。


「ニーナ。後は安静にさせてやれ。夜ごはんにしよう」


「私もお手伝いする!」


「じゃあまずは手を洗ってきなさい」 


「はーい」


 誰が見ても仲睦まじい光景をアキレスは何かを重ねているように見つめていた。

 とても微笑ましそうに、そしてとても羨ましそうに。

読んでいただいてありがとうございます!



次回の更新はいつになるか分かりませんが、

2ヶ月は空かないようにしたいと思います……。


それではまた次回まで!

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