さっちゃんのお弁当
次の日の朝。
「おはよう、みっち!」
教室の席で、うなだれていた俺のところへ、朝練を終えた星野がやって来た…。
「おう…。」
「みっち?…どっか具合悪いの?」
「…大丈夫ナリ。」
「なんでコ●助?…みっち、昨日はありがとね!さっちゃんから、聞いたよ。羅院先輩に絡まれたところを助けてくれたんだって?羅院先輩、さっちゃんのこと大好きなんだよ…キモいくらいに。」
さっちゃん…!!俺の…はじめてのチュウ…!!
「みっち、今日の昼は、購買?」
「…ああ、そうだけど?」
「それなら良かった。…あのさ、さっちゃんが昨日のお礼に、みっちにお弁当作ってきたんだ!だから、昼休み3人で一緒に中庭でお昼食べよう!」
「はああああー!?」
俺の…はじめての(以下略)した奴の作った弁当なんか(しかも一緒に!)食えるかああぁぁー!!
4限が終わって、逃げるように教室を出ようとする俺!
「ちょっと、みっち!どこ行く気だよ?」
「俺、今日は一人で食べたい気分なんだよ…。それに、購買のカレーパンが食べたいんだ!!」
後者は、マジで!!今日の俺の昼は、カレーパンとメロンパンなんだ!!
「ダメ!さっちゃんが、みっちのために早起きして、お弁当作ってくれたんだよ!!さっちゃん、低血圧だから朝弱いのに…!」
「知らねえよ…。じゃあな!」
教室を出ようと扉に向かうと…扉の前に…奴が…!!
「ごきげんよう、みちる。」
星野より少し長めの黒髪の短髪に、地味な黒縁メガネ、レンズの奥には…黒目がちな瞳に、長いまつ毛…可愛らしい顔立ち…。
「ご、ごきげんよう…さっちゃん…。」
「昨日のお礼にお弁当作ったんだ。一緒にお昼食べよう!」
お昼を食べに中庭に向かう俺と星野と…さっちゃん…。さっちゃんは、俺と星野の後ろにひよこみたいについてくる。俺は、小声で星野に話しかける。
「…おい、星野。さっちゃん、料理出来んの?」
「…出来ないよ。包丁握ったのも今朝が初めてだよ…。大丈夫、俺が手伝ったから!てか、8割俺が作ったから!」
ほぼ、星野が作ったんじゃん!!…てか、包丁握るの今朝が初めてなの!?
中庭につき、芝の上にレジャーシート(なぜか、猫耳の女の子の絵が描かれたやつ…)を敷いて座る。…小学生の時の遠足のお昼みたいだ。
「みちる。昨日は、助けてくありがとう。これは、そのお礼です!…洸にもちょっと手伝ってもらったけど僕が作ったんだよ!」
さっちゃんが俺に弁当を渡す…。いや、ちょっとじゃなくて、8割星野が作ったんだろ…?
「良かったね、みっち!」
「ありがとう…さっちゃん…。」
俺は、恐る恐る…弁当の蓋を開ける…。
「おお…見た目は、まともだ!!」
「ちょっと、みっち!さっちゃんに失礼だよ!!」
「ああ、ごめん。」
中身は、ご飯に炒り卵が乗っていて、おかずは鶏の空揚げに、たこさんウインナー、ほうれん草のソテーに、ミニトマト…そしてなぜか、焼きそば…。
「この焼きそば、もしかして…。」
「ああ、昨日の夕ご飯の残りなんだ!」
俺の宿敵…!!
「みちる。早く、食べてみて!」
「…いただきます。」
この塊の大きさがバラバラで、ちょっと焦げてる炒り卵と、切り目が雑でいびつな形のたこさんウインナーは、さっちゃん作だね…。俺は、炒り卵を一口食べる…。
「…うまい!…この炒り卵、甘さと塩味のバランスが丁度いい!!」
「本当に?良かった!その炒り卵…僕が焼いたんだ。本当は、玉子焼きにするはずだったんだけど…失敗しちゃって…。」
玉子焼きの成れの果てだったのか…。
「いや、でも本当にうまいよ。少し焦げて、ぼそぼそしてるけど…味付けが神がかってる!!」
あれ?褒めたのに…さっちゃんの表情が暗くなる…。何で…?
「みっち…。味付けしたの俺なんだ…。」
星野…!!
「ごめん…。上手く焼けなくて…。」
「いやいや、焼き加減も丁度いいよ!!俺、ちょっと焦げてるくらいが好きだから…!!」
さっちゃんの顔が明るくなる…。ああ、良かった…。




