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「やあ、久しぶりだね君達。元気にしてたかい?」
「おかげさんで、この通りさっ。あの時の剣も十分役に立ってるぜ。ところでトニックさん。ちょっと聞きたい事があるんだけどさ」
「うん? 何だい」
セレン王に借りた船は、かなりの魔法技術が用いられているらしく、風がほとんど吹かない日でも順調に海を渡る事が出来た。
お陰で予想よりずっと早く到着できたコーストにて ―― 年齢差も意に介さぬざっくばらんな挨拶をするスバノンの後ろから、アスティも間を惜しむ様に訊ねる。
「私たち、今度『青色の弓』って呼ばれている武器を探してるんです。トニックさん、あのセレンでも有名な鍛冶屋さんだったんですよね。何かご存じないですか?」
「……青色の弓?」
その言葉に、初めは不思議そうな声と顔色しか示さなかったトニックさんだったが、軽く目を瞬かせた後、何かしらが心に浮かんだかの表情に変わる。
「青色の……どこかで聞いた事があるんだが。どこだったか……」
「おー、さすがだなトニックさんっ」
「ちょっとスバノン、思い出すの邪魔しちゃ駄目じゃないの」
「ん? そういや、そっちの君達は?」
「あ、すみません。ご挨拶が遅れまして……私はレディア。こちらはブルーさん、宜しくどうぞ」
「こんにちは。すいませんね、この変なのが騒がしくて」
「お前、毎回それ言うのいい加減やめられんのか?」
「はっはは、前よりいっそう賑やかな旅になってそうで何よりだね。―― 立ち話もなんだから、こっちでお茶でもどうだい? その間には何か思い出せるかもしれん」
如何に魔法仕掛けまで備えた立派な船での旅だろうと、海の生活に慣れていない者にとっては陸地にいる時より疲労が蓄積するのは確かだ。ましてやスバノンは、どうやら徹底的に船には弱いらしく、コーストに着いてからも暫くはぐったりしていた位である。
ここはありがたくトニックさんの言葉に甘える事にして、皆で奥の部屋へと入った。
程なく、以前にもご馳走になった香草茶と干菓子を出してくれたトニックさんは、けれど自らはテーブルにはつかず、少し離れた所をゆっくりと歩きながら呟く。
「うーん……あと少しなんだが、思い出せん。確か……引越しの頃に……」
この人の場合、どっかりと座ってよりは、その方が考えがはかどるのだろう。その妨げにはならぬ様、私達もなるべく静かにお茶を頂く事にして、レディアさん達にコーストでの体験談など小声で話していると ―― 唐突にトニックさんの声が大きくなった。
「あっ……そうか、それだ!」
「え?? ど、どれですか?」
「お嬢さんの……ああ、アスティちゃんか、君達の話で思い出したよ。トワイライトだ。青色の弓ってのは、おそらく『ブラウセブン』の事だよ」
「ブラウ、セブン? て言うか、どうしてトワイライトで思い出したんですか?」
「あれは、トワイライトに眠る秘宝として古くから言い伝えられていると、セレンやこの町の噂で聞いた事があってね。何でも氷の精霊達が生み出し、守り続ける冷気を帯びた弓だとか……実物を見た事はもちろんないから本当に青い弓なのかは知らない。けど、きっとそれの事さ」




