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「……なるほど。その篭手をつけて、矢を放つのね」
「ご名答。3つの力を1つにして、あの扉にぶつける。それで初めて開く仕掛けさ。だが、どうせお前ら、3つのうち1つも持ってないんだろ? だったら、さっさと帰るんだな」
解答を見出したアスティに人形が答えるが……確かに、いきなり告げられた、そんな道具が必要だなどとパーンさんは一言も言っていなかった。大体、明確な名称も解らぬそれらの道具を探すのも一苦労しそうだし、もう時間がないと言っていた気がするのに、パーンさんには一体何の思惑があるのだろう?
「それらの道具は集めてくるよ。そしてまた近い内、ここに来るわ。それより……あなたは何者? ただのモンスターって感じじゃないけど、魔王の関係者?」
いずれにせよ、それらが無くては先に進めない。ひとまずは戻ろうか、という空気が場を支配しつつある中、レディアさんが絡繰りと視線をぶつける様にして訊ねた。その目は煌めく、というより自ら光っているかの赤い色なのがまた、今ひとつ敵ではないという言葉から信憑性を欠けさせる。先日のパーンさんの言葉ではないが、それは如何にも“魔性の色”といった印象を与えるからだ。
「俺? 俺は~……関係者って程でもねーが、かといって知らないわけでもねぇし。ま、どうでもいいんじゃね?」
「……はっきりしないわね」
「それより、もしこの先に進みたいってんなら、さっさと道具を探してくるんだな。ただ突っ立ってても扉が開くわけじゃねぇ。あんまり長居されると迷惑なんだぜ」
それを最後に、奇妙な人形は踵を返すと何処へともなく去って行った。或いはあれが、この神殿の守り人にあたる存在なのだろうか? それにしては態度に少々、難があるが。
「なんかムカつくな、あのポンコツ野郎 ―― さっさと道具探しに行こうぜ。えーと……何だっけ?」
「『赤色の矢 青色の弓 緑色の篭手』……皆、これらに何か心当たりある?」
「ぜんっぜん」
スバノンの感想も納得だが、今はとりあえず、あの絡繰りより道具探しだ。レディアさんが確認を取る様に品の名称を並べるが……アスティが即そう返すのと同様、私もまるで解らない。暫く皆で考える内 ―― ふと思いついた様に、ブルーさんとスバノンがほぼ同時に口を開いた。
「赤色の矢って……バーニングアローの事じゃないかな? ファイヤーケーブの地下深くに眠る、炎の力を纏った矢だ」
「青色の弓、つまり武器だよな。それなら、コーストにいたトニックさんが、何か知ってるんじゃないか? 有名な鍛冶屋だったらしいし」
「あーなるほど。じゃ弓についてはトニックさんにお話を聞いてみよう……て、あれ? ファイヤーケーブって、炎の石を採った所が最下層なんじゃ? あの時に矢とか見かけなかったけど」
アスティが、彼らの言葉に顔を明るくして言いかけたが、途中で疑問を抱いた様にそう聞くのへ、ブルーさんが首を振りつつ。
「ファイヤーケーブは、もっと深いよ。ただ俺も、その奥深くへどう行くかは知らない。でも、ファイヤーケーブについてなら、確かラーンさんが詳しい筈だ。だから赤色の矢に関しては、エーテルタワーまで行って話を聞いてから、探しに行こう」
「だいぶ見えてきたね。じゃ、後は緑色の篭手。これはどう?」
最後の1つを再確認、と言う風にレディアさんが問うが……こればかりは、誰も何の手がかりさえ思い浮かばなかったらしい。世界を調べ物の旅で回ったレディアさんでも解らないとなると、はたして何処で、誰に聞けば良いものかすら見当がつかなかった。
「うーん……ちょっと詰まったね」
「ま、まあ出来る事からやっていこうぜ」
「そうだな。ともかく、解りそうなものから探しに行けば、もしかして途中で何か知ってる人に会えるかもしれないし」
「うんうん。なんなら一度、お兄ちゃんに聞きに行くとか、セレンの図書館に調べに行ってもいいだろうしね」
困り顔のレディアさんへ、スバノンを初め皆でそう声をかけ、まずは船へ戻ろうと歩き出す。しかし、その道中であの絡繰り人形に出会う事はなかった……神殿入口まで、多少は階段の上り下りもあるといえ、そう長い道のりでもないのに一体、どこへ雲隠れしたものか。何とも不思議な存在だが、いずれまた会う事があるのだろうか?
―― やがて、再び潮風の中を進みだした時。何とはなしに振り返ると、そこに佇む神殿の影が世間で噂されるよりも遥かに深い謎と、更には闇を抱えているかに見え、知らず胸に不安が宿った。それは、本当にあの扉を開けていいのか? と、それさえ危惧してしまう程に……大きかった。




