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海の神殿は、セレンの西方海岸から出帆して3日程で到着できる位置にある島に建っていた。本当に、何の為に建てられたのか解らぬ謎の神殿である……そもそもこの島は周囲を多数の岩礁で囲まれており着岸までかなり気を遣わねばならない厄介な場所だ。その様子からして、洋島の内でもホットスポット上にできる火山島なのだろうが、そんな島をわざわざ選んで建てたにしては信仰者の集落はおろか守り人たる神官さえいない。
それでいて内部は存外美しく保たれているし、造りも凝ったもので、壁の浮彫などはちょっとした美術品とさえ言えるものだった。
「なんだこれ……進めねぇじゃん」
そんな、観察するほど謎が増えそうな神殿を道なりに進んでいくと、地下の2階辺りに相当しそうな地点で、スバノンが足を止め、そうぼやく。見ればそこは大きめの池といった感じで水が湛えられ、その結構先に再び足場と、そして何やら封印でもされているかの力を感じる扉があった。
「深さもありそうだし、どーしても渡りたきゃ泳ぐしかねぇってか?」
「大体、仮に向こうに着いたとしても、あの扉は開くのか?」
「ん~……どうすればいいの?」
ブルーさんやアスティも、この事態に困り顔だ。あのパーンさんの事だから、魔王に成りきる前なら人を騙すような真似はしないだろうし、だとすれば扉の向こうで我々を待っているのだろうと予想はつくが……一体どうしたものだろう?
「―― お前らじゃ無理だぜ」
その時唐突に、背後からそんな声がかかった。
「何者だっ!」
「安心しな。お前らの敵じゃねぇさ」
すかさずスバノンが誰何するものの……そうは言われても、現れた姿に、誰しも不審感は拭えなかったろう。そこに立っていたのは、人間とほぼ同じサイズの金属質な人形、とでも言うべきものだったのだから。喋って動く辺り、新手の魔物なのだろうか? とは言え殺気などは感じられないので、確かに今すぐ敵対するつもりはなさそうだが。
「……どうすれば向こう側に渡れるの? あの扉を開ける方法は?」
「あの扉は開かねーよ。どうやっても無理だ。諦めてさっさと帰って寝てろ」
ややあってレディアさんが、睨み合いが続くだけでは無意味とばかりに質問するが……返されたのは、およそ好意的とは思えぬそんな言葉だった。その為スバノンが声を荒げる。
「ふざけんなよ! 開ける方法知ってんだろ? 教えろ!!」
「ま、知らなかぁないがな。あの扉は、元素の力で閉ざされてる。元素って解るか? 解んねぇだろ? だから教えねーんだよ」
すると今度はヒントらしき事を言いだしはしたものの、この絡繰り人形、どうにも人を小馬鹿にしている気配が濃厚だ。しかしそういう話題なら、こちらには立派な専門家がいる。
「元素って、三大魔法元素だろ? 炎、水、風の事。それくらい知ってるよ。―― もっとも正確には、大地を入れて四大元素なんだがな。地属性を扱える魔法使いは極少ない上に、それは精霊王の直に司る、いわば“聖なる元素”だから、普段は先の3つで正解とされる」
「おー、たまには役立つじゃないかブルーっ」
「ほら、ちゃんと解ってるんだから教えてくれよ」
「……ちっ、めんどくせぇのに関わっちまったな」
思わずの様にスバノンが茶々を入れるが、今回は特に何も返さず、あくまで目の前の人形と話を続けるブルーさんに、何だか人間臭い絡繰りはそんな悪態の後。
「その通り……炎、水、風の事だ。あの扉を開けるには、その3つの力が必要。でも、ただ魔法を使えば開くような仕組みじゃねぇ。『赤色の矢 青色の弓 緑色の篭手』―― この3つが、あの扉を開ける鍵だ」




