5‐8
「あっ、おかえり~!」
数日後、アリシアはレディアさんの家。居間へと入っていった途端、飛びかかるかの勢いでアスティが抱き付いてきた。
砂漠をずっと歩いてきたのだ、埃っぽいと断りかけたがおよそお構いなしで、いつもの甘えモードに突入である。何やら背後から、羨ましそうな視線を感じないでもなかったが……色々疲れてもいるので、この際そっと無視しておく事にする。
「レディア、ピラミッドで何か情報は掴めたかい?」
「うん、いろんな情報を手に入れたよ」
「ピラミッドは、どうだった? 私も、ちょっと行ってみたかったなー……」
リンさん達は簡単な挨拶後、そんな確認をかわしている。途中にアスティがそんな言葉を挿むと、スバノンが珍しく疲れた調子で。
「やめとけ。普通に危険な場所だ。いろんな罠や仕掛けがあるしな……俺らには情報とかってのも何が何だか、だったし」
「え~……で、その情報ってどんなの?」
一瞬、いかにも拒否されて残念そうな表情をしたが、すぐ別の興味に関して聞いてくる。その問いにはレディアさんが、何か物思う様な顔で返しかけ……少し言葉が止まる。
「主に魔王の事だよ。説明には、ちょっと情報を整理しないと、だけどね……」
そのまま暫く、何事かを頭で纏め上げている様子だったが、やがてその顔はリンさんに向いた。
「リンちゃん、確か次はギメルのストラウス遺跡に行くんだよね?」
「うん。あそこはエガオンの故郷だから、きっと何か情報があるよ」
「ストラウス遺跡には、かなり強力な魔法具の『精霊王の冠』があるらしいの。ピラミッドにいた精霊がね、魔王を倒すならそれを持って行けって」
「えっ、精霊に会ったの? ……そうか、それも要チェックだなぁ」
「……魔王? 精霊? いったい、何の話?」
「俺らも、まださっぱりだ。帰ったら説明してもらえるはずだったんだけど」
ひとり取り残されたアスティの疑問はもっともだ。スバノンも、先を促すかの視線をレディアさんに向けるが、彼女は既に1つの案を決定している風だった。
「まず先に、ストラウスの調査を済ませちゃおう。そこで得られる情報と、ピラミッドのそれを合わせてそこからの方が全体像が見える分、説明もより詳しいものができるよ、きっと」
「ふ~ん……俺もついていこうかな。ブルーは帰っていいぞ」
「なんで俺だけ帰るんだよ。俺もしばらくご一緒させてもらうよ、魔王と勇者の話には興味がある」
「お兄ちゃん、私もついていく。もう一人は嫌だもん」
「ははは、相変わらず寂しがりだなぁ。―― でも出発は明日にしよう。今日はゆっくり休もうか……みんな出発まで自由にしてて。眠くなったら、奥の部屋のベッド使って良いから」
「リンちゃん。ここ、私の家だよ? まぁ別にいいけど」
何だか、いつになく賑やかな光景だ。単に人数が増え、会話が増えたからというだけではなく、この顔ぶれが持つ空気が……まるで昔からずっと一緒にいたかの、不思議な暖かさを持っている。
或いはずっと、このまま共に居られたら ―― 新たな探検への興味や不安より、何故かそうした気持ちの方がふと、強く胸の内に響き、暫く留まっていた。




