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奏でられし聖樹の記憶  作者: ファル
― 三.神聖都市の暗雲 ―
17/68

3‐1

「ん~……これって町、て言うより村? だよな」


 トニックさんと別れて5日ほど後。やっとの思いで到着したオーガスタを見ての、スバノンの感想は止むを得ないとしか言えないものだったろう。


 トニックさんが作り出したのは、あの結晶石が元となっているだけあって、まるでクリスタルの様な透明感を持つ美しい刀身の剣だった。しかしながら、その威力は見た目を裏切る凄まじさで、仮にもマナプール兵の標準装備だった筈のスパークセイバーを軽く凌いでしまい、スバノンを大変喜ばせた。

 世の中には、これより更に強い剣も多くある、でもそんな剣に出会うまでの間だけでも使ってもらえれば嬉しい ―― ひと仕事終え、疲れも溜まっていたであろうトニックさんは、しかしスバノンの歓び様を見て苦労が報われたと言った感の満足げな笑みを浮かべ、そう言っていた。


 その剣と共にやってきた道中、出くわすモンスター達にはおよそ難儀もしなかったが。いざ、目的の町へ着いた途端の光景には少々戸惑いと言うか、不安さえ覚える気がしたのだった。


 かつては、敬虔な信徒の集う「神の町」として栄えたと聞くオーガスタ。だがその外周部には、如何にも打ち捨てられた様な家々が並ぶだけで人の姿が見当たらない。町の入り口から遠くに望める大教会までの通路こそ、往時の壮麗さを何とか残してはいるのだが、ざっと見てとった限り、今のこの町には数える程の住人しかおらず、その人々は教会を囲むようにした集落状の区画に寄り添って生きている、と言う感じであった。


「もしかして、ユグドの方がまだ人多いんじゃないの? これで本当に神の町なんかね」

「何か理由はあるんだろうけど……なんだかさみしい感じで、ちょっと居心地悪いかな……」


 自然、小声になりつつもスバノンは相変わらず自由に感想を述べまくっている。返すアスティにしても、できれば早く本来の目的地であるステラに向け出発したい、といった雰囲気だ。


 しかしステラは、魔法仕掛けの門に護られた「魔法都市」である。部外者たる私達が、いきなり訪ねて行って中へ入れる町ではないので、まずはリンさん探しを兼ねて、ここで情報を得るしかないのもまた事実だった。


「そうは言ってもなぁ……とにかく、話を聞けそうな人がいねーから困るぜ。どうする?」

「あそこ、教会行ってみようよ。まさかあそこなら、誰かしら居ると思うよ」

「んー、普段ならあんまり行きたくない所だけど……この際仕方ないか」


 道具屋など、立ち寄る冒険者用と思しき店も数軒はあったが、どこも寂れて人影がない。店番の老婆を一人見かけたが、疲れからか舟を漕いでいて起こすには忍びない状態だった。


 スバノンの気が乗らずとも、これはもう、確実に人が居そうな場所は教会しか思いつかない。アスティの提案は、比較的早い段階で決定案と相成った。


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