その4
そのさらに数日後、またその酒造に行くことになりました。
それは夜のシーンでした。薄暗い中、謎の男がピアノを弾いていて、座敷わらしがその男を見ているという内容でした。
この作品には座敷わらしが出てくるのですが、ヒロインの女優さんが座敷わらしのメイクをして、別のキャラクターとして出演しています。
このシーンは座敷わらしの初出演シーンでもあり、どのようなメイクになるのか誰も知りませんでした。ヒロインの女優はまだ10代の女の子だったので、彼女が座敷わらしをするというからには日本人形のような可愛らしい出で立ちなのかと皆が想像していました。
ようやくメイクが終わり、女優さんが現場に入ってくるとスタッフがざわざわしました。座敷わらしのメイクが、白粉を塗りたくったかのような真っ白いお化けメイクだったからです。仲の良いスタッフはそのメイクに苦笑いをしていましたが、私は笑えませんでした。あの壁の顔を思い出してしまったからです。
とはいえ、撮影の準備は進んでいきます。私は他のところで準備をしていて、その作業が終わり、カメラの所に行き、現場の様子を見ると、凍りつきました。
その座敷わらしが男を見ている場所というのが、例の穴からだったのです。
壁の穴から真っ白い顔でピアノを弾いている男をただぼぅと見ているのです。滝のようにかいていた汗が一瞬で止まりました。真夏なのに鳥肌が止まらず、汗を拭くように首に巻いていたタオルを肩にかけ、体を抱きました。




