表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/28

26 コリムの行方

 その翌朝。アントが悲惨な死を遂げてから、ずっと鬱ぎ込んでいたコリムだったが、ちょっと目を離した隙に家の中から消えてしまっていた。


 嫌な胸騒ぎがする。もしかしたら、復讐なんて愚かなことを考えているのかもしれない。返り討ちに遭うのは火を見るより明らかだった。


「ねえ? コリムは無事かしら?」


「なぜ俺に訊く? 俺が知っているとでも思ってるのか?」


 別にジョーカーが知っているとは思っていないが、そんな揚げ足取りな態度はどうかと不満に思った。


「ねえ、パパ。コリムお兄ちゃんはどこにいるの?」


 リトンが不安そうな表情で、ジョーカーの服を引っ張りながら訊ねてきた。アントが殺されて以来、リトンの感情は再び凍りついてしまっていた。


「俺にもわからん。だが、心当たりはある」


「はぁ? ちょっと、私のときと態度が違うんですけど!?」


「何を当たり前なことを言っている? 君には常識がないのか? 態度なんて相手によってころころと変わるものだろう? 誰に対しても平等な態度をとる奴がいたら、単に空気が読めていない馬鹿者だ。君は上司と恋人で、同じ態度をとるのか?」


 結奈はカチンときたが、今はこの性格の悪い殺人鬼と問答をしている暇はない。


「それで、どこに行ったと思うの?」



 ジョーカーが結奈を連れて向かったのは、例のエフルと出会った森だ。そういえばコリムは最近まで、エフルの兵士となって、ギルバルド軍と戦いたいと言っていた。確かに可能性はある。


「エフルの国、エヴァグリーンだっけ? 確かに可能性はあるけど、どうしてそれがわかったの?」


「別に確信があるわけじゃない。村や街のほうは他の奴らが探している。単に同じ場所を探しても意味がないと思っただけさ」


 まあ確かにそうだが、期待させたまま家で留守番させているリトンが、ちょっとだけ可哀想に思えた。


 ジョーカーはうっそうと木々が立ち並ぶ森の中を、頂上の方へと登っていき、しきりに上のほうを見渡していた。エヴァグリーンは森を抜けた先にあるはず。こっちに行く理由が見当たらない。そう訊ねてみたところ、


「エヴァグリーンまで行って、あのガキがいなければ馬鹿みたいだろ? 事前に情報が入るなら、それに越したことはない」


 なんとなく、ジョーカーが何をしようとしているのか理解できた。この辺りで斥候しているエフルの兵士に接触しようとしているのだ。だが、そんなに簡単に見つかるものだろうか?


「いたぞ」


「え? うそ!? はやっ!」


「こう見えても俺は、デドバイで赤帯のキラーだぞ」


 実は結奈もそのゲームを知っていた。殺人鬼が隠れたりしている人間を追いかけまして殺す対戦ゲームだ。友達の少ない結奈は、休日はゲームをして時間を潰していることが多い。と言ってもゲームの才能はなく、負けてばかりだが。ちなみに結奈はオバケイドロ派だ。


「まあいい。とりあえず、木をへし折れ!」


「だぁあああ! 折るな!」


 ジョーカーと結奈の会話が聞こえていたのだろう。エフルの兵士が、木の上から慌てたみたいに降りてきた。以前、会ったことのある女性だ。名前は確か、ラウラと言った。


「私を探しにきたのだろう? よく居場所がわかったな?」


「街を偵察するのに適していて、かつ見つかりにくい場所はここだと思った。それだけだ」


 ラウラは一瞬驚いたようだったが、すぐに表情を歪めた。見つかりにくい場所にいたのに、居場所を推測されては意味がない。これがギルバルド軍だったら命はなかっただろう。


「まあいい。もしかして、コリムという少年を探しにきたのか?」


「知ってるの?」


 まさか向こうから、その名を出されるとは思わなかった。


「少し前に森の中に入ってきた。大声でレフシ様の名前を叫ばれたのでな。仕方なく出ていった」


「それでコリムはいまどこに?」


「レフシ様と一緒にエヴァグリーンに向かった。どうしても行軍に加わって、三騎士に復讐したいんだそうだ。事情もだいたい聞いている。だから連れていくことにした」


 どうやらジョーカーの予想は的中したらしい。頭が良いのか、引き運が強いのか。


「――君たちは、コリムがギルバルドのスパイだとは思わないのか?」


 突然、ジョーカーが物騒なことを口にした。言うにこと書いて、なんてことを言うのだろう。


「はぁ? おまえは頭がおかしいのか? あの子どもがスパイなわけないだろ?」


 あっさりと否定する。よかった、と結奈は安堵した。彼女がジョーカーの言葉を真に受けていたら、大変なことになっていたかもしれない。


 刹那、ぞわりとした悪寒が走った。


 何気ない会話。その中でジョーカーは、自分が知りたい情報を手に入れる。直感で理解できた。今の質問は、エフルの何かを確認するためのものだ。いったい、何を確認したのだろう?


「レフシが戻ったということは、戦争が近いのか?」


「……そうだ。早ければ今日明日中には動きがあるだろう」


 ラウラが苦々しい表情で肯定する。


「それでどうするの?」


「リトンと約束したしな。連れ戻すしかないだろう」


 ジョーカーは一度村に戻ると、村長からラダーを借りて、コニッカの街へ向かった。

 

 エヴァグリーンへは数日かかる。今日は、コニッカに泊まる予定なので、今から行けば街で合流できるだろうとのことだった。

 結奈は村に残るかどうか迷ったが、ジョーカーに任せると碌な事ない予感がして、同行することにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ