選ぶ道は一つ
ご閲覧ありがとうございます。
今回の話は何だかまとまりが悪いような…?
あっ、でも見てくださる方はありがとうございます。
「……来ましたね。」
「ああ、覚悟は決まった。」
俺は再び、あの場所へと来ていた。
彼女の…フィオラの決意を聞き遂げた、今度は俺自身の選択をする番だ。
真っ白な部屋の中、『スノーローズ』の甘い匂いが鼻を抜ける。
その甘い匂いが、より一層集中力を高め、俺の決意に揺らぎが無いことを自分自身で自覚する。
その俺の顔を見たルピカさんは、目の前で優雅に紅茶を飲みながら…座り、見据えていた。
「そうですか…あの子、やっぱり受け入れてくれたんだね…。」
「勿論だろ? だってフィオラだぜ?」
そう言うと、彼女は少し悲しげな表情を浮かべながら…コトリと、白いテーブルの上に紅茶のカップを置いた。
そのまま立ち上がると…それまでそこにあったテーブル、椅子…そしてそのカップは、幻の様に消えていった。
彼女はこちらに近付くと、俺の前で止まり…俺の目を見て話を続けた。
「本当は、あの子の自由と夢を奪いたくは無かった…縛りたく無かった。
あの子にはあの子なりの考えがあり、夢があり…出会いがある。
賢者なんて…ならなくたっていいと思ってたわ。」
確かに、彼女には別のやりたいことが山程あるだろう。
賢者としての道を選べば…幾つかは少なくとも犠牲になる。
だが、それは承知の上での彼女の選択なのだ。
「それは当たり前だ…あいつだって本当は別の事をしたいと思ってた筈だ。
だけどな、あいつは選んだんだ…自分の夢を。」
「…自分の?」
「そう、自分だ。
あんたを母としてではなく…錬金術師の目標として見ていたんだ。
勿論あんたは母親だ、それはあいつも自覚している…だけど、最後に選んだのは母としてのアンタじゃなくて、錬金術師としてのあんただったんだよルピカさん。」
俺は彼女の目を真っ直ぐ見て言った。
目の前に居る…一人の錬金術師に。
「それにフィオラは、別に夢を奪われてもいないし自由だって奪われてない。
縛られもしていない…そんなプレイはアリストロメリアだけで充分だ。
おっと…ふざけるのはやめだ、とにかくあいつはそもそも最初から自分の為に全てを行ってきたんだよ。
俺も、最初は彼女の事だからな…きっとあんたの言葉を元に色々従ってきたんだって思ってたさ。
だけどよ…蓋をあけたらどうだ? 次々と自信満々な言葉が出てくる。
迷いもほとんど無かった、寧ろ俺の方が迷ってた位だ。
どうやら…親離れと言うか、子離れ出来てないのはルピカさんの方みたいだったな。」
「…ああ、要らぬ心配だったって事なんだね。
そうかい…錬金術師の辿り着く道は…同じって事だね。
そうだろう? アリストロメリア。」
「辿り着く…?」
ルピカさんがそう言うと、再び俺の影から形を成し…その威厳と風格を背負った姿で現れるアリストロメリア。
その言葉の意味を知っているのだろう。
どうせ分からないと踏んでいた彼女は、俺が質問をする前に説明をしてくれた。
「お主、錬金術師とは何か…分かるかの?」
「錬金術師…か。
知っている限りなら、自然のエネルギーを使って…その恩地を預かり、そしてその力をイメージに注ぐことによって物を生み出す人達…って位しか説明できないな。」
「うむ、基礎的な事は分かるようじゃな。
では…錬金術師とはそもそも何のために存在していると思う?」
「何のためにってそりゃあ…何のためだ?
人助け…自己満足…何でも考えられるし、どれでも無い気がするな…?」
「そもそも、錬金術師が何処から来たのか…それは分かるかの?」
「えっ? それはあんたが発足させたんだろ?
いや…良く考えたらおかしいのか…?
原初の魔女、最初の錬金術師だとしても…その錬金術を広めたのがアリストロメリア自身だとしたら、それを極め、賢者としての力を持ってもおかしくないよな?
それに、アリストロメリアじゃなくて…別の錬金術師が賢者になったんだろ?
あれ…考えれば考えるほどおかしな話だな…?」
「ふむ、まだ早いの。」
そう考えていると…彼女はため息をつき、俺を制止した。
どうやら、俺にかける質問としては大きな話過ぎて…まだその時ではないか…と言っていた。
彼女はまたそれはいずれ話すことにする…と言うと、単純な話をしてくれた。
錬金術師とは、要するに『世界で出来ない事をする人間』の総称。
つまり言い方を変えれば、『世界に満足できてない人間』らしい。
その世界で満足出来ないから…新しい世界を見つける。それが謂わば錬金術師の始まり。
アリストロメリアもそうだ、彼女の"世界"には何か足りなかった…だから錬金術を発足させたんだ。
だが…そう考えると…彼女が最初…とは言い難い気がするが、それは後に聞くとしよう。
そこまで話が聞けたところで、俺はあることに気づく。
満足出来ない世界…つまり、『世界』と言うワードが重要なのだと。
「…錬金術師が行き着く先は…自分の望む世界へと変えること…?」
俺がふと呟くと、彼女達は俺に向かって声を揃えて言った。
「「当たりだよ。」」
そうそれが、それこそが…辿り着く道。
つまり…啓示を受け、世界を変えることを許された錬金術師…その道を進む者こそ『賢者』なのだ。
錬金術師がみな求めるのは世界…フィオラも、何処かでは世界に満足出来ていなかったのだろうか。
それとも…錬金術師となった時点で、それを背負う運命にあったのだろうか。
彼女が迷いなく賢者の道に進むと言ったのは…。
「竜之介、実はお主が悩む必要など無かったのじゃよ。」
「アリストロメリア? どういう事だ?」
「最初はどうであれ…錬金術を使う人間は、いずれ満足出来なくなるんだ…世界に、自分に。
それを変えねばと…そう願う力がより、錬金術の力を上げていく…彼女の記憶を見ただろう?
例え今は彼女が断っても…私達が彼女を選ばなくても…いずれきっと彼女は『賢者の道』を歩んでいた…それが我には先程分かった。」
「…どういうことだ?」
「ふふ…まあそう言うことだよ。
いずれ…お主も分かるじゃろうよ。」
彼女はそう言うと、またお茶を濁して笑っている。
何故こうも俺に疑問を植え付けるのか…それが分からないが…きっと何か意味があるのだろう。
さて…無駄話が多くなってしまったが、フィオラの意志が決まった以上…俺も覚悟を決めなくてはならない。
「ルピカさん…それじゃ…よろしくお願いします。」
「…よろしく頼んだよ、あの子の事。」
「はい…審判者として…あの子の相棒として、彼女を導いて見せますよ。」
俺がそう言うと…ルピカさんとアリストロメリアは顔を見合せ…頷いた。
フィオラが『賢者』の道を選んだのなら…。
俺は彼女を導く『審判者』の道を…一緒に進もう。




