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竜之介への客人

 竜之介達はレン達の建てた『錬成鍛冶屋』の客間で、彼等に出して貰った飲み物を飲んで(くつろ)いでいた。


 そんな時店の扉の側面に付けられたチャイムの様な物が鳴り響く。

どうやら客人が来たようだ。


 ジャックは少し待ってくれと竜之介達に話すと、すぐに外へと出ていってしまった。

 レンに聞くと、どうやら重要な客人が今日訪れる見たいで、多分その人では無いかと言う事だった。


 そんな中でこんな呑気に自分達が座っていても良いのかと聞くと、それは問題ないとの事。


 どうやらその客人は竜之介の事を知っているらしく、もしかしたら知り合いでは無いのかと聞きたくて、店の紹介ついでに…と言う話だったみたいだ。


「どんな奴か知らないけど…まあ取り敢えず会えば良いのか?」


「はい、その人…良くこのお店に来るんですけど、お店を建てる理由となった人…つまり竜之介さんの話をしたら、どうやら知っていた見たいで…一度会ってる見たいですけど?」


「そんな奴居たかな…町の人間とは世間話程度だし、そんな記憶に残るような事は…まあ取り敢えず会ってみれば分かるかも知れないな。」


 竜之介は気になりながらもその客人が店に入ってくるのを待った。

 フィオラは邪魔すると行けないので少し出掛けてきますと、外へと一人で行った。


 彼女が町の方へと出る際に、店の扉を開いた所で…入れ違いの様にジャックが戻ってきた。


「説明済んだぜ、少年も話は聞いたか?」


「ああ、俺に会いに来たんだろ?

わざわざこの店で何てな…フィオラの家に来ればいつでも会えた筈なんだが…まあいいや。」


「まあそう言うなって、フィオラさんの家までは結構距離あるし、客人にとっては遠いんだよ。」


「ふーん…と、言うことはこの辺りに住んでる奴か。」


 この辺り…と言うと、かなり貴族に近い人間の筈だ。

 そんな人間に知り合いは居ない筈なんだが…と竜之介は少し不安げに考えながらも、その客人と会うことを決めた。


 ジャックにそう言うと、直ぐ様彼は店の扉に手を掛けた。


 ゆっくり…その店の扉を開くと、外の日差しが逆光になって、その中に小さな人影が一人…。

小さなその人影は…どこかで見た顔だった。


「どうぞ! 入ってください!」


 ジャックがそう言うと、その小さな彼は足を踏み入れ…入店が完了した所で扉を閉めた。


 さっきは逆光で見えなかったが…今は完全に見える。


 竜之介はその顔を見て、正直会うべきでは無かったと後悔しながら驚いていたのだった。




「おお! 少年! 久しぶりだな!

我を覚えているか? 湖では…世話になったな?」


「げっ!? あんたは…!」


 目の前に現れた客人と言うのは…以前湖で出会ったあの小さな子供…。

特徴的な緑色のマント…それに描かれる剣の紋章。


 大人びた口調で何処と無く不思議な威圧感を放つ子供、彼がここに『竜之介の知り合い』と言い張って現れたのだ。


 少なくとも知り合いではあるのだが…正直竜之介としては、二度と会いたくは無いと思っていた人物だった。


「な、何であんたがここに…俺に何の用だ…?」


「ふむ…実は度々お主の活躍は耳にしている、それでついついまた会いたくなってしまってな?

そうそう邪険にするではない…我は友好的な話をしに来たのだぞ?」


「お、おう…確かにあんたには別に何も悪いことはされてないし、失礼だったな。

…で、話ってのは何だ?」


 そう言うと、彼は人払いをするように申し出た。

 何やら大事な話の様で…レンやジャック達も席を外すようにと言っていた。


 それにしても…貴族とはな。

何者かと思っていたが、どうやらただ者では無いのは確かみたいだ。


 レン達は何だか不穏な空気を感じ取り、俺に心配の目を向けてきたが、俺は頷き…心配する必要は無いと意思を見せると、彼等は店の奥へと戻っていった。


※※※


 客間には俺と彼の二人。

 彼は何だか笑顔を浮かべて楽しそうな雰囲気だが…俺はそんな顔は出来なかった。


 何処からともなく溢れ出る、彼のオーラと言うか気配と言うか…それをピリピリと感じていたからだ。


「…お主、やはり我の魔力を感じ取っているな?」


「なっ…!?」


 ふと彼はそう言ってニヤリと笑った。

唐突に図星を突かれた俺は、言葉が出ず、正直恐怖すら覚えた。


 目の前に居るのは子供だ、少なくとも…見た目は。


 だが、緊張せずには居られない俺の姿を見た彼は…それが分かるとため息を漏らした。


「全く…これでは話が出来ないでは無いか。

もう少し…肩の力を抜いたらどうだ少年?」


「そう言われてもな…得たいの知れないオーラ出してる子供が目の前に居たら…油断も出来ねぇと思うんだが…。」


「ん? 何だ、子供の姿ってのが気に食わないのか少年?」


「いやそう言うことじゃないんだが…いや、まあ子供にしか見えないのにそう大人びた口調だと余計に違和感がだな…。」


「そうか…仕方ない、我もそう固まって居られたら話も出来ないからな。


 少し…"姿を戻す"としようか。」


「…はあ?」


 そう言うと彼は、スッと立ち上がると…腰に付けていた一冊の本を取りだし、急にそれを(めく)り始めた。


 そして…目をとじながら何やらぶつぶつと唱え始めたではないか。


 彼がその何かを呟くと…次第に周りが暗くなり…彼の周辺に光と風が集まり始めた。

 何が起こっているのか分からない俺は…その光景をただ口を開けて見ているしかなかった。


 光は収束し、彼の身体へと取り込まれていく…すると、みるみるその身体が大きくなっていくのが分かった。


 大きくなる身体は…立ったときの俺の身長とほぼ同じ位にまでなると、光り輝くその身体から…今度はキィーンとつんざく音が俺を襲った。

 思わず耳を抑え、見つめていると…その音が無くなると同時に…突風が巻き起こった。


「な、何だ!? ぶわっ!?」


 思わずその威力に椅子ごと後ろに飛ばされた俺は、カウンターの側にあった棚にぶつかって止まる。

 その衝撃で痛めた腰を擦りながら見ると…いつの間にか光やら風やらは無くなり…さっきと何ら変わらない店内に戻っている。


 あれほどの突風でありながら…店の物は何一つ倒れたり飛ばされては居なかった。


 飛ばされたのは俺だけか…と思いつつ前を見ると…そこには驚くべき姿が立っていた。


「いてて…って、なあっ!?」


「ふむ…何年ぶりかの、この姿は…どうもこの姿は肩が凝る上…歳を感じるので我は好まないのだが…これで良いか?」


 先程までの少し高めの子供の声ではなく…完全に大人びたハスキーな声。

 子供だった筈のその身体は…綺麗で、胸の大きな長身の女性の姿へと変わっていたのであった。

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