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待つのは『みんな』

ご閲覧ありがとうございます!

 この季節冷えますので体調にはお気をつけて…。

 無事にグジラボールを入手した俺達は、巨鳥の背中に揺られ、空の旅を…一人を除いて満喫したあと、東の町付近の草原へと下り立った。


 勿論、街灯などと言うものは存在しないので、周辺は暗かったが…直ぐ近くに見える町の明かりが居場所を示してくれていた。


 そして、背中から下りたところで、巨鳥(かのじょ)に礼を言った。


 彼女は俺達にこれ以上何も言わなかったが…それでも恩義を感じる瞳を暫く向けてから、再び飛び立った。

 翻訳機は…結局持ってかれてしまったが、まあお世話になったプレゼントだと思えば…安いものだろう。


 夜空に浮かぶ大きな月を仰ぎ見て…街の方へと足を進めた。


「ふう…長かったなぁ、今日一日。

 この…グジラボール一個にこんなに苦労するとはな。」


 表面にある根の毒を防ぐため、手織り布を介して持っているその食材を眺め…疲労と共に大きな達成感を感じていた。


 隣に居るフィオラ達も、疲れながらも笑みを浮かべている。きっと彼女達もこの達成感に笑みを浮かべずには居られないのだろうか。

 特に…ミッシェルに関してはこのグジラボールを眺め…よだれをだらしなく垂らして見つめている。


「えへへ…これからどんな料理が食べられるんだろう……楽しみ~!」

「お前はもうちょっと今日の達成感を噛み締めような。」

「噛み締めるよー! その料理の味を!」

「達成感をって言ってるだろぉぉ??」


 やはりコイツ…隙あらば食べ物の事ばかりだな。

 いや、まあ貴重な彼女のお菓子を使ったりしてたし…時間もあれだし腹は減るものか。


 ふとそう考えると、俺のお腹がまるで忘れていたかの様に今頃鳴り出した。


グー…。


 情けない音を鳴らし、思わず苦笑いしてしまう。と、そこで隣からも情けない腹の音が二つ。


 あはは…と笑って誤魔化しているのはフィオラとミッシェル。

 ミッシェルは分かるが、どうやらフィオラも空腹に耐えきれ無かったみたいだ。


「あはは…まあそうなりますよね…。」


「うわーん…お腹すいた~!早く行こうよー!」


「ミッシェルは先に行っててもいいぞ、メテロンに報告って事で。」


「マジ!?やったー!!じゃあおっ先~!」


 そう言うと、彼女はおもむろに自分の靴の側面…小さなボタンに手を掛けた。

 すると、側面に付いている小さなプロペラが周りだし…ってそう言えばコイツこんな靴履いてたな。


 結局湖で使うことは無かったけど…絶対要らないだろこれ。


「じゃあ!後でねー!」


 彼女がそう言うと、ブォン!と一瞬大きな音がしたと思ったら…物凄い量の砂埃(すなぼこり)を撒き散らしながら、高速で走っていった。


 勿論、その砂埃は残った俺たち二人に振りかかっているのだが…。


「ゴホッゴホッ!!バカ野郎!

 だからそれを風上で使うなっての!!」


「コホッ!コホッ!うう~!ミッシェルのバカ~!!」


※※※


 俺達はそのあと、目的の物を落とさないように慎重に、ゆっくり町へと向かった。


 連なる小さなランプの光が、夜の町の姿をまた幻想的に映し出している。

 昼の姿とはまた違った、神秘的で優しい雰囲気のした町の姿がそこにはあった。


 と、静かな町の中を進むと、一層ランプが多く付いた…ナイフとフォークが描かれた看板を見つける。

 そう、メテロンの店…休憩所(ニセルウィークト)だ。どうやら夜間も営業をしているらしい。


 中から人の声も聞こえる…相当な人数だろうか?


 よく見ると、店先で手を振っている人陰が見えた。どうやら、先に着いていたミッシェルが、手を振って誘導してくれているみたいだった。


「こっちこっちー!暗いから気を付けてねー!」


「おう!案内ご苦労さん!」


「行きましょう!リュウノスケさん!」


 彼女に誘導されるまま、店先へと到着すると…急いで急いで!とミッシェルに背中を押され、慌てて店に足を踏み入れた。



 するとどうだろうか、綺麗に装飾された店内は明るく照らされ、俺の目に飛び込んで来たのは…大勢のこの町の住人、そして大量の豪華な料理だった。


「おっ!兄ちゃん!それが幻の"グジラボール"かい!?へぇー!本当に持ってきたんだな!」


「それがねぇ!まさか本当に見つけてくるなんて…若いのにやるじゃないか!」


「あ、ああ。でも触るのは止してくれよ、毒があるからな。

 それにしてもこの人だかり…もしかして目的はこれか…?」


 どうやら、俺達が湖に行った噂が広まり、町の人間がこの店の中で帰りを待っていたとのこと。

 それにしても凄い人数だ…俺が店に入った瞬間、歓声とも取れる声が幾つも聞こえてきた。



 続いて店舗に入ったフィオラも、思わず口に手を当てながら驚愕していた。


 と、店の奥に目をやると、にこやかに手を振る一人の女性が見えた。

 綺麗なポニーテールの黒髪…特徴的な家政婦の衣装。そしてその目に掛けているのは"心眼のモノクル"。


 そこに座っていたのはリベルさんだった。


「リベルさん!待っていてくれたんですか!?」


「お嬢様もリュウノスケさんも帰りが遅いので…ここでお祝いの準備をして待っていたんですよ。


 本当にお疲れ様でした…ふふ。」


「お祝いって…それ俺がもしもグジラボールの採取に失敗したらどうしてたんだよ?」


「大丈夫ですよ、だってリュウノスケさんは……完璧(パーフェクト)…ですもの、ふふ。」


「ぐっ…全く…。でも、まあいいか!」


 何だか久しぶりに思える再会に、フィオラは思い切りリベルさんへ抱きついていた。

 笑いながら今回の話をリベルさんへ話している様だ、その姿は大変微笑ましかった。


 邪魔をするまいと、俺はその場から一旦離れ、彼を探した。


 人混みにぶつからない様に慎重に店の中を進むと、テラスの近くに長髪の中性的な青年の姿があった。

 誰かと話している…と思って近づいた所、話していたのはマルテッタさんだった。


 向こうも俺の姿に気付いた様で、驚き気味に微笑みを浮かべながら、手を振った。


「マルテッタさんまで!?随分と人が多いな…。」


「おお!リュウノスケじゃないか!それが例の物かい?」


「ああ!持ってきたぜ!ちゃんとな!」


「リュウノスケさん!本当に持ち帰ってくれたんですね!!」


 マルテッタさんた挨拶を済ませると、メテロンが血相変えて近づいてきた。

 思わず素手で触ろうとしたので慌てて制止しつつも、彼が求めた食材が目の前にあると言う現実に、彼も周りの人間も歓喜に溢れていた。


 慎重に手織り布と一緒にそれをメテロンへと譲渡すると、彼はうんと頷いて、急いで厨房へと向かった…どうやら早速調理を開始するみたいだ。


 手に持っていたそれが無くなったことで、正に肩の荷が降りた俺は、軽く肩をくるくる回すと、そこにいたマルテッタさんと少し話すことにした。


 マルテッタさんも話したいことがあるみたいで…話に付き合ってくれた。


「あんた、やっぱりただ者じゃないね…カテゴリー【エリクシール】を持った食材を取ってくるなんて…。

 あと、うちの子から聞いたよ!

随分とお世話になっちゃったみたいだね。」


「ああ、随分とお世話しましたよ…物も壊されるし。まあ直せるから良いんだけどな。」


「すまないねぇ、うちの子がどうしても行きたいって言うから…。」


「ん?あれ?メテロンが護衛につけたんじゃ無かったのか!?」



 マルテッタさんの話ではミッシェル自身、俺達の事がどうしても気になりわがままを言って来たとの事だった。

 やはり、面倒を見ていたのは俺の方だった訳だ。


 マルテッタさんは怒っていたのだが、俺は静かに(なだ)めた。

 事の経緯はまああれだが…実際は結構助けられた。


 素材の情報や、森へのルート…動物の治療や、緊急戦闘の時のアシスト。

 彼女が居なければ、きっと成し遂げられなかった事もある。


 巨鳥への接近、説得もそうだ。

 彼女が偶然持っていたお菓子のお陰でもあるからな。


 偶然彼女が俺達に目を惹かれて…偶然付いてきたから達成できた仕事でもあるからな。

 その旨をマルテッタさんに伝えると…ため息を付きながらも、優しく微笑んでいた。


「おかあさーん!ごめんちょっと来てー!うわぁああ!!」


「全く…あの子はまた…ごめんねリュウノスケ、また後で話そうかねぇ。」


「ああ、大丈夫ですよ。ミッシェルの所に行ってあげてください。」


「すまないねぇ…とにかく、うちの子の事ありがとうだね。

 コラ!ミッシェル!人様に迷惑掛けないでってあれほど…。」


「ふぇぇん!!ごめんなさーい!!」


 何かミッシェルが失敗したようだ、マルテッタさんが怒って彼女を叱っている。

 彼女も反省している色が見える…でも、何だかんだ笑ってたりして、両者とも本気で怒ったり落ち込んだりしてるわけじゃなさそうだ。


 仲のいい家族だ…きっと、ミッシェルのおてんばな所はマルテッタさん譲りなんだろうな。


 そんな事を思い浮かべながら、俺は気分を入れ換えると…フィオラを探しに行くことにした。

 今日一番活躍したのは彼女だ…労いの言葉を掛けたいと思っていたのだった。


 まだリベルさんと居るだろうか?


 竜之介はテーブルに置かれた小さなキノコを口に含むと、ふっと笑って、彼女を探しに行ったのだった。



「あっ、これ旨いな…後でメテロンに作り方教えてもらうか…。

 そういやミッシェルに料理を作ってやるって言ったりもしてたな…明日からもまだまだやることがありそうだ…。


 全く…この世界は…退屈って言葉を知らないみたいだな本当に。」

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