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フラワーアルケミストと異世界旅行 作者:此峰 優
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少女の悩みは少年の痛み

ご閲覧ありがとうございます!
少々シリアスです…あとお腹減りましt
 俺が持ち帰った食材によって、町の人々が集まったこの場所は…『休憩所』と言うよりは『宴会場』となっていた。

 近くで飲み物を飲んでいた人達に話を聞くと、これ程まで町の人間が夜間に盛り上がるのは、そうそう無いと言うことだ。
 それほどの事を成し遂げられたのかと思うと…俺も少しは胸を張れるのかも知れないな。

 人々を掻き分けながら会場の入り口付近まで戻ると、優雅にテーブルで食事を楽しんでいるリベルさんが見えた。
 赤い芳醇(ほうじゅん)な香りを立てる飲み物…どうやらこの世界に置けるワインと言ったところか。

 それを口にしながら静かに微笑んでいる彼女の姿があった。
 さっきまで一緒に話していたフィオラが見えない…何処か移動したのだろうか?

「リベルさん。」

「あら、リュウノスケさん…無事に食材は渡せた様ですね。」

「ああ、今から調理するらしい…所で、フィオラは?一緒じゃ無かったんですか?」

「お嬢様なら外を見たいと…確かテラスの方へと歩いて行きましたよ?」

「あちゃーすれ違いだったか…ありがと。
食事の邪魔してすまないねリベルさん。」

「いえいえ…リュウノスケさんも帰って来て疲れてるでしょう…無理はしないように。」

「分かってますよ!じゃあまた後で。」

 リベルさんが言うには、どうやら何とも言えない表情で外を見に行ったとの事、何かあったのだろうか。

 礼を言うと、彼女も笑顔で手を振った。

 暫くは食事をしているそうなので、何かあったらリベルさんを訪ねればいいだろう。
 俺は再び人混みを掻き分けながら、マルテッタさん達が居た方向へと戻る。

 すると、テラスの丁度奥…ガラス越しに見える小さな円型テーブルの一角に、見覚えのあるお菓子を食べながら一人で座る彼女の姿があった。

 近付くと、向こうも気付いた様で、手を振った。

 対面に座った俺は、彼女に何故一人で居るのか聞いてみた。

「フィオラ、こんな所に居たんだな…。
他の皆とは一緒に食べないのか?」

「リュウノスケさん…はい、私はここで良いんです。
この綺麗な星を眺めながら…座っていたいから…。」

 何やら悲しげな表情をしている彼女は、情緒(じょうちょ)に乱れを感じる声を出しながら答えた。

 様子がおかしいと思った俺は更に続けた。

「……フィオラ、何か隠し事してないか?
出掛けてた時と違って全然元気が無いじゃないか。」

 俺が彼女に強く言い過ぎない様に質問した。
しかし、彼女は目の前にあるクッキーを一つ口に含むと、遠くの景色を見て黙ってしまった。

 ふてぶしさの中に、少し劣情の混ざった様な表情で、美しい自然に広がる星の海を眺めていた。

 やはり何か気になる事…いや、彼女が気にしたく(・・・・・・・)ない事があると感付いた俺は、ふとテーブルを立つと、彼女の肩に手を置いて横に立った。

「リュウノスケさん…?」

「何か…この場でお前が嫌なことでもあったか?
もしそうなら…俺に話してくれ。別に誰に言おうって訳じゃないさ。」

 その言葉に彼女は少し考えると、背けていた顔を俺に向け、しっかりと目を見てきた。
 どうやら話してくれる気になったみたいだ。

 彼女はチラッと盛り上がる会場の中を見ると、その理由を話始めた。

「…見てください、あの左奥の三人組の人達…。
私の事をずっと見てるのが分かりますよね…?」

「三人…?あいつらか?」

 丁度視線の先、壁際に設置された大きなテーブルを占拠する様に座る三人の男…一人はただの青年に見えるが、他の二人はどうも荒くれの様な格好をしている。
 ギロっとした目で、ずっとこちらを見ているのだ。

「あの人達は…『錬金術師が嫌い』な人達。
いえ…正確には超常の力に対して不満を持つ人達です。」

「不満…でもこの世界の人間は魔法が使えるんだろ?そうならあいつらだって充分常人とは言い切れないんじゃないのか?」

「いえ…魔法は言わば"当たり前"。リュウノスケさんの世界では当たり前では無いのでしょうけど…。
 それよりも、私の錬成の様に…通常では手に入らない物などを作る人間を嫌うのです。
 彼等も仕事は生産職…この世界にとっては職人…それをその方面から見たら邪道だと見えるのでしょう。」

「何じゃそりゃ…ただの嫉妬じゃねぇか…。
 錬金術だって立派な技術だ、下手をすると職人よりも…。」

 と、そこまで言うと、彼女が首を横に振ってそれを(さえぎ)った。
 何故止めるのかと聞くと、この町は特に職人と呼ばれる人間が多く、そう言う(たぐ)いの人間に取っては錬金術は理解しがたい物なのだと。
 実際にこの町を支えているのは彼等…残酷な事に、(わきま)えなければならないのは彼女だと言うことだ。

 あまりにも理不尽…とんでもない社会だ。
 やはり、外見は綺麗に見えても、どの世界でもそう言う黒い部分はあるのだと実感した。

 それと同時に…彼女が言っていた『錬金術に理解を持つ者』の話の意味がよく分かった。

「…成る程な、錬金術を頼りにする人が居る一方で、それを好まない人間も居る…真に理解をしてくれる人間は少ないって事か…。」

「そう言うことです…。」

 もう少し話を聞くと、どうやら錬金術師と言うのはもうこの世界には少ないらしく、彼女の母代の時点で衰退が見えていたらしい。
 古より源を(つかさど)る技術でありながら…それを理解し行う人間が、更に別の技術の発展と共に消えていったとの話だ。

 こんなにも素晴らしい物なのに…まるで自然を捨てて機械に生きる現実の二の舞を見ている気分だった。



 だけど、そうだからとみすみすその下らない思想概念に身をやつす程、彼女の力は安くは無いと、俺ははっきりとそう言った。

 俺は…この世界が好きだ。
 だから、この世界の全てに劣等や格差なんて物を並べてほしくは無かった。


「…俺は、錬金術が好きだぜ。
 それに、ミッシェルもリベルさんも…他にもたくさん錬金術を好いてくれる人は居るはずだ。

 例え世界が否定しても…俺はしっかりとその姿を見ていきたいと思ってる。
 フィオラも、そんなのに流される様な弱い人間じゃない…だからもっと自信を持つんだ。」

「…リュウノスケさん……。」



 彼女は竜之介を見て驚いていた。

 相当気にしていたその事を、ただ純粋に好きだと言い放つ。
 そんな破天荒で自己満足な…それでも今の彼女にとっては魅力的な言葉を掛ける目の前の少年に、少女は目を離さずには居られなかった。

 そして、彼は軽く彼女にウインクすると、さっきよりも周りの人間に…わざと聞こえる様な声で言い出した。

「あり得ない力だからこそ、他のどんなものより優れているからこそ…その裏にはとてつもない努力と技術の末端が見えるんだ!
 フィオラがやって来たのはそう言うことだ、言いたいやつには言わせておけばいい…。

 今回成功させた『三色の錬成』だって、その他の錬金術師だとしても難しいはずだ。

 それをフィオラは成功させた…凄いことだろ?

 大体!このパーティーだってフィオラの力が無きゃ無駄になるところだったんだ…それをまるで邪魔者見たいに…おかしいよな?」

「りゅ、リュウノスケさん!そんな大声で…あわわ…。」

 と、彼女が慌てて静止するも時すでに遅し…きっと会場の人間に心ない言葉を掛けられてしまうのではと思うと、苦しくなりうつ向いてしまう。

 深く目を瞑り、覚悟を決める少女。


 だが、その心配は…無かったみたいだ。

「そうだそうだ!今回幻の食材を取ってきたのはこの嬢ちゃん達だ!
 相当辛かっただろうな!その歳でやり遂げるなんて…大した嬢ちゃんだよな!がははは!」

 一人の大男が、竜之介のその言葉に反応し…楽しそうに食べ物を頬張りながら大声で言ったのだ。

 するとどうだろうか、その周りに居た人達も、次々と彼女に称賛の声を上げ始めたのだ。

「おうおう!その通り!
俺達がこんな夜にばか騒ぎ出来るのもそのお陰って訳だな!」

「アタシ達こんなに騒ぐのはいつぶりかねぇ!
本当にありがとうね!お嬢ちゃん!」

「えっ!?あっ、はい!あ、ありがとうございます!」

「そんなところに居ないで!こっち来て食べな!疲れてるだろ!さあさあ!」

 最早グループとなっているその集団の一人が酔っぱらっているのか、酒臭い匂いを漂わせながら半ば強引に彼女を連れてってしまった。

 困惑する彼女を尻目に、周りはすっかり歓迎ムード…彼女の予想とは遥かに違うものだった。

「リュウノスケさん!ちょっとー!」

「まあ行ってこいって!主役はお前だぜフィオラ!
 辛そうな顔は似合わないぜ、少なくとも俺にとってはな。」

「そうそう!さあお嬢ちゃん!」

「あわわわ!!」

 こちらを振り向く彼女に、俺はグーサインとウィンクを送って上げると…彼女も諦めたように…そして小さく微笑むと…声は聞こえないが、確かに口の動きで『ありがとうございます』とそう言った。

 そのあとは楽しそうに周りの人間と話をしながら食事をする姿がそこにあった。

 余計なお世話だったかも知れないが…それでもこの世界にそんな黒々とした社会は必要ないと思っての行動だった。
 結果として、彼女の周りには言うほど嫌う人間は見当たらないし…小さい悪い部分が目立っていただけなのかもしれない。

 奥に居た三人は、その姿にチッと舌打ちをしたと思うと…貪っていた料理を数種類手に持ちながらそそくさと会場から逃げ帰っていったのだった。


「フィオラの錬金術を…いつかはこの町に浸透させて上げたいものだな。

 そうすれば彼女も余計な事を気にせずに集中できる…何かあれば俺がフォローしてあげないとな。

 やれやれ…やることがまた増えちまったな。」

 楽しそうに笑う彼女の横に、いつの間にかリベルさんとミッシェルも加わっている。

 俺もその姿を遠目に見たあと、テラスのテーブルで彼女が食べていたクッキーを口に運びながら…東京の空よりもずっと美しい星空を眺め、仕事の余韻に一人(ひた)っていたのだった。

「あっ、これ『スワンスクッキー』じゃねぇか。
……リベルさんの方が旨いな、また作って貰うか。」

 19歳の少年には少し甘すぎるその菓子を口に運びながら目を瞑る。

 夜空の光を身に浴びながら、少年は静かに微笑みを浮かべていた。
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