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力は偶然 想いは必然

ご閲覧ありがとうございます!

長いしシリアスですが…生暖かい目で見てくださいましー!

「始めますよ…。」


「ああ、頼んだぞフィオラ。」


「どきどき…。」


 充分な休憩を終えた俺達は、星輝く夜空の下…現実時間で夜の19時を回ったと言ったところだろうか、かなり遅くなってしまったが…遂に湖復元へ向けて錬金術の準備に取りかかっていた。


 既に俺の集めた『中和水液(ちゅうわすいえき)』と『赤魔土(あかまづち)』はフィオラの錬金箱に投入してある。


 そして、彼女自ら採取してきた『トキマダラ』の蜜を投入する…すると、これまでとは比較にならないほどの大きな青い光を、その箱のラインに沿って輝きだした。


 あまりの光の強さに咄嗟(とっさ)に目を庇う…彼女達も同様に眩しそうだ。



 すると、この光を見たフィオラが、不安そうな口調で話し出した。


「この光…これまで一度も無かった大きさの光です…!こんな力…私に制御できるのでしょうか…?」


 どうやら、彼女が言うには相当な力を得た物を作る羽目になるらしい。

 彼女自身…つまり、錬金術師である彼女が不安を抱くほどの強大な物を、俺達は作ろうとしている事になる。


 更に箱を良く見ると、錬金術を(ほどこ)す際に現れるとされる自然の力…つまり色の付いた光が既に現れている。


 この色の数で錬成難易度が上がる上に、精神力や体力…イメージをしっかり保たないと行けないのだ。


 そうだと言うのに、一つ…二つ…三つ…まさかの三色だ。


「三色…!?これは…。」


「相当…難しいって事だよね…?」


 翻訳機の時より…一つ多い!

 只でさえ体力を消耗しているのに…これじゃフィオラが持たないのではないのか?


 そう思った俺は彼女に不安の声をあげる。ミッシェルも心配している様だった。


「フィオラ、この光…『三色の錬成』は…したことはあるのか?」


 俺の言葉に、彼女はうつむいてしまい…目の前のこの箱から目を逸らしてしまった。

 当たり前だろう…確か翻訳機の錬成時…二色でさえあまりやったことの無い物だと語っていたんだ。


 ましてや三色…まだ未熟だと自覚している彼女には、少し荷が重い印象があった。


 だが、彼女は直ぐにうつむくのを辞め、自分の頬をペチペチと叩き…活を入れた。

 そして、真剣な表情で俺に向き直り、ハッキリとした口調で自信満々に答えた。


「やります!やって見せます!ここまで来て諦める何て…そんな事じゃ立派な錬金術師にはなれませんから!」


「フィオラ…。」


 あまりにも根拠の無い、そして空切(からき)りな自信…しかし、それが俺にとっては逆に清々(すがすが)しかった。


 それでこそ、そうであってこそ、がむしゃらに突き進むその姿が…俺は見たかった。

 目には闘志…全身には極限のイメージを宿すその力一杯な立ち姿に、俺は心を打たれた。


 この子なら必ず成し遂げると、そう思ったのだった。


 そして、俺は彼女の肩を掴んで目一杯の笑顔を作って言った。


「その粋だフィオラ!やろうぜ…フィオラのその錬金術も、湖の復元も、食材の確保も全部やっちまおう!そうと決まればいざ実行だ!準備はいいな、フィオラ!」


「はい!私も…"パーフェクト(・・・・・・)"にやってみせます!!」


 俺の言葉を強く呼応するように…今度はしっかりとそう言った彼女は、可愛らしくも力強い笑顔とグーサインを俺に掲げた。

 俺もそれに応える様にして、彼女に笑顔とグーサインを送り出したのだった。


 すると、近くでそれを見ていたミッシェルが、むーっと膨れっ面で俺達に異議を申し立てて来た。


「コラー!私を仲間はずれにしないでよー!」


 プンスカプンスカと可愛げな膨れっ面を見せながら、まるでエサを欲しがるハムスターの様に暴れだすその姿があまりにも面白くて、ついつい二人で笑ってしまった。


 でも、その後フィオラと目を合わせて頷き…彼女にもグーサインを掲げた。


 にっと笑いながらそれを目の前に掲げると、彼女は一息ため息を着いた。

 だけど、直ぐに向き直った彼女は…自身にとって最高の笑顔を浮かべ、同じくグーサインを掲げた。


 三つのグーサイン…こうして俺達は、意を決してその錬成に取り掛かるのだった。


※※※


「大丈夫だ…集中しろ…。」


「私達もしっかり見てるから…安心してフィオラ。」


 フィオラは目の前で大きなかがやきを放つ錬金箱に両手をかざし…目をゆっくり閉じて集中を始めた。


 その彼女の力に反応し…再び彼女のペンダントが光を(つむ)ぎだした。どうやら無事に形に入ることは出来たみたいだな。


 彼女は暫く、疲れているとは思えない集中力で、ただひたすらにイメージを箱の中身へとぶつけ続けていた。

 額に…そして首筋に垂れるほど、彼女の汗は身体を滴って行く。


 彼女は身体に流れる自然の力を一心に受け止めながら辛抱強く力を注ぐ…とてつもない集中力だ。


 すると、箱の光に反応があった。


「よし…光の拡散が始まったぞ!これで一段落終わったか…。」


「リュウノスケ、でもまだ油断は出来ないと思うよ…まだイメージは箱には届いてない筈だから…。」


「…本番はここから…か。

フィオラ、大丈夫か?」


「大丈夫です…かなり力の流れの制御が難しいですが……諦めません…から。」


 ミッシェルの言う通り、まだ箱にイメージの形成は出来ていない様だ…赤、青、そして黄色の光は、様々な場所に拡散し…そして浮遊している。


 これを制御し、形にする…それをすると言うことがどれだけ難しいことなのか…彼女のその姿を見るだけで容易に想像が出来た。


 ただ見守る事しか出来ないのはむず(がゆ)い物だ。


 と、その時、浮遊していた黄色の光の一部が、バチバチと音を立て…点滅を始めた。


 何やら嫌な予感がする。


「そんな…受け入れて…くれない!?」


「どうした!?」



 彼女が何やら不安な声を出した。


 そして、その光の点滅がどんどん早くなっていく…何が起こっている?

 ふと彼女の方を見ると、彼女の顔に…そして身体にも変化が訪れて居るのに気が付いた。


「フィオラ!?汗の量が…それに血色も悪いぞ!」


「フィオラ!大丈夫!?」


「はぁ…はぁ…!」


 彼女は次第に息も乱れ始め、かざしていた手の内、左手がぶるぶると痙攣(けいれん)を起こし始めていた。


 血色も悪く、どう見ても苦しそうだ。


「はぁ…はぁ…くぅ…!」


「フィオラっ!!」



 そして、苦しそうな一声を上げ…彼女は左手を下ろし…そして後ろへと倒れそうになる。

 それを寸での所でミッシェルが抑えた為、何とか大事には至らなかった…が。


 それを機に、光を拡散していた箱に異変が起き始めた。


 それまでバチバチと音を立てていた光が増え始め…遂には他の色の光までもが点滅を始めた。

 そして箱自体も、それまでの綺麗な青色の光から…赤いおぞましい色に変化を遂げ始めた。


 しかもカタカタと震え、今にも何か起きてしまいそうな雰囲気を出している…このままではまずい。


「これまでに見たことの無い色…暴走しているのか!?」

「そんな!このままじゃ…。」


 と、不安に声を重ねる俺とミッシェルに対し、苦しそうな表情を見せるフィオラが、首をゆっくり横に振りながら…口を開いた。


「ごめん…なさい…私のイメージ力だけじゃ……まだ届かない…見たいです。」


「何だって!?でも…"共鳴"でイメージは…」


「どうやら…少し何かが足りない様で…私のゴホッ!想像でそれを補うのは…難しかった見たいで…。

 錬金術の力と言うのはイメージ…どれがどんな風に出来上がって…何を求めるのか…それが必要なんです。

 私には…まだそのイメージが…足りなかった見たいです…。」


「そんな…やっぱり俺が考えたイメージと…いくら共鳴したところで具現化には至らなかったって事か…。」


 共鳴をした彼女は、確かに俺の考え付いた記録(レシピ)を受け継いでくれた筈だ…さっきもそれは確認した。

 だが…全てじゃない。どれかが欠落していたみたいだ。


 偶然とは言え、折角理解し合えた物なのに…。

 クソ!これじゃフィオラは力の使い損…あんなか弱い女の子に何も出来ないなんて…。


 せめて…せめて…。


 俺にも錬金術の力が使えたら…彼女に手を貸すことが出来るのに。


──────────────────────

「いや…待てよ…錬金術の力は『イメージ』…そうだったよな…フィオラ。」


「えっ?」


「リュウノスケ…さん?」


 俺は…極限まで追い込まれたこの異端な状況に、最後まで考え続けた。


 ここでの苦労…彼女達の行動…全てをここで諦めるのか?

 成り行きとは言え、一つの大きな夢を、成すべき事を得たのは…偶然か?


 偶然起きた暴走で、偶然足りなかったイメージによってその『偶然(ゆめ)』を終わらせる事に成ると言うのなら…。


 もう一度、『偶然(それ)』を起こせば良いのだ。



「フィオラ!!まだやれるか!?」


「リュウノスケさん…?一体何を…?」


「まだフィオラは諦めてないかって聞いてるんだ!」


 遂には箱を中心に大きく強い風が吹き出し始めた…しかし、それを全く気にすること無く、竜之介は大きな強い声で叫んだ。


 彼女を鼓舞する様に、奮い立たせるように。


「いいかフィオラ…こんなのは偶然だ。

大体この錬成だって、成り行きは偶然だ。


 偶然助けた巨鳥(かのじょ)によって偶然頼まれた、偶然の成り行きだ。


 今から作ろうとしてる物も、偶然俺が思い付いた物だ。そして…それが偶然、君に届いた。


 それが偶然足りないのならば…また偶然で補えば良い!」


「リュウノスケ!?一体何を!?」


 竜之介は(おもむろ)にフィオラの近くに寄ると、ミッシェルは下がってくれと頼み、代わりにフィオラを背中から支えた。


 訳も分からないフィオラは、されるがまま、竜之介に背中を預けていた。


「リュウノスケさん…何を?」


「いいかフィオラ…俺達が理解を分かち合えたのも、ここでこうして一緒に大きな一つの事を成し遂げようとしているのも、ただの偶然だ。


 君と親父が出会ったのも…俺がここに来たのも、出会ったのも…そして、共鳴したのだって偶然だった。


 だからさ…もう一回、"偶然"に賭けてみないか?」


「…もしかして…もう一度…"共鳴"を起こして…」


「そうだ!それをもう一度起こすことが出来るのならば…きっとイメージは完全になる筈だ。


 俺なりに考えてみた…さっきの事を。

 共鳴の発端(ほったん)は共通した思考(イメージ)と身体の接触…君が俺に触れた事で起きたよな?

 さっきはきっと俺が手を離したから中断されたんだろう…だから少し欠落してしまってたんだ。


 一緒に…もう一度、偶然を起こすんだ!今度は…離さない様にな。」


 竜之介は力強く彼女に向かって言った。

すると、彼女はその真剣な顔にくすっと笑いを溢した。


 だけど嘲笑うとか、そう言うのではない…彼女は、それがあまりにも面白そうだと…そう思ったから笑ったのだ。


 そして、彼女は震える左手で、後ろで支える竜之介へと触れ…その笑顔のまま答えた。


「やりましょう!今度こそ…完全なイメージを完成させる為にも!」


「そうこなくっちゃな!」


 そしてお互いに頷いた二人は、目の前で今にも暴れだしそうな箱をしっかりと見つめ、二人が求めるそのイメージを、箱へと念じる。


 彼女が触れた左手を、同じ手で…触れる。

 もう一つの手は彼女の右肩に、そして自分の身体で彼女を支える。


 度重なる偶然でたどり着いた大きな目的…それをまた偶然で塗り替える。


「分かってるよな!フィオラ!」


「はい!!」



 いや…もうそれは偶然何かじゃなく…"必然"へと変わっていたのだった。


 二人が強く想いを浮かべた時…彼女のペンダントが…強く…更に強く…反応した。




「「大いなる恵みよ…その種子に宿したるは命の息吹き…。

 今ここに、二人の知を持って…抗う運命をそれに顕現する!!

 相棒(レジフェルト)よ…力を!」」


 そう…まるで最初から、全てを知っていたかの様に…お互いは頭に流れてきたその言葉を並べ、強く願った。

 想い描く全てが繋がり…一つの糸となる…そんな感覚が彼らを包み込む。


 フィオラの胸にて輝くペンダントは、強い光を放ちながら揺れ動く。


 さっき起こった偶然ではない…必然故の光。


 あまりの光にミッシェルは顔を庇い…目を開けることは出来なかった。

 何が起こっているのかすら、それすら分からない程の光のカーテン。


 しかし、光に視界を奪われる中…ミッシェルの目に映った二つの影は…しっかりと手をかざし、力強く立つ少女と、それを支える優しくも大きい…少年の姿だった。

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