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命の帰還

ご閲覧ありがとうございます!

 こんな時間にですが更新してみました。

 えっ?見るわけない?当たり前だよなぁ(白目

─て…きて…。


 声が…聞こえる。

あれ?俺何してたんだっけ…えっとだな…。


 確か、俺達は湖を復元するために素材を集めて…それから…そうだ、集まったから錬金術を…。


 いや…待てよ…錬金術…どうなったんだっけ。


 ふと、見渡すと、周りは真っ白な空間…何もない…ただの白い部屋だ。

 いや…正確には目の前に一つだけ扉がある。


 ぼけーっとしてその扉を見つめていると、コンコンとノックをする音が聞こえた。誰だろうか?

 ふわふわとする身体を起こし、その場に立つ…すると、その白い扉はゆっくりと開き…一人の女性が現れた。


 赤茶色の特徴的な長髪…右耳にはイヤリングだろうか。

 化粧はそんなにしていない…だけど、充分魅力的な雰囲気を醸し出す…それに不思議な香りもする…どこか見たことのあるような女性だった。


 不思議に思った俺は、その女性へと話しかけた。


「あのー…あなたは…?」


「いらっしゃい…ふふ、あの子…素敵な相棒(レジフェルト)さんを連れてきたみたいね…。」


「は?えっと…あの?」


「まあ、座りなさい坊や。」


「あっ…えっ?はい?」


 俺は、その女性に促されるまま…訳も分からない状態で椅子へと座らされた。

あれ?さっきまでこんな椅子…あったか?


 それに、目の前には白い花の形をしたテーブル…それにマグカップが置いてある。

 中身は綺麗なオレンジ色の飲み物…紅茶だろうか?

 暖かいのか、湯気が立ち上ぼり、何とも落ち着く香りが漂ってきた。


「良いのよ?飲んでも構わないわ。」


 女性は椅子に座りながら、優雅にその紅茶を啜(すす)っている。

 俺も、その香りに引き込まれるようにしてそれを手に取り…口へと運ぶ。


 何とも透き通った味だ、何だか心の奥底から癒されている様な…そんな気分だ。


 すると、女性が紅茶をテーブルに戻し、俺の目を見て話をし始めた。


「あなた…ここに来たって事は…『あの子と交わった』…そうでしょ?」


「『交わった』…?それどういう…?」


「あっ、別にイヤらしい意味じゃないわよ?」


「誰もそんな事聞いてないんだけど!?」


 クスクスと笑う女性…どうやらからかっている様だ。

 交わった…って何の事だ?それに…良く考えたら…ここは一体何処なのだろう。


 最初は真っ白な部屋だと思ったけど…良く見たら壁一面に真っ白な花が付いてる…いや、生えているのか?


「で、どうなの?感想は?あの子にとってあなたは…どう思ってるのかしら?」


 俺の思考を遮るように、前のめりになりながら彼女が話し掛けてくる。あまりにもしつこい…だが、断ることも出来なかった。


 俺は困惑しながらも、彼女の質問に疑問で返した。


「あの、そもそもあの子って誰ですか?

さっきから何を言ってるんだか分からないし…それにここは何処で…」


「あら、残念…お土産話が聞けるかと思ったのだけれど…。」


「ちょっと最後まで話を聞いてくれませんかねぇ!?」


 また女性はクスクスと笑う…何だか調子が狂うな…そう言えばつい最近そんな様な事があったような…無いような?


 と、また考えていると、女性はすっと立ち上がり…再び扉へと歩きだした。

 俺は彼女が何処へ行こうとしてるのか分からないので、焦ったのか…思わず声を大きくして女性に話しかけた。


「あ、あの!あなたは…一体…?」


「あら、もう時間ね…本当はゆっくり話したかったけど…邪魔しちゃ悪いわね。

 あの子によろしく…ふふ…。


 またいらっしゃい…竜之介(・・・)君?」


「何で…俺の名前をっ!うおっ!?」


 そう言い掛けた時…女性はその白い扉のドアノブを回し…開けた。

 すると、中から強烈な風が吹き荒れ…瞬く間に俺の身体を襲った。


 抵抗できず、流される様にして俺の身体が宙を浮く…それと同時にまた、身体から力が抜け…意識も薄くなっていく。


 扉に消えるその女性の姿を…ぼんやりと視界に映しながら…俺は…意識を失った。



※※※

「……ん……さん……。」


「うーん……んー?」


「リュウノスケさん!!!」


「どわぁっ!?」


 ふと気がつく瞬間、俺の耳元でこれまでに無いほど大きな、聞き覚えのある声が聞こえた。

 唐突にそれは俺の鼓膜を通じ、身体をビリビリと痺れさせた。


 驚いて飛び起きた俺は、目を擦りながら半分寝ぼけ眼(まなこ)で周りを見た。


 さっきまでの白い部屋じゃ…ない。

 ふかふかの草の上だ…そして上空には綺麗な夜空が広がっていた。

 どうやら…夢を見ていたのか?そもそも何で俺は寝ていたんだ…?


 と、思いに耽(ふけ)って居ると、俺の視界の両側から可愛らしい二つの顔がひょっこりと飛び出した。

 目をぱちくりさせ…何だか心配そうにこちらを見つめている。


 勿論、その顔には見覚えがあった。


「ミッシェル…フィオラ…?」


「よかったー!起きなかったらどうしようかと思ってたよ!」


「リュウノスケさん?覚えてますか?さっきの事…?」


「さっきの…?…あっ!!そうだ錬金術!!」


 俺は急に飛び上がり、周りを再度見渡した。

 大きな羽毛で覆われた巨鳥…フィオラにミッシェル…そして…青い錬金箱。


 そうだ思い出した、確か…俺はもう一度『共鳴』を起こそうとして…それでどうなったんだ?

と、考えていると、フィオラがその錬金箱を手に取り、俺の前に持ってきた。


 すると、ふふっと微笑んだ彼女は…その箱を手の平の上でひっくり返した。



「これは…!!」


「リュウノスケさん…無事に…完成しましたよ!!」


 彼女のその小さな手の平の上には、かなり大きめの大きさで、つやつやとした…白い種が乗っていた。


 そう、それこそ俺が…いや、俺とフィオラが考えていた錬成物…『種』そのものだった。


「フィオラ…これ…って事は、成功したのか!?」


「はい!リュウノスケさんのイメージ…伝わりました!

 暖かくて…大きくて…それでいてとても純粋な想いの力が…私に届きました。


 リュウノスケさんが倒れちゃったのは驚きですけど、こうして無事に『種』も完成しました…けど…あと…。」


「あと…?」


「リュウノスケさんが…無事で良かったです。

 もしも何かあったらって思って…不安だったんですよ?」


 ふふっとあざとい笑みを浮かべるフィオラ。

 ミッシェルも腰に手を当てて、ふうと一息ため息を漏らした。


 どうやら、いつの間にか心配させてしまっていた様だ。


「そうか…ごめんな!心配かけちまったな!」


 そう言うと、彼女達はお互いに目を合わせると、今度は思い切り笑いだしたのだった。

 何がおかしいかと聞いてみると、クソ真面目に謝っている俺の姿が、あまりにも面白かったとのこと…全く、こっちは結構本気(マジ)だったんだけどな。


 だけど、どうやら俺の"賭け"は勝ったみたいだ。


 この笑顔が何よりの証拠だな。


 と、そこで急に後ろでバサバサと音が聞こえたと思ったら…巨鳥が急に俺のポケットに嘴(くちばし)を突っ込み…翻訳機を咥(くわ)えて持ち上げた。



「あっ!ちょっ!勝手に取るなって!」


 返せと手を伸ばすも、咥えたまま離さない。


 すると、その咥えた翻訳機から、また巨鳥(かのじょ)の声が聞こえ始めたのだった。


『小さな人間達よ…良くここまでやってくれました。

 貴方達二人が見せた、『真(まこと)の共鳴』…とても暖かい光でした。

 貴方達なら…その賢者の御業(みわざ)を…正しい力に導くでしょう。』


「真の共鳴…か。」


『その光は、繋がれた理(ことわり)を持った者が得ることの出来る光…力…。


 貴方達は…もしや…?』


 と、彼女がそう言い掛けた所で、俺はその言葉をある程度察してストップを掛けた。


 確かに、そうあってほしい…これが偶然以外なら…そう思うけど。

 でも、やっぱりそう言うのは合わないと思った。


「まあ、待てよ。

 これも…偶然だ、ただの偶然。

何でもかんでも繋がってるとかそう言うのは…ロマンって物が無くなっちまうからな。」


『ですが…。』


「そうでありたいと願うさ、コイツらとこんな経験出来たんだからさ…運命だって感じるわな。

 だけど、そうやって縛ったら…この先に起こること全てが縛られた糸の上を歩いてる事になる。


 そんなのつまらないだろ?


 だからさ、偶然…そう偶然何だよ。

偶然だからこそ…夢や経験ってのは輝く部分があるのさ。な?フィオラ。」


 俺が少し微笑みを浮かべながら彼女を見た。


 彼女もどうやら理解してくれている様だ…ふふっと笑って見つめてくれていた。


 そして巨鳥(かのじょ)も、そのちょっとした子供心に折れてくれたのか…それ以上は何も言わなかった。


 さて…少年マンガみたいなシチュエーションはここら辺にして…本題に戻るとするか。


 俺はそのまはまフィオラの元へと向かい、彼女クスッと笑い合うと、手を伸ばして言った。


「フィオラ、種を…。」


「はい、あと…これも。」


 彼女が種と同時に手渡したのは、以前鼠花(チューカ)やオオブネダケの時に使用した薬…植物を瞬時に育成する『育成促進薬』だ。


 どうやら俺が寝ている間にもうひとつ錬成してくれたようだ…疲れてるってのに、本当に凄いな…フィオラは。


 ありがたくその薬と種を受け取った俺は、彼女達を引き連れて湖の畔(ほとり)へと移動した。


 近くには広大な草原が見える…が、流石に夜も更(ふ)け、足元が見辛いのでミッシェルやフィオラに魔法で照らしてもらったりした。


 丁度畔から300メートル程離れた草原の真ん中…俺は、種をここに植えることに決めた。


「ここなら土も柔らかい…根を張るには充分な筈だ。」


 そう言うと、直ぐ様俺は土を10㎝程掘り、種を囲むようにして優しく土に埋めた。

 少し盛り上がりが出来るようにして、上から土を軽めに叩き…完全に地面へと埋め終わった。


 そして…フィオラから貰ったこの薬…『育成促進薬』だ。


 キュポン!とコルクを飛ばしたような可愛らしい音を立て、蓋を空けた。

 そのままその薬を盛り上がりの頂点から振りかける様にして撒く…その滴が月の光に反射してキラキラと光っていた。


「よし、みんな離れるんだ。」


 俺はその薬を一瓶丸々種へと与えると、みんなに下がるように指示をした。

 ミッシェルは何故近くで見ないのかと聞いてきたが…その理由(わけ)は直ぐに分かる事になる。


 俺が薬を撒いて30秒…変化が訪れた。


 みるみる内にその土から苗が…そして茎が育ち、葉が分かれる。

 ぐんぐんとその植物は成長を遂げながら…その姿を現していく。


「わぁー!凄ーい!」


「大成功ですね!リュウノスケさん!」


「ああ…!無事に成功したみたいだ!」


 みるみる大きくなるその茎の上部…まるで巨木とも言えるその巨大な姿の上には…とても巨大で、綺麗な白い花を咲かせていたのだった。


 そして、その植物…いや、花の根はまるで地上を波打つ海と思わんばかりに泳ぎ…その根は森へ、丘へ…更には湖へと延びていく。


 それを見届けた俺とフィオラは、お互い頷くと…声を揃えて言い放った。



「「さあ!穢(けが)れを光に変えて!」」



 この言葉に反応するように、花全体…根も茎も葉も全てが、綺麗な純白の光を放ち始めた。


 するとどうだろうか、広がった根の部分から、森や丘…湖へ蓄積されていると思われる何かを、光として吸収し始めたのだ。


 それはやがて、花の中心へと集まっていく…。


 そしてその光は、新たな生命へと姿を変えて…自然へと還るのだ。


『おお…自然が…森が……私の湖が還っていく………。』


 巨鳥(かのじょ)も、その帰還(・・)を目の当たりにし、うち震えた声で、そう言っていた。


 大きなその優しい黒い瞳からは…大粒の涙を流して。


 自然へと還っていく光は種子となり…やがて小さな白い花を咲かせる。

 それは親から生まれた子…命を宿した花だ。


 すると、ミッシェルが素朴(そぼく)に…この花に…花達に名前をつけるとしたどうするのか…と聞いてきた。


「名前…そうだなぁ…。」


 と、言った時…フィオラが手をポンと叩いて、満面の笑みを浮かべて言った。




「『活生樹(かっせいじゅ)』…そして『活生花(かっせいか)』…これではどうでしょう?」




「あー!フィオラ!俺が考えてたのに!」


「早い者勝ちですよ、リュウノスケさん♪」


「まあ…語呂(ごろ)も良いし…悪くねぇか。」



 活性化(・・・)に掛けて活生花(かっせいか)…またダジャレじゃないか…まあでも、これはこれであり…かな。



「活生樹(かっせいじゅ)に…活生花(かっせいか)かぁ!うふふ!良いじゃん良いじゃん!」


 どうやら、ミッシェルも気に入ってくれたようだ。


 喜んで花にダイブしている…まるで子供だ。

 と、ふとフィオラが話があるみたいで…側に座った。


「リュウノスケさん…改めて…ありがとうございました。」


「何だよ、急にかしこまっちゃって…。」


「私一人じゃ…あのレベルの錬金術は成功できませんでした…。偶然だとしてもです。


 悔しいけど…まだまだ未熟みたいです…。


 だけど!偶然リュウノスケさんと"共鳴"する事で分かったんです!」


「…何が分かったんだ?」




 すると、彼女は立ち上がり…数歩歩くと…俺の前で振り返り…言った。


「案外…偶然起こる事も…面白いものですね!」



「……ぷっ!なんじゃそりゃ!ははは!」


「うふふ…笑わないで下さいよー!私だって恥ずかしいんですよー?」


「わりぃわりぃ!でもフィオラも笑ってんじゃねぇか!」


「ふふっ…それもそうですね!」


 活生樹が吸いとった光は…直ぐに花を咲かせる種子となる…俺達の目の前には…どんなランプでも、どんなシャンデリアだとしても…人の手では作れない。


 純白に輝く命の光の花達が、この帰還した湖に…俺達に…安らぎを与える幻の様に、イルミネーションしていたのだった。




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