魔力の赤土
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余談ですが、そういえば昔はよく赤土を水に溶かして味噌汁ー!!とか叫んでたなぁ…今思えば泥水だって白味噌だろとか思いつつ…って何の話ですかねこれ(殴)
俺は湖近辺を後にすると、再び近くの森へと足を運んだ。
様々な植物が生い茂り、木々の隙間には小動物も顔を出している…どうやらここら辺は思ったより被害が少ないみたいだ。
湖の穢れを受けていない…と言うわけではないが、植物も比較的元気だし、動物も多い。
何にせよ、ここだけは周りと比べると比較的影響を受けてない場所の様だった。
と、そこで歩いていると、近くから聞きなれた甲高い声が聞こえてきた。
「はーい!みんな焦らないでね!
そこのネズミちゃんは怪我が酷いね…直ぐに治療するから待ってて!
あっ、こら!そこのフクロウ!リスを虐めないの!全く…。」
その声に釣られて歩いていくと、そこには森の動物達を治療することに奮闘しているミッシェルの姿があった。
どうやらこの世界にもリスやフクロウと言った動物は共通しているらしいな…それにしても大量の小動物に囲まれて、少し焦りつつある様だ。
人手も欲しいだろうか…俺も少し声を掛けてみよう。
「よお、まるで森のお医者さんみたいだなミッシェル。」
「あっ!リュウノスケ良いところに!ちょっとこの包帯巻くのと『ペンタフード』あげるの手伝ってよー!!」
「『ペンタフード』?その六角形の奴か?」
「治療用のエサだよ!フィオラにパパっと作って貰ったんだ!…でも動物が多くて間に合わないのー!」
「まあそう言うだろうと思ったよ…仕方ねぇな、ほら、貸しな。」
俺はそう言うと、ミッシェルから受け取った『ペンタフード』と包帯を手に、彼女の周りを取り囲む小さな動物達を手当たり次第治療することに。
彼女曰く、回復魔法と言うのは外見の傷を塞ぐだけで、本質的な痛みなんかは時間が掛かり、あまり緩和する事は出来ないそうで、包帯や何かで包んだり、貼ったりして身体に直接治療すると、その回復魔法を使用した魔力の残滓が包帯などに移り、内部的な治療を速めてくれるそうだ。
そんなこんなで俺は、その治療促進を促すために、それを更に増幅させる『ペンタフード』等を与えながら…彼女の手伝いをした。
※※※
少ししたあと、俺が手伝ったことによって進捗は良くなり、無事に動物達の治療を一通り終えることが出来た。
ミッシェルもいつの間にかなついてしまったフクロウを抱えて座り…撫でながら休憩していた。
彼女に抱かれたフクロウは、気持ち良さそうに目を閉じて寝ている。
ちょっと話したいことがあるらしいが、その子を起こすわけにもいかないので、静かにミッシェルと雑談を挟むことにした。
「ねぇリュウノスケ、ここって他の場所より植物や動物が多いよね?どうしてだと思う?」
唐突な質問だ…水が原因じゃないとしたら他の何かが関係しているのだろうか。
少し考えた所で、彼女がちょっとしたこの地の話をしてくれた。
「実はね、湖周辺の小さな森は本来枯れる筈の場所だったみたいなんだー。
土地の力?か何かが弱くて、本当なら砂地になってしまう筈だったらしいよ?」
「砂地…つまり砂漠化みたいな感じか…でも湖の周りは植物も多いし…それにここは湖の穢れの影響を受けてないな…どう言うことだ?」
砂地…そんな土地の性質だとしたら、生命を育む事など不可能だ、それこそ湖の穢れよりももっと酷い状態になっていてもおかしくはない筈だな。
それを回避して、尚且つここまで緑を育んだと言うのは非常に興味深い。
「えっとね、多分…それはここの"土"に理由がある筈だよ?」
「土?って…これか?」
足元に敷かれた赤い土…日本で言うと松茸が生えそうな色をした土だ。
見た目はただの赤土にしか見えないが…それが違うらしい。
ミッシェルが徐に土を手に取ると、その土がキラキラと輝いて…緋色の光を粒状に出し始めたではないか。
驚いてミッシェルが持っていた土を少し掴んだが…俺が掴んでも光は出なかった。
「あれっ…おかしいな…普通の人なら直に触ったら反応するはず何だけどー…?」
「反応?何にだ?」
「魔力だよ!ここの土は魔力に反応するんだー、蓄積する事も出来るみたいだよ?」
どうやら聞く限り、ここの赤土は魔力を持っていて、魔力を持った人間が直に触れると、それに反応して光を放つらしい…。
不思議な物があるもんだ。ここは本当に知識には飽きが来ない場所だ…親父も知ってたんだろうか?
※※※
俺達は続けて雑談を交わしていた所、ミッシェルが俺の出身について教えてほしいと聞いてきた。
丁度いい機会なので、俺が何処から来たのか…そもそも魔力と言う概念を知らないと言う旨をミッシェルに教えた。
最初はフィオラよりも驚いて、危うくフクロウを起こしそうになっていたが、何とか声を抑えて冷静に解釈した。
多分この赤土の反応は、俺には魔力が無いと言う事だろう…だから土が反応しないとすれば説明がつく。
ミッシェルもまだビックリしていたが、次第に受け入れてくれて、何とか整頓がついた。
「まさかリュウノスケが別世界の人だったなんて…夢みたい!
だからヘンテコな道具を持ってたりしてたんだね…驚いちゃった。」
「俺もこっちに来たときは驚いたさ、まあ戻るつもりも無いし、まず戻る方法も分からんからな…。
まあ改めてこれから世話になるかもしれないし、その時は頼むぜミッシェル。」
「世話…私がお世話…私に嫁ぐって事?」
「ちげぇよ!そもそも嫁ぐって女の子の方だろ?男だと養子だろうが…ってかそう言うお世話じゃないわ!」
「な、なーんだ!違うんだ!勘違いしちゃった、あはは!」
「んー?お前…疲れてんのか?顔も赤いぞ?」
「だだだ大丈夫!!それよりも記録の方は大丈夫なの?」
熱があるのではと思ったのだが、どうやら違うみたいだ。
それに半分何か誤魔化された様な気がしたが…まあいいか、元気そうだし。
そういえば今記録を考える最中なのを忘れていた…確かここで植物や動物を調べるんだったか?
でもみた感じ特に変わった変化はないし、特別育ってるって訳でも無さそうだ…。と、なると何か改善に使えそうな物は無いかもしれないな。
ミッシェルにも、記録作りに詰まっている旨と、何か良いものは無いかと聞いてみた。
すると、彼女はちょっとした事を教えてくれた。この土地の昔話みたいだ。
「そう言えば、この赤土も元々普通の土だって聞いたよ?
何でも400年前に"東の賢者"が魔力を与えて撒いた土何だって、本当かな?」
「"東の賢者"…400年前の話ねぇ…。」
そう言われて見ると、その賢者とやらが魔力を与えたお陰で緑が育つようになった…と考えると辻褄が合うかもしれない。
それに、湖の影響を受けないとすると、それほど土壌の力が強いと言う証にもなるな。
だとすると…この土はかなり強い力を持っているのかも知れない。
「まあ昔のお話だし、本当かどうか分からないけど…この光る現象とかを見てると面白いし、動物や植物も喜んでるみたいだからねー。」
「ふむ…もしかしたらこれ…使えるかも知れないな。」
「えっ?リュウノスケ…この土を使うの?」
「取り敢えずな、まだ分かんないけど…魔力を含んだ土ってのはもしかしたら触媒か何かに使えるかも知れないからな…。」
魔力を秘めた土…まあ赤いし『赤魔土』とでも呼んでおくか…。
俺は適度な量の土を手に持つと、動物達の治療の際に使って余った包帯に包んだ。
それをリュックにしまい、ミッシェルに引き続き調査する事を伝えた。
「もしかしたら使えるかも知れないし持っていくわ。
面白い話ありがとな、引き続き使えそうな物を集めたりして記録を考えていくぜ。」
「うん!私もまだ怪我してる動物が居ないか探してみるね!
じゃあ…また後で!」
「おう!頑張れよ!」
俺が手を振って彼女に一時の別れを告げる。
と、そこでふと…何故かフラッシュバックの様に先程出会った子供の事が再び頭をよぎった。…もしかしたらミッシェルが知ってる人間かも知れないな。確かミッシェルは何でも屋らしいし…情報には強いかもしれない。
ふと振り返り、その子供の事だけ聞くことに。
「あ、なあミッシェル。」
「んー?何ー?」
「いや…ちょっとした事なんだけど…。
ちょっとカッコいい紋章がついた緑色のマントを付けた子供…って誰か分かるか?」
その言葉に、彼女は頭にはてなを浮かべているようだ。どうやら…彼女でも分からないみたいだな…。
いや、もう会うとは限らないし聞くまでも無かったかも知れないな。
「うーん…何それ?なぞなぞ?」
「いや!やっぱり何でもねぇわ、忘れてくれ!
じゃあ後でな!」
「ありゃりゃ、行っちゃった…何だったんだろう?」
きっぱりと話を切り上げた俺は、さっきの子供の事を忘れる様にして歩き出した。
今何となく集めたのは『中和水液』と『赤魔土』だ…次は何を探してみようか…。
そう言えばフィオラはどうしてるだろうか、ちょっと探してみるか。
夕焼けはすっかり色褪せ、空には星が出始めている。
暁から宵闇に変わる境目を上に眺めながら、俺はフィオラを探してみることにしたのだった。




