不思議な子供
ご閲覧ありがとうございます!
これを書いてるときは結構外とか冷えてるので、皆さんもホットミルクティーとか飲むと暖まりますよ。まあ冷えきった独身の心は暖まらないんですけどね。
「子供…何でこんな場所に…。」
俺が湖の調査を終え、移動を開始しようと思っていた所、何やら足音が聞こえたので振り向いたんだが…その小さな丘になった場所、俺を丁度見下ろせる場所に子供が立っていたのだ。
夕日を背中に受け、子供とは思えない威厳を漂わせるその雰囲気を、俺は少しばかり感じていた。
目の前にいる男の子…だろうか?何処と無く中性的ではあるが多分男の子だ。
いや、良く見ると女の子かもしれない…姿が姿だけに顔だけでは判別が困難だった。
すると、その子供が丘の上から声を掛けてくる。
「やあ、君は何をしているんだい?」
どうも子供らしくない口調で俺に問いかける。
何処から現れたのか分からないけど…まあ質問には答えるべきか。
「あーっと…まあ湖の調査って所だ、何か湖がおかしくなってるって話を聞いてな…。」
「ふむ…となると君は研究者か何かかい?」
「ま、まあそんな所だな。」
それとなく話を流す。
何だかこの子供の目を見ていると、大切なことを見透かされる様な気がしてくる…何者だろうか。
「そうか…所でその道具は一体何だろうか?
初めて見る品だ…何処で手に入れたんだい?」
「これか?これは…まあ珍しい場所で買ったんだ。もう手に入らないかもしれないな。」
珍しくも何ともないただの雑貨屋で買った道具だけどな…まあこの世界の人間にとっては珍しい道具かもしれないな。
しかしこの子供…何処から来たのだろうか…もしかするとただ大人びた子供で、迷子だった…とか言うオチもあり得るしな…ずっと構ってる訳にも…。
「なあ君、ちょっと触ってみても構わないか?」
「…なっ!?」
ふと目線を逸らし、一瞬目を離した隙の出来事だった。
さっきまで目の前の数メートル先に居た子供が、たった数秒…一瞬にして俺の真横に移動していた。
大人が戦力で走っても10秒…いやもう少しか、それをまるでワープでもしたかの様に俺の横に現れた。
驚いたが、冷静に考えればここは異世界…あり得てもおかしくは無いか。
取り敢えずは質問に答えるとしよう…この子供、ただの迷子何かでは無さそうだ。
「…ああ、そこをそうやってやれば成分が出るぜ。」
「おお、ありがとう…どれどれ?」
俺の指し示したボタンをポチポチ押しながら、成分検査機を弄っている。
何とも目を輝かせて、珍しい珍品を探しに来た骨董屋の如く眼差しで見ていた。
どうも胡散臭い子供だ…所々わざとらしく子供の様な振る舞いを見せている。いや、違うな…背中につけているマントを見せびらかしているのか?
そこには十字に矢と杖?が描かれた紋章がマントに付いているが…これは何か感想でも言った方が良いだろうな…多分。
そう思った俺は、取り敢えずそのわざとらしい仕草に応えるように声を掛けてみた。
「あんた…そのマントカッコいいな、どんな素材で…。」
「だろうだろう!?我のお気に入りなのだ!
素材は最上級の毛皮と繊維で作られ、丈夫さを増すために鉱石の粒もコーティングしてあるのだ!
キラキラして綺麗だろう?それにこの紋章!どうだ?カッコいいだろう!?」
「お、おう…。」
やっぱり食い付いたか…何だこいつ…。
どうやらこのマントに執着…いや、執着してるのはこの紋章かな?とにかくこのマークがお気に入りで何よりだ…。
話の食い付き方はただの子供みたいなはしゃぎ方だけど…どうも引っ掛かるな。
「なあ、あんた何処から来たんだ?ここは今危ないって話が…。」
「のう、この棒と石がくっついた道具はどうやって使うんだ?」
「お前クッソ自由だな!!てか勝手に触るなよ!」
「良いではないか!我と君の仲だろう!」
「初対面だよ!まだ出会って数分経ってない位だろうが!!」
「なんじゃつれないのう…。」
こいつ…話に乗るとペースを持ってかれて乱されてしまう…どんな時でも完璧なこの竜之介さんが、素性の分からない子供にペースを持ってかれるとは…。
取り敢えず、話を全く聞かないその子供は、数分ほど俺の『科学実験セット』を弄くり回し…やっとの事で満足したのか、シートに座り込んで気ままに寛ぎ始めた…てかそのシートどっから出した。
暫く付き合っては居たが、時間が気になるな。早く記録を作る続きをしたいのだが…何だか知られてはならない感じがしてならない。
ここは取り敢えず気が済むまで付き合うとしよう。
「なあ、あんた…今度こそ聞くがどっから来た?何か目的があったんじゃないのか?」
「おお!そうじゃそうじゃ、我も噂を聞き付けてここに来たんだよ…それを解決出来るならしようと思ってねぇ…。」
「何の噂を聞いたんだ?」
そう言うと、途端に立ち上がってシートを片付け始めた。片付けながら俺を見てきたが…何となく目を逸らした。
そしてそのシートを抱えると、歩き出しながらこう言った。
「どうやらこの辺に『魔物』とやらが出ると噂での…あわよくば"討伐"…と行こうと思っていた所じゃ。」
「…。」
俺は敢えて何も言わなかった。
やはり迂闊に喋らなくて正解みたいだな…こんな子供が巨鳥を…。
どうも不気味な瞳で俺を見てきたので、冷静さを装いつつ、真っ直ぐ…彼の目をみた。
吸い込まれそうな瞳だ…それに、何か大きな違和感と雰囲気を纏っている。
何故か気圧されそうになるが、それでも正体不明の彼の目をひたすらに見つめた。
すると、彼はふっと目を閉じて笑い、再び来た方向を戻っていく。
その間際にも俺に言葉を残しながら。
「ふふ、どうやら…噂は所詮噂だったみたいだねぇ、いや…もう終わったみたいだ。
まあ我がやることは無いみたいだし、君の邪魔をするわけにも行かなさそうだ。
その道具面白かったよ…ありがとう。
『賢明な少年』よ。また何処かで会おう。」
彼はそう言い残すと、沈んでいく大きな太陽の方角へと歩き出した。
見つめていると、太陽の光がさっきより眩しく見えて咄嗟に目を庇った…するとどうだろう、彼はいつの間にか消えていたのだ。
結局何者か分からなかった…それにあの言い方と目は一体何だったのだろうか。
いずれまた会うことになるかもしれない、と思いつつ、彼の背中に纏われた特徴的なマントを記憶に刻んだ。
と、一瞬の出来事に感覚が麻痺していたが、今は急いで記録を作っている最中だったのを忘れていた。
次はえーっと…そうだ、取り敢えず周辺の食材や動物何かを調べてみるんだったな。
俺は早急に道具を片付け、リュックにしまった。
それを背負い、取り敢えず森の方へ戻ることに。
西の空に大きな半円を照らす夕日を眺めながら、近辺の森へと足を運んだ。あの子供の事を少し考えながら…。
「結局何者だったんだ…あいつ。
まるで最初から分かってたかの様な口振り…次会った時は気を付けた方が良さそうだ。
………。
いや…出来ればもう会いたくは無いかもなぁ…。」




