落ちるは黒
ご閲覧ありがとうございます!
話長引き過ぎぃ!簡単にまとめて、どうぞ。と言われても仕方ないっすねぇ…はい。
「はっ!ほっ!」
怒り狂ってしまった鳥の集団は、統率等と言った行動を既に忘れ、一つの動物としての本能だけで、ただただ突っ込んでくる。
俺はその集団を次々と自前の格闘術『ドラゴスレイ』によって打ち払っていく。
さっきは失敗して力を入れすぎた為に、五匹程重症を負わせてしまったが…もう大丈夫だ。感覚はしっかりと定着し、手加減も出来るようになった。
俺は一度実践すればそのコツは直ぐにでも覚える。これであまり傷つける事無く彼らを払うことが出来る。
「よし…集中力や疲労感はそのままだが…この威力で保てれば立派な『防衛技術』として使える…殺しや傷つける為に覚えた訳じゃないからな…よっと!」
トスッ!トスッ!と次々と軽快に、かつ先程とは違った余裕と動きの軽さも相まって、為す統べなく鳥達は気絶し、後ろの地面に落ちていく。
もう3分の2は撃ち落とした。
統率の乱れた動物程恐れの無いものは無いだろう。それが幸いにも無防備に特攻すると言う道を選んだが為の結果だった。
「リュウノスケがこんな常人離れした人だったなんて…ただの変な男の人だと思ってた!」
「生身でこれ程の数を…まるで流れ作業の様に撃ち落としていますね…。」
「うーん…何だか鳥肉の生産現場みたいだよね!」
「おいそこ!俺がそんな無闇に動物を肉に変える奴等と一緒にするな!俺は畜産のお兄さんじゃねぇよ!てかさっさとそいつら治療して気絶だけでも回復させといてくれ!」
だが…躊躇無く鳥を次々に落としている自分の姿は、端から見たらとても恐ろしい物だと考えると…やはり少し気が引けてしまう物だ。
出来ればもう特攻するのは止めてほしい所だ…そろそろ無駄だと言うこと位学習してもおかしくは無い筈だ。
それとも…何処かでコイツらに命令を出している奴が居るのかも知れないな…フィオラ達に任せてみるか。
ある程度捌ききった俺は、ダッシュで二人に駆け寄り、細心の注意を払いつつ、状況整理を開始する事にした。
「ある程度収まったな…流石に手が痛いぜ。」
「でも…さっきより嫌な表情も怖い表情もしてないし、それどころか嬉しそうだよ?」
「ああ、まあな。そりゃ自分でもヤバイと思ってた技だしな…こうやってただ『守る』技術として使えてるのが嬉しくてな。
名前には"殺し"と付いてるけど、実際は殺したくないし、そんなつもりも最初から無い。
ただ威力とその技の目標を立てたかったから"竜殺し"何て名前にしたんだ。まあ…実際に殺さずに済んで本当に良かったぜ…。」
「そうだねぇ…私が居なかったらあの五匹も危なかったけど…。」
「あれは完全に失敗だ、技の完成に犠牲があってはダメだからな。そう思うと本当にありがとな、ミッシェル。」
俺が軽く微笑んでグーサインをすると、彼女もにひひと笑ってグーサインを返してくれた。
ミッシェルが居なかったら…命の犠牲が出てたと思うとゾッとするが…。
大体、人間の言う"技"と言うのは"殺す"為の物と"生かす"為の技がある。
危うく"殺す"技になるところだったが…まだ安心は出来ないな、もっと極めて…"生かす"技、相手が驚いて逃げてくれる位までに納めないと。
格好つけて殺した…何てサイコパスにはなりたくないからな。
と、雑談はここまでだ、俺もスイッチを切り替えないと。
改めて彼女達に一つの推測を立て、実行できるか聞いてみることに。
「フィオラ、ミッシェル。
二人とも魔法が使えるよな?俺は見ての通り魔法何て便利な物は使えない。つまり遠距離攻撃はこの銃…残り5発か、これだけしか使えないって訳だ。把握したか?」
フィオラは頷いたが、ミッシェルはうん?と首を傾げている。
何か疑問に思うことを言ったか?
「えっ?リュウノスケって魔法使えないの?」
「そりゃあ…当たり前だろ、俺はただの人間だぞ?魔法なんて使えたらこんな危ない技覚える必要無いだろう…?」
「えぇ!?この"世界"に魔法が使えない人間なんて居るの!?知らなかった…。」
と、ミッシェルは驚いて居た。
そこで思い出したのだが、そう言えばミッシェルには俺が何処から来たか、まともに言ってなかったか…それとなく気づいてるかなぁと思ったが、そもそもコイツがアホの娘なのを忘れていた。
まあ…後でそれは話すとしよう。
いちいち付き合ってたらまた雑談が始まるからな。
「まあ色々あるんだ、後で話すから今は疑問に留めとけ?な?」
「えっ?うん?分かった?」
「えっと…でリュウノスケさん、私達に頼みたい事があるんですよね?」
フィオラが真剣に話を戻してくれたお陰で、ミッシェルも一緒に俺の目を見た。
俺も頷いて、早急に作戦を伝える。
「そうだな、さっきも言った通り、俺は銃でしか遠距離に攻撃を仕掛ける事は出来ないんだ。
それもあと5回…出来れば温存したい、何があるか分からないからな。
そこでだ!二人にほんの少しの威力でいいから、出来るだけ遠くに居る鳥を狙ってほしい、ただそれだけだ。」
「それだけって…それだけ?」
「何か意図があるんですよね?」
「そそ、でもそれで俺の考え通り状況がもしも変われば、後は俺の番だ。
それで見つけた…司令官を叩くだけだからな。」
「司令官?」
そう、俺がやろうとしているのは"炙り出し"だ。
出来るだけ遠くで指揮を出すのは指揮官や司令の務め…司令官自ら飛び込むなんて事は無いだろう?
それを利用し、遠くの敵を牽制することで、もしもその敵が司令官なら…多少成りともまた動きがある筈だ。
そのタイミングはいずれ現れる…それに、司令官が存在する確証もある。
統率の取れていた鳥達が状況を見ても無謀に突っ込んでくる…頭が良い筈なのにだ。それは戦争で焦った敵司令が兵士に無茶苦茶な命令を出す無様な様子に似ている…。
頭が良いからこそ、恐怖には敏感だろう?だからそう感じたのだ。
少し頭を抱えていたが、二人ともしっかりと役目を果たしてくれると約束してくれた。
後は…炙って出てきた邪魔な焦げを払うだけだ。
「頼んだぜ二人とも、俺は…コイツを守りながら好機を待つぜ。」
俺の背中に横たわる、巨大なその身体…振り向くと、その巨鳥は、何か意思のある表情を見せながら、大きな黒い瞳を輝かせて俺を見つめていた。
そして直ぐ様二人は散開し、様々な角度から攻撃を開始した。
※※※
暫くした後だった。
彼女達が攻撃を始めても見向きもしなかった鳥達が、次第に彼女達を見るようになったのだ。
数匹程捌きながら、2方向に別れた二人を見る…すると、明らかにフィオラの方に鳥達が集まっている…そしてフィオラが再度攻撃する。
「ウィンド!フレイム!取り敢えず遠くに飛んでってくださーい!」
彼女が思い切りステッキを振り抜くと、2発の玉がミッシェルの方面…俺から見て11時の方向だろうか、その中の一発が偶然にも奥の一匹にヒットした。
一方は外れたが…何やら様子がおかしい。
俺はそれを見逃すこと無く、しっかりと凝視した…するとどうだろうか、その一匹が鳴き声を上げ始めた。
「グァア!!グァア!!」
カラスにも似た声をあげたその固体は、更に上空、そしてフィオラとは逆の方向に進み…止まった。
そう、フィオラから距離を取ったのだ。
それに…その鳴き声と同時に残った群衆にも動きが現れた。
「あっ!フィオラ危ない!」
「わわっ!な、何ですか!?」
反対側で察したミッシェルが、フィオラに声を掛ける…その時、俺に襲いかかっていた鳥達は、一気に標的を変え、フィオラに襲いかかったのだった。
急いで俺はフィオラとミッシェルに退避する様に叫んだ。
その合図を受け、彼女達も俺の方へと戻り、彼女達と巨鳥…二人と一匹を守る形に戻る。
俺は直ぐ様、ぜぇぜぇと息を切らして走ってきた彼女達に労いと称賛の言葉を掛けた。
「よくやった!危なかったな!」
「はぁ…はぁ…何か分かりましたか!?」
「ぜぇぜぇ…疲れた…何か分かったの?」
「勿論だ、あの個体を見てくれ!」
俺が指差したのは、フィオラの一撃が当たった個体…更に確認すると、他の個体より一回り大きいようだ。
俺がそいつを見ると、運が良いのか悪いのか、その個体と目があった。
すると、その個体が鳴き声を上げた。それに伴って、それまでフィオラを攻撃しようと接近してきていた鳥達は、攻撃を止め…静止した。
間違いない…アイツが『司令官』って訳だ。
「アイツが本命…って事だろうな…よし、後は任せ…っておい!?」
俺は後の仕事をするために意気揚々と前に出て格好をつけたのだが…何と直ぐ様乱れた息を戻した二人は、俺の横に並ぶように前に出たのだった。
どうやら…俺が今からやろうとしていることを理解してくれたみたいだ。
こうやって並ぶと…何だかゲームの主人公になった気分がした。
驚いている俺の顔を見て、二人とも微笑んで、うんと頷いた。
「フィオラ…ミッシェル…。」
「やっと分かったよ!あの鳥をピンポイントで倒したいんだよね!?フォローは任せてよ!」
「疲れてますよね!私だって周りの鳥さんを退ける事ぐらい出来ますよ!リュウノスケさん!」
二人だって結構疲れてると思うけど…まあこの際だ、ありがたく好意を受け取っておこうか。
少し苦い気持ちになると同時に、何だか暖かい思いも伝わってきた。
…実を言うと、周りの奴等をどうするかまでは考えていなかったので、彼女達に状況一本取られたって感じだな。
何にせよ…これでコイツらとの厄介な喧嘩もお仕舞いだ。元はと言えば俺が『キテキソウ』を踏んだせいではあるのだが…。
だけどそれで害を為すのなら止めなくちゃならないのが呼んじまった俺の責任だ。
俺は腰に携えた相棒を再び構え…リロードをする。
弾の詰まりは無いか、リコイルはしっかりしているかと最終確認を済ませた。
そして…カチャリと銃口を向け、セーフティを外し、引き金に手を掛けた。
それに気付いたのか、咄嗟にその『司令官』は周りに居た群衆に紛れようとした…が。
「それっ!」
「逃がさないよ!」
二人の放った魔法はその個体を取り囲む様にして発射され、周りに居た個体は慌てて散っていく…そして周りにはそいつを守る盾は居なくなった。
慌てて居るようだ、右往左往した挙げ句、最後は何を考えたのか…自分自ら此方に一直線で飛んできたのだった。
「仲間を盾にしようとして…いざ無くなれば特攻か…憐れだな。
これで終わりだ!!落ちちまいな!!」
「グァア!!グァアアアア!!」
バァン!と強烈な炸裂音が鳴り響いた。
その音は一筋の空気の道を作り出す様にして、標的の体に突き刺さる。そして…その道を辿るのは一発の弾丸。
目にも止まらぬ早さで到達するその鋭い痛みは、その標的の意を得ることも無いまま…気絶…と言う結果だけを残して、過ぎ去った。
無惨にも落ちていくその黒い影は、沈んでいく夕陽に黒い絵の具を垂らしたかの様な…憐れな光景だった。




