不穏な黒影
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話が例の如く長引いてますね!申し訳ない!許してください!何でもしm
最悪の黒歴史を刻み込んだ俺達は、何だかギクシャクした雰囲気を残しながら、木陰で待っている巨鳥の元へと向かっていた。
特にミッシェルはずっと顔を赤くしてそっぽを向いている…こいつ実は真正面でそう言うこと言われるとダメなタイプかよ。
あまりにも急にしおらしくし始めたので、流石に俺も違和感を隠せない。仕方ないが、声だけ掛けて戻って貰うしかないか…。
「あー…ミッシェル、いつまでそうしてるつもりだ?」
「ひゃい!?」
反応が急にうぶになっているが…何だかやりにくいなぁ。
「あのな?そんな急にキャラ変えられてもな?お兄さん困っちゃう訳ですよ。
頼むから忘れて元のミッシェルさんに戻ってくれると助かるんだけどなぁ?」
「うう…ま、まあ確かに私らしく無いって言われると…し、仕方ない!さっきのは事故!きっと偶然!よし解決!」
「よーしいい子だ、そうやって忘れろぉ?俺の黒歴史ごと葬りさってくれぇ?」
何だか無理やり塗り潰そうとしているが、こう言うのは記憶に残しておくとあれだ、後々そういうのが響いて嫌な事が起きたりとかするから、俺が見てきたやべぇ漫画にはそう言う展開が良く描かれて居るのを俺は知ってる。絶対やべぇやつだから。
さっさと奥底にブラックアウトしてしまえ!黒歴史だけに!
「ま、まあミッシェルも災難だったな!俺の変な思考にたまたま当たっちまってな!
自爆は仕方ない!サバゲーでも突っ込んで自爆とかあるからな!」
「でもさっき…リュウノスケさんは本当の意味で火の付いた爆弾でしたけどね。」
「やめろぉ!常に爆弾発言してる見たいじゃないか!爆弾だけに!」
「その寒い発言がそもそも爆弾だと思うんだけどー…?」
フィオラやミッシェルが的確に俺の胸に釘を刺してくる。
全くもってこれまで考えてた事とかを振り替えると、まるで心を読まれた様なベストアンサーだった。
まともに言い返せる言葉が無くて、震える手を抑えながら項垂れるしかなかった。
「も、もう気にしてないから!ほら!急がないとダメじゃないのリュウノスケ?」
「おお、そうだそうだ!ミッシェルの言うとおりだ!さあ行こう今行こう!」
「はぁ…リュウノスケさんったら…もう。」
「ん、フィオラ?どうした?」
「な、何でも無いです!先を急ぎましょう!」
※※※
気を取り直した俺達は、さっきまでの道を最短ルートで進んだ。少し急ぎ足でその場所まで進んだ。
湖も見え、あの鳥が休んでいた木陰までそんなに遠くはない筈だ。
「見えてきたな…ってあれ?」
「どうしたんですか?」
「アイツが居ない…。」
「えっ!?ここで和解したんじゃ無いの?」
確かに俺はこの木陰…湖の畔、植物や木々が生い茂るこの地点で、アイツと別れた。
その筈だったのだが…おかしいな。
あの身体でそう遠くまで行くことは出来ないだろうし…近場に移動したのだろうか?何か手掛かりがあれば…。
と、ふと俺がポケットに手を入れたとき、一つだけミッシェルから貰ったあのお菓子が余っている事に気が付いた。どうやら全部あげ損ねていたらしい。
が、それを手にした時、ある考えがよぎった。
「なあフィオラ、確かフィオラって匂いが良く分かるんだったよな?」
「はい?確かに一度覚えればその匂いが分かりますが…それがどうかしましたか?」
「これなんだけど…。」
俺が彼女に出したのは先ほど入っていたお菓子。
あの巨鳥へと渡したお菓子と同じ種類の物だ…それを見た彼女は不思議そうにしている。
「私のお菓子!…それがどうしたの?」
「実はな…これの匂いを辿れないかと思ってな。」
「お菓子の…匂いですか?」
「何か犬っころ見たいな事をさせて悪いけど…手当たり次第歩き回るよりマシだと思わないか?
大丈夫だ、アイツの嘴に破片がくっついているのは確認している。」
幸いにも、嘴を触った際に、その破片がザラザラと手に付いたのを僅かながら感じていた。
あれだけ乱暴に貪れば、綺麗に食べることなど忘れるのは当たり前だ。
それに、このお菓子は結構甘い香りが強い…フィオラの嗅覚ならもしかして辿れるのでは無いかと思ったのだ。
フィオラは少し考えると、笑顔でうんと頷いた。
「分かりました、やれるだけやってみますね!」
彼女はそう言うと、俺の渡したお菓子の匂いをクンクンと確かめた。
眉をしかめながらも、とても可愛らしくそれを続ける…まるでチワワを見ている様だ。
チワワだったら…こうすり寄って来たりして…上目遣いしながら尻尾振ったりとか…まあそれがフィオラ見たいな美少女だったら破壊力凄いだろうな…。
「リュウノスケ、鼻血出てるけど…。」
「いやな、俺よりある意味で破壊力の高い爆弾を見つけてだな…。」
「はあ?何それ…?」
「覚えましたよ!…あれリュウノスケさん!?鼻血が…。」
「ああ、今話しかけないでくれ…火薬が漏れる。いや…漏れるのは火薬だけじゃないかも知れないな…。」
「えっ…?」
「いや漏れてるのはリュウノスケの血だと思うんだけど、火薬でも何でも無いよ!?大丈夫!?」
訳の分からない会話をしつつも、フィオラがどうやらお菓子の匂いを辿る準備が出来たそうだ。
そのまま続けて匂いを調べて貰った…彼女は当たり前の様にその鳥が居た木陰の方へと向かっていく。
と、その奥に続く小さな森を見て、指を差した。
「あちらの方から匂いますよ…結構近い見たいですけど…?」
「やはりか、あまり動ける筈は無かったしな…全く…ありがとなフィオラ、早く向かおう。」
「その前に鼻血何とかしようよリュウノスケ。」
どうやら結構近くに居るみたいだ。
フィオラの辿れる範囲で助かったが…また食料でも探しているのか?
さっさと鼻血を拭き取り、余分な火が付かないように思考を切り替えた俺はその匂いを頼りに森へと入る事に。
この湖まで来る時に抜けてきた森に比べたら、寧ろ林…と言ったレベルの大きさだろうか、そのまま直進を続けながら枝を掻き分けてその場所まで向かった。
※※※
2、3分歩いた所で直ぐに草原に抜ける場所が見えてきた。ただ、逆光であまり確認できない。
「眩しいな…さっさと抜けてみるか。」
薄暗く、光が通らない小さな林を抜けると…目映い夕方の光を受けながら、小さな草原にたどり着いた…のだが。
そこに見えた光景は…目を疑う物だった。
「なっ!?お前!大丈夫か!?」
「と、鳥さん…?」
「す、凄い傷…。」
そこに居たのは、元の傷よりももっと深手を負った巨鳥の姿…さっきまでは傷ありながらもまだ動ける程だった筈だ。
慌てて駆け寄り、傷を見る。
どうやら何か噛みつかれたりした様な傷があちこち…それに出血もしている。
意識はあるようだが、その大きな身体を草原に横たわらせて力無く呼吸している。
俺達が来るまでの数分間に何が…。いや、それよりもこいつの手当てが先だ。
「二人とも!布か何か、止血できる物があれば貸してくれ!抑えるだけでも大分楽になる筈だ!」
「え、えーっと…ごめんなさい!布は持ってきて無いみたいです!」
「無いか…それなら何か止血出来そうな植物か何かが…。」
そう思い周りを見渡すが、周りはどこも普通の草原…止血出来るほどの柔らかい草や、それに代わりそうな物も見当たらなかった。
巨鳥の呼吸が弱まっている…飢餓も相まって危険な状態かも知れない。
どうするか…と思い、自分の衣服が代わりに出来ないかと考えたが、出血量が合わない…衣服が無駄になるだけだ。どうしたら…と困り果てていた時、ふと俺の後ろから急ピッチでミッシェルが走ってきて、傷の前に座った。
「な、ミッシェル!?」
「たまには私も役に立たないとだもんね!」
そう言うと、ミッシェルは優しく両手を目の前にかざした。
出血している傷に、そのまま直接手を当てる…すると、彼女の両手がきらびやかな光の粒子を発しながら輝き出した。
驚いて見ていると、これまでにない真剣な表情でその光を傷に送り込んでいくミッシェル。
溢れた光を触ると、光は何処と無く暖かくて、まるで人の生身を触った…人肌とも言える温度を持っていた。
そして…更に驚くことに、あり得ない現象が立て続けに起こった。
「これは…!」
俺は目の前で起こった事象に思わず声が出てしまった。
ミッシェルが手を当てていた場所…深い傷が出来ていた場所を良く見ると、彼女が手を少し離した時には…その傷が綺麗さっぱり無くなっていたのだ。
そして、それを目撃した俺は思わず口に出してしまった…現実ではゲーマーやそれらしい人間なら夢にも見たであろう…あの魔法の存在を。
「これは回復魔法か…!?」
「あれれ?リュウノスケ…知ってるの?」
ミッシェルの見せたそれは…回復魔法そのものだった。
不思議な光を纏い、エメラルド色の髪にそれが反射し、彼女を引き立てるその姿はヒーラーそのもの…癒しの女神にも見えた。
「まさかそんな幻想的な事が…いや、そもそも錬金術や元素魔法がある辺りでおかしくはないか…?」
「何ぶつぶつ言ってるの?傷は塞がっても痛みは残るんだから、ちょっと手伝ってー!」
「ああ、ごめん…フィオラ、水だけあるか?」
「はい!それならありますよ!」
※※※
俺達はミッシェルの意外な特技に助けられながら、それに協力し、衰弱するこの巨鳥の身体を癒す手伝いをした。
最初こそは痛みで動けなくなっていたが、回復魔法のお陰もあり、無事にその場に立つことは出来るようになった。
すっかり元気になった様で良かった。
フィオラ達に警戒すること無く、その大きな黒い瞳で此方を見つめていた。
「良かったなー無事で…それにしてもお前その傷どうしたんだ?この数分の間に何があった?」
「言っても分からないと思うんだけど…その為の『翻訳機』でしょ?」
「おお、それもそうだな…ごめんな、ちょっとお前の声を聞かせて…。」
そう言い、俺が『翻訳機』を巨鳥に向けようとした時だった。
ふと、目を合わせていた巨鳥が、草原の虚空に目を向けた。
その瞳はまるで警戒心を表し、不安と焦燥を駆り立てるような…そんな表情だ。
何だ?と思い、俺達は目を合わせて首を傾げる。すると、突然巨鳥が咆哮を上げ始めた。
「グルッポォォ!!グルルル!!」
とても怒りに満ちた声だ、それを空に放っている。
そして、その声をあげる空…夕焼けが出始めた太陽の方角を見た俺達は、何か不穏な空気を感じ取った。
そこに見えたのは空を覆う大きな黒い影…いや、あれは大きい影ではない。
何か小さな物が集まって出来た…群衆の影だ。
「何だあれ…もしかして!」
「あの群衆が襲ったやつらなんじゃない!?リュウノスケ!」
「ああ…だとしたら…来るぞ!!」
その影は迷うこと無く此方に向かってくる。
それを黙視した時、その正体と、異様な緊張感と共に、この鳥を守る…まさに防衛を開始する事になってしまった。
腰に携えた相棒に手を掛け、そしてセーフティを外す…狙うは…黒い影。




