依頼のために
ご閲覧ありがとうございます!
そろそろ冒険の時間ですかねぇ…(遅い)
「宜しかったんですか?リュウノスケさん?」
「ん?ああ、大丈夫ですよリベルさん、ちょっと取りに行ってみるだけさ。それに対策も考えてある、特に…"魔物"の…な。」
一度フィオラの家に帰宅した俺は、メテロンから引き受けた依頼のためにリビングで準備をしていた。
マルテッタさんから頂いた金属を仕分け、部分と種類ごとに取り分けていた。
フィオラが自分の部屋から錬金術の小さな箱を持ってくる。
俺が頼み込んで少し錬金術の力を借りることになったのだった。
※※※
時間は少し遡る、メテロンとの話の時だ。
俺のその無責任とも取れる発言にビックリしていたメテロン、そしてミッシェルの二人は半分止めに掛かっていた。
「何を言っているのですか!お客様にそんな危険を…。」
「そうだよ!リュウノスケ…何を取りに行こうとしてるのか分かってるの?」
「な、何だよそんなに危ないもんなのか?」
「勿論です、僕が取りに行こうとしているのは…【エリクシール】の"カテゴリー"を持つ食材なんですよ?」
「【エリクシール】?なんじゃそりゃ?」
初めて聞く名前だ…"カテゴリー"って事は何かの種類なのだろうか。相当危機迫った顔で止めに入るものだから、少し気が引けてしまった。
と、困惑する俺をフォローするように、その"カテゴリー"と"カテゴリー"の【エリクシール】についてフィオラが知っているようで、説明してくれた。
「リュウノスケさん、"カテゴリー"って言うのはその素材や食材、動物や植物等の分類に当てられている物で、それを種類別に説明する物なんですよ。」
「まあ所謂種類って言うのは大体分かってたんだけどさ…その【エリクシール】って奴はどうなんだ?」
「そうですね…【エリクシール】とは神秘の力を示す物で、例えば動物であって植物…鉱物であって水、と言ったように複数に分けられたカテゴリーの中でも特に特殊な物を【エリクシール】とカテゴリーでつけて呼んでいるんです。
因みにカテゴリーと言うのは元々錬金術の知識だったりするんですよ?
他にも例を挙げると【食材】【鉱物】【植物】【動物類】…それに【燃料】【金属】【魔法】【毒】【水】等々…挙げると切りが無いのですが、そんな風に分けられているんですよ?」
「成る程…じゃあフィオラのあの花…鼠花なんかも【エリクシール】に当てはまるって事だよな?後は…【動物類】と【植物】って所だろうか?」
「そうです!良くわかりましたね!」
フィオラの丁寧な説明でそのカテゴリーについては良くわかった。
錬金術の知識はきちんと物に対して分別する丁寧さがあって面白いな…っとそれよりも本題だ、その【エリクシール】が特殊なのは分かったが、何故危険なのかまずはその食材の詳細を聞かないとな。
「カテゴリーの事は分かった、だけど…その食材は何なんだ?勿体ぶらずに言ってくれよメテロン。」
俺が真剣に聞くと、ミッシェルと目を会わせるも妥協してくれたようで、その詳細を話してくれた。
「実は…東の湖に生えている"グジラボール"と言う食材なんですが…カテゴリーは【エリクシール】【食材】【植物】【毒】です。
ただえさえ【エリクシール】の素材や食材は扱いが難しく、環境も過酷だったり危ない生物が近くに居たりするのですが…特にこの"グジラボール"自身も危険な上、湖には魔物も住んでいると言われています。」
「カテゴリーに【毒】って事は何かの拍子に毒が出るって事だよな?多分それが危ない原因…それに魔物…まるでゲーム展開レベルの危険度だな。」
毒はまだ何か対策が出来そうではある。まだ詳しい話を聞かなくてはならないが、それよりも気になるのはその魔物って奴だ。
まさかそう言う類いの物が居るとはな…フィオラの家の近くから動いてないから、知らないのは当たり前か。
それにしてもその魔物とやらがどんなものか…それも調べる必要があるな、ついでに聞いておくか。
「なあメテロン…その"グジラボール"の取り扱い…それにその魔物って奴だ、それの詳細…分かるか?」
「ええ…僕が知りうる情報は有るだけ教えられますが…本当に宜しいのですか?」
「危ないのはメテロンが行っても同じだろ?
それに俺が手伝うって言ってるんだ、心配ないぜ?
何せ俺は…天才だからな。」
「は、はぁ…、自信があるのは頼もしいのですが…まあ良いでしょう、情報をお教えします。」
「おう!任せろ!」
ミッシェルもあわあわしながら俺を見ている。
ふと後ろを見て、フィオラに目で合図すると、フィオラも分かっていたと言わんばかりの微笑みで優しく俺を見ていた。こんな無茶振りに付き合ってくれるフィオラも…相当御人好しだよな…ついでにそれをニコニコしながら見てるリベルさんもね。
こうして情報を得た俺は、その食材…"グジラボール"とやらを東の湖に取りに行くことにした。何だかんだ初めての遠出になりそうだ。
場所はここから徒歩でおおよそ3時間程の場所、まあ初めての遠足にしちゃそこそこだな。
そして…ある程度情報をまとめ、ある考えとその準備の為に、一度フィオラの家に帰宅した…と言うわけだった。
※※※
そして時間は先程に戻り、フィオラに錬金術の小さな方の箱を用意してもらった。
今から作って貰うのはこの貰ってきたばかりの金属から作るもの…まさに"錬金術"を使った俺の為の物を作る。
こんな貴重な力を私利私欲の為に、使うのは気が引けるし悪いとは思うのだが…その聞いた魔物とやらを退けるにはそれが必要…。
つまり、俺が作って貰うのは…『武器』だ。
サラサラと設計図を紙に書き、俺が思い描く最高の武器をイメージする。
フィオラいわく、錬金術とはイメージを形にする物らしいからな、記録に模した設計図を作れば…きっとフィオラも作りやすい筈だ。
「よし!出来た!これを作って欲しいんだけど…どうだ?」
フィオラに書いた設計図を見せる。
リベルさんも気になったのかそれを覗き込むと、お得意の"モノクル"を使ってその武器の用途を暴いた。
「これは…"種子を電気を帯びさせ、弾丸にして発射する機械"…ですか!
リュウノスケさんは"機械"の武器を作ろうとしていたのですね…魔物相手に武器は必要…そう言うことでしたか。」
「えっ!?機械!?それってあの…前の夜にリュウノスケさんが使ってたピカピカするあの物と同じものですか?」
「うーんそれとは違うけど…それよりかなり危ない機械だ。それに武器だからな、取り扱いは注意しなければダメだ。…因みに、作れそうか?フィオラ。」
俺が心配そうに彼女を見ると、満面の笑みで自信満々に答えた。
「はい!これをそのまま…と言うのは難しいと思いますが、この書いてある部品毎なら多分私でも作れると思います!」
「おお!寧ろそっちの方が助かる!後で改造出来るかも知れないからな…頼んだぜ!フィオラ!」
「はい!では…取りかかりましょう!」
俺達はその武器作りに入った。鉄と鉛を使って胴体を、そして発射機構に柔軟な金とアルミ。
発射口を挟むように命中率を安定させる物も。
グリップ、バレル、グリッチ、サイト…そう、分かる人間には分かるあの武器だ。
日本では持つことは出来ないが…ここではそんな縛る法律は…無い。
扱い方はアメリカで習った、何度も射撃練習はしてきたつもりだ。
そう、俺が作っているのは…『銃』だ。
比較的取り回しの利くハンドガンを作っているのだった。
俺が聞いた魔物の情報は、どうやら空を飛ぶ魔物で、大きな魔鳥…と言われているみたいだ。
積極的に人間を襲うらしく、何人もの犠牲者や怪我人が後を断たないそうだ。
そこで考えたのが、シンプルに空を飛ぶものに対抗できる銃…って訳だ。
「それでは!始めます!下がっててください!」
「頼んだぜ…フィオラ!」
彼女が箱に金属を投入する。
手の平サイズの箱だと言うのに、大きな金属が幾つも次々と入っていく、やっぱりどうなってるんだこの箱は…。
そして目を瞑りイメージした彼女に呼応する様にして、箱の周りの青いラインが輝きだした。
青白い光に包まれながら不思議な力が部屋を満たす。
良く見ると、また彼女の胸のペンダント…"賢者の花"のペンダントがその光に反応している…あれも錬金術で作られたもの…きっと彼女の錬金術の力の助けになっているのだろう。
一言一言、フィオラは不思議な言葉を綴る度にそのペンダントと箱が反応する。
現実とはかけ離れたこの不思議な光景に、俺は心を奪われていた。
「大地の恵みよ…偉大なる大地の力よ…!
さあ…素材の皆さん!私のイメージに答えて!えいっ!!」
フィオラが勢い良く箱に両手をかざし、声を掛けた。すると一層光は増し、青いラインが点滅し始めた。
その光は集束するように箱に戻って行き…最後はキランっと一光りすると、カタカタと音を立てながら、その箱は静止した。
いつの間にかペンダントも光を失っている、どうやら出来上がった様だ。
「出来ました!それっ!」
彼女が勢い良くテーブルに箱をひっくり返した。
すると、中からゴトゴトと俺が設計したパーツが全て完璧な仕上がりで出てきたのであった。
通常の銃より重い金属で作られているのにも関わらず、何処と無く軽い、それなのに丈夫だ…これが錬金術の成せる業なのかも知れないな。
「完璧だフィオラ!本当に作っちまうなんて!」
「えへへ…初めてです、金属を使った錬金術は…。
これまで植物や動物の素材ばかりでしたので、心配でしたが…成功して良かったです!」
そして、出来上がったばかりのその部品を、手慣れた手付きでカチャリカチャリとはめこんでいく。
カチャッ、カチッと鳴るこの音…何だか久しぶりに聞いた気がするな。機械ってのはこうじゃないとな。
幸い、プラスチックに似た植物性鉱物も混ざっていたお陰か、本場の銃みたいにとにかく扱いやすかった。
全ての部品をはめ、その完成形を目にしたとき、何だか中二病にでもなった様な、オレカッコイイ状態の気持ちが込み上げてくる。
片手で構えてみたり、ジーパンのベルトにしまってみたりと、色々動作をしてみるも、その銃は完璧な仕上がりで出来ていた為、部品が崩れたりすることはなかった。
「完成だ…そうだな…ショートバレルとスタン性の弾丸だから…略してSS、装填数は10…よし!それとなく名前をつけて『SS10VF』でいいか!
SS10VF、更に略してSS!完成だぜ!」
無事に、俺の初めての武器はこうして完成した。
シルバーフォルムに輝くそのハンドガンは、俺の手に良く馴染んでいた。フィオラも興味津々にそれを見ていた。
試しに弾丸の変わりになりそうな種を探して装填してみる。
元々そう言う物だからな、リビングに置いてあるビーンズ見たいなので代用した。
危ないので慎重にセーフティを外し、構える。
と、そこで急にフィオラが顔を出してきたので慌てて上に向けた。
「わぁー!どうなってるんですかこれ!!」
「どわぁぁ!!あぶねぇっ!!!」
焦った俺は上に思い切り振り上げた。
その拍子に引き金を引いてしまい、バァンッッ!!と凄まじい爆音と共に弾丸が天井を貫通したのだった。
その光景にビックリしたフィオラは尻餅をついて地面に座り込みながら、天井に無惨に空いた穴を眺めていた。
少し沈黙した後、俺とフィオラは青ざめながらお互い震え声で謝っていたのだった。
「いや…ホントマジ危ないって言うかさ…完成度高過ぎてこれ麻酔弾なのかすら心配だからさ…マジ危ないから…てかゴメン…。」
「あわわわわ!い、いえ…あ、危ないのは良くわかりました…あっ…腰が砕けて立てませーん!!」
「だよな!?ホントゴメン!!因みに俺もチビった!!」
二人して情けない醜態を晒すその絵面に、リベルさんもため息をつかざるを得なかったのだった。




