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竜之介流実演販売

ご閲覧ありがとナス!

ちょっと繋ぎなので短めデース!

「さあ皆さん御覧下さい!此方(こちら)が今目玉の飛びっきり切れ味の良いナイフです!

 素材は鉄と加工合金で綺麗に整った刃は何でもスラリと刃を通す!

 今から私が!その切れ味を御覧に入れましょう!」


 大観衆の中、設置された小さな疑似ステージの真ん中でパフォーマンスの様にその刃を披露する。


 そして観衆の手には一枚の広告…それはマルテッタさんに渡された物とはまた一風変わった物だった。


※※※


 (さかのぼ)る事数分前。

 俺とフィオラはマルテッタさんの依頼でナイフの販売促進、つまりは宣伝をするように頼まれたところだ。

 専用の制服だろうか、みどりいろの小さな|割烹着(割烹着)、どちらかと言うとエプロンに近い姿の格好だ。

 それを少し自分なりに着崩して着用した俺は、着々と準備にかかる。


 すると、どうやら着替えを終えたフィオラが此方に向かってきた。


「おっ!フィオラ似合ってるじゃないか!」


「うう…何だか短くないですか?これ…?」



 目の前に現れたのは、緑色と白のラインであしらわれた洋風のスカートに、どちらかと言うとメイド服のデザインに似たその可愛らしい制服に身を包んだフィオラだった。


 所々散りばめられたラインストーンだろうか、それが彼女の綺麗で透き通った薄い赤茶色の髪に輝きを反射させ、何処と無くキラキラして見えた。


 膝上まで上がったスカートを押さえ、恥じらいながらもそつなく着こなしている。


完璧(パーフェクト)なコスプレだぞ!日本のコミケならレイヤートップ間違いなしだ!」


「何を言ってるのか分かりませーん!

…っと、リュウノスケさん何をしているのですか?」


「ああ、これか?ちょっとした工夫って奴だ。

面白いだろ?」



 彼女に見せたその紙は、元々マルテッタさんに渡された物の模写、つまりはビラの量産見たいな物だ。

 それに、更に一工夫を加える。


 このナイフの絵とそれの名前の紹介文。

 それだけではつまらないしお客が来ないのも当たり前だ、客と言うのは常に刺激と目を引く物を探している筈だ。


 ここに来るまでに通った露店で客が足を運んでいる露店の多くは、目玉となる商品をでかでかと掲げ、それでいてそれの補助となる様に周りにも商品を敷き詰める。

 そんな風に目立たせる事で売ってきたのだろう。


 そんな事は商売の基本、露店なら百も承知だ。

だが、このような店だとそうは行かない。


 店を構えていて、それでいてこの雰囲気と内装だ…これを露店の様に商品を目立たせ崩すのは愚策…それに見栄えも悪い。


 だからこそ、広告と…その情報力を足して、そのスピードを早めることで人を集め、尚且つ、店の中は変えずに商品を目立たせる。


 どっかのテレビ番組見たいに…ね。

 コミックマーケットでも、一部の作品紹介の為に表紙やイラストの抜き取りをポスターにして張り出す様に、この店でもそれと同じ事をするだけだ。


 丁寧に描いた絵の中には、用途と整備の仕方、それに扱いの危険さや素材の特徴など、事細かに伝わる様にした。

 それでいてその最後には…こう書いた。


「月看板前で…実演販売?」


「そうだ、そうやって書いておけば、唐突に始めるよりビラを手にした奴が自然とやってくる。

いわばチケットだ、それを持ってる奴が早く見れるし早く買える…そうすることで購買意欲が高まり、自然と商品の良さも、客層も増えてくって魂胆さ…どうよ?」


「わぁー!何を言っているのか分からないですけど…凄いですね!!」


「分かんないんかいッッ!!」


 と、ここまで出来上がった時に、マルテッタさんは不安そうに訪ねてきた。


 確かに見慣れない商法だ、この場所で通用するかも分からない。

 だけど…それでもやってみる価値は幾分にもあると思えた。


「大丈夫なのかい?まあ私は一本でも売れれば良いんだけどさ…」


「一本?いやいや…マルテッタさん。


50本は…用意しといて良いかもね?」


※※※


 そして…俺は見事それを成功させたのだった。


「さあ見てくださいこの切れ味を!

 この一見固そうな果実…そこの奥さん!切れると思いますか?」


 俺の質問を、通りすがりの女性へと掛けてみる。

 戸惑いながらもそれに答える女性、それもこの実演に目を引く為の演出だ。


「えっ…それは筋が多くてとても刃が通らないと…」


「そんな事はありません!このナイフは並の固さで作られては居ませんので!

 では…どう調理するか、それも御覧に入れましょう!」


 まるでサーカスのパフォーマンスだ、すなわち俺は狂ったピエロの役割だろうか。

 そんなピエロに目を向けさせるのは…演出するバニーの仕事。


 フィオラはせっせとビラを大衆に配り、ステージ周りの人間を最も見易い様に囲ませる。

 そして…後は実演するだけだ。


 目の前にあるのはミルクグランド。

 前回リベルさんが調理するのを一度見たお陰で、筋の通りや柔らかい部分や刃こぼれのしにくい部分を選んでナイフを入れていく。


 勿論そのまま強引に切ることも可能だろう、しかしそれでは見た目も美しくないし過程が単純過ぎて魅力を失う。

 果実一つに刃を通すだけでも、工夫によってそれは充分パフォーマンスとなり得るのだ。


 クルクルと器用にナイフを回したりして小ネタを挟み手際の良さをアピール。

 刃の入れ方一つも丁寧に…そして迅速に調理する。

 その間にもこの入れ方の説明や注意点などを答えながら続けることで大衆を飽きさせない。


 皮を剥き、まるで階段の様に断層で螺旋を作る。

 現実でリンゴやスイカ等でパティシエがやるあれだ。

 実は調理師免許とそう言う類いの趣味を持っていた俺は、それを難なくこなすことが出来た。


 この世界の人間にとって、果実一つから現れるアート等見たことも聞いたことも無いだろう。

 そして完成した果実のアート、刃こぼれ無く純銀に光り輝くその刃を大衆に掲げ、礼をする。


 見事それは大衆の心を惹き、無事にこのナイフの素晴らしさと広告活動は歓声の内に幕を閉じたのだった。


「ありがとうございます!このナイフをお求めの際は!我がこの店にどうぞ!何とぞどうぞお立ち寄り下さい!」


 人々は最後に店の表に張った飛びきりの広告を見て、店へと並んで入ってくる。

 様子を見ると、唐突に現れた客にマルテッタさんも驚いているみたいだ。

 俺達もここは手伝ってあげないとな。


「まあ!お二人ともこれは?」


「おう!リベルさん良いところに!ちょっと手伝ってよ!」


「リベルさんお願いします!もう私くたくたですー…」


「えっ?は、はい?」


 どうやら時間良くリベルさんとも合流できた様だ、この際だから手伝って貰おう。


 そしてフィオラと目を会わせ、お互いに頷くと、その人間の列に巻き込まれないようにそそくさと店の中へと戻っていったのだった。

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