それもまた偶然そして夢
ご閲覧ありがとうございます。
胃もたれしそうな内容なのでシリアス嫌いは本当申し訳ないっす…ゴリラハンセイィ。
昨日は良く眠れなかった。
あのあと結局情報の整理が付かず、パニックになりかけていたのをリベルさんに止められ、取り敢えずは就寝し心をリセットすると良いのかも知れないと、寝床に着いたものの…やはり気になって眠ることは出来なかった。
もしかしたらただ同じ名前の人間が偶然ここに来て、その人が偶然日本人で…それから…。
いや、そんなのはただの偶然とは言わない。
俺がここに来た時と違って物的証拠や似通った特徴が多すぎる…。
ベッドの上で天井を眺めながら、その日記を捲る。その記録を目で読んでみた。
記録x日目。
奇妙な世界に飛ばされた、ここはどこだ…?
いつの間に私はこの場所へ来たのだろうか。
記録x日目。
ここに来てどれだけたったのだろう、もう何日も口にしていない…。
妻は…私の息子は…元気にやっているだろうか?。
様々なその日々をひたすら綴られている。
この文章から分かるが…もし親父だとしたら、決して俺達の事を見捨てていた訳では無かったらしい。
それだけでも…と思うと、少しは気が楽になるような感じがした。
「親父…本当にこっちに来てたんだな…だから帰って来なかったのか…。」
やはり俺の考えはそう間違ってなかったようだ。
追うべき背中が、見捨てられた背中だとしたらやけに寂しい背中だった。
親父は俺と同じで、偶然こっちに飛ばされて…そのまま…。
フィオラの話を思い出すと、親父が無事とは到底思えない…だとしたら、親父はどこでどんな風に…いや、まだ分からない、決めつけるのは早いのかも知れないな。
と、考えに耽っていると扉を叩く音が聞こえた。
トントン、と二回扉を叩き、入ってきたのはフィオラだった。
「…フィオラ。」
「おはようございますリュウノスケさん。
朝食…一緒に食べませんか?」
※※※
カチャカチャと、器用に朝食を分けて口に運ぶ。
今日はどうやらさっぱりとしたハーブの風味が漂うローストと、それをより引き立たせる…胡椒の様な風味の薬味。
満足度も申し分無いし、それにそのハーブの香りが、昨日の疲れた頭をリフレッシュしてくれている様な気がした。
少し熱めのミルク…これは前に食べたミルクグランドの果汁を暖めて、香花の蜜を入れたものらしく、とても甘くて、今の俺には持ってこいだった。
「リュウノスケさん、落ち着きましたか?」
「リベルさん…またこんな気遣った料理を出させちゃって…本当に、ごめん…。」
「良いんですよ、それに…今回はお嬢様も手伝ってくれましたので。」
「え…フィオラが?」
目の前に座って居る彼女を驚いて見ると、ただ何も言わずに微笑んで、優しい表情を見せてくれた…どうやら彼女にも気を使わせてしまっていたようだ。
一人で抱え込んで、周りにも気配りが出来ないとは…俺ももっと冷静にならないとな。
それに、フィオラも昨日の話は無関係じゃないのはきっと分かってる…彼女なりにも何か思うことがあるはずなのに俺と来たら…全く、これじゃ親父と変わんないな。
無駄な心配だけ掛ける…これも遺伝子かな。
「フィオラ、ありがとな。リベルさんも。」
素直に感謝を込めて頭を下げる。
そんな俺の姿に、ふふっと笑って二人は邪険にする素振りは見せなかった。
すると、フィオラが話を切り出してくれた。
「リュウノスケさん…まさかリュウノスケさんのお父様がリュージローさん…お義父さんだったなんて、私もビックリしました。
昨日リュウノスケさんが就寝した後、私とリベルさんで話し合ったんです。
もしもそれが本当なら、私とリュウノスケさんは偶然出会ったんじゃ無くて…何か特別な縁があったんだって…ね?リベルさん!」
「はい、お嬢様。
リュウノスケさんも、もしリュージローさんがお父上様だとするのならば…それも運命かと。
母上様とリュージローさんが出会ったのも、惹かれあったのも…またこの為の運命…いやそんな重いものでは無いかも知れませんね。
この世界に無駄なことなど無いと私は信じております、ですから…きっとリュウノスケさんは、この世界に大きな夢を背負ってやって来たのだと…そう思ったのです。」
「大きな…夢ですか?」
使命とか、運命とか、そう言う重いものでは無くて…ただただ純粋な糸で繋がれた夢…幾分にも広がる大きな夢を背負ってこの世界に来たのではないかと、そうリベルさんは言った。
繋がれた糸は、切れてはまた繋がり、新しい道を作る。
何処かがほつれ切れてしまっても、また世界はそれを新たな夢で縫合する…そうこの世界では神話として紡がれてきたらしい。
確かに、そう考えると俺が親父の背中を追うきっかけとしても、この世界に抱く夢は大きい。
フィオラとの約束もそうだ、とてつもない大きな夢。
フィオラのお母さんが切ってしまったその糸を…今度は俺達で繋ぎ直す事もまた一つの可能性。親父がきっと、その糸を繋ぐ役目に俺を選んだのかも知れない。
いや、親父がどうであれ…運命がどうであれ、俺は俺の夢を追うのかも知れない。
その役目を負うのもまた俺の夢、別の興味や世界に思い馳せるのもまた俺の夢。
俺が、繋ぐ糸を決めるチャンスを…この世界が与えてくれたのかも知れないな。
「どうですか?リュウノスケさん。
考えはまとまったでしょうか?」
リベルさんが俺にとっての答えが何か、現実を受け止める気があるのか…それと取れる表情で質問してきた。
勿論…もう考えなどとうにまとまっていた。
「そうだな…親父がどうであれ、こっちに来てたのは事実だ。
だったら…俺がやることは決まってる。」
そうだ、俺はずっと追ってきた、見てきた。
親父の背中を。
「親父がこの世界の各地を旅してたのはさっきの日記で分かった。
だから俺は親父の痕跡を求めて、色んな場所に行ってみたい。
どんな夢を持ってここで生活してたのか、その親父の背中を…俺は追いたいかな。
それに、フィオラとの約束…賢者の花の事もあるし、各地を巡ればその情報が見つかったりするかも知れないから…な?」
「ふふ、リュウノスケさん…すっかり元のリュウノスケさんに戻りましたね。」
「そうか?まあ!ずっと考え込んでパニくる様な人間じゃ無いからな!何せ…」
「ぱーふぇくと…ですもんね?」
「ありり!?台詞がとられちまったな!はは!」
俺はあまり重いことは考えず、運命とか…使命とかそう言うのでは無く、ただ…偶然この場所で夢を見つけただけだと考えた。
そう、ただの偶然だ。だからこうやって笑ってられる。
親父だって、そんな考えで夢を追ってた訳じゃないだろうしな。
「しかし…親父がフィオラのお義父さんだとすると…フィオラは俺の義理の妹って事になるな!
まあ、戸籍も何も無いし関係は無さそうだけどな!」
「まあ!だとしたらこれからは…リュウノスケお兄様…とでも呼んでみましょうか!」
その言葉に思わず飲み物を吹いてしまい、慌てて布巾で拭き取った。
とんだ不意打ちだ。
「んーやめてくれ、その無垢な可愛さでその発言は思春期お兄ちゃんにはダイナマイトだ。」
「ふぇ?良く分かりませんが…ではリュウノスケさんのままで行きましょう!」
「うむ!頼んだぞ!うっかり今地雷を踏んだかと思ったよ自分でも!」
お兄様呼び…悪くない!!じゃなくて、そんなのだと余計に絡み辛くなるだけだからな、やはりそこは関係なしに接したいところなのだ。
でも…まあ、兄弟の居ない俺にとっては…フィオラは頼れる妹…見たいなものなのかもな。
…フィオラを咄嗟に助けた親父…そこは素直に感謝しておかないとな。
この出会いも…親父のお陰かも知れないからな。
「さて、朝食も済ませましたし…準備しましょう!リュウノスケさん!」
「ん?何の準備だっけ?」
「もう!忘れないで下さいよ!
街…降りるんじゃ無かったんですか?」
そうだ!そう言えば金属や小物を探したり、情報を集めるために街に行くんだった!何をボーッとしてるんだ俺は。
「だぁぁああ!忘れてた!シリアスになって深読みしてる場合じゃ無かった!急いで準備するぜ!」
「私も今回は同行しますね、何分まだ不便でしょうから。」
「マジか!よろしく頼みますよリベルさん!」
こうして朝食を済ませた俺は、街に降りる準備を開始した。
最低限の道具をリュックにしまい、背中に背負った。
何だかむず痒い現実に向き合うことになったが、それでも逆にそれは目標にもなるだろう。
新たな決意と考えを元に、意気揚々と初めての街へと繰り出すのであった。
「おっしゃ!目指すは下町だ!何があるか…どんな場所か…今日も気分は完璧だな!フィオラ!」
「はい!ぱーふぇくとです!行きましょう!」
「ふふ…二人とも元気で何よりですね。」




