第87話 二世誕生?
「アヤ・・・。大丈夫かい?」
「ごめんなさい・・・。あなた・・・。」
セイは昔を思い出した。
前長官に気に入られ娘の婚約者として紹介された。
何故、王の妃にもなれるような身分の女と結婚できるのかそこが謎だった。
別荘に向かう途中、その女は雪をかぶって雪の上に座っていた。
『アヤ様・・・。』
寒い中アヤは声を殺して泣いていた。
『どうなさいました?』
暫くかたくなに黙っていた彼女は何度も問うとやがて子供を捨てたと呟いた。
慌てて彼女の手を引いて走ったがすでにそこには誰にもいなかった。
『そんな・・・。どこに・・・。』
『アヤ様・・・。落ち着いて誰かの足跡があります。これをたどって・・・。』
途中から雪が積もりもう何も見えなかった。
彼女はその後、半狂乱になって泣き叫び、食事すら取らなかった。
あの時はずっと毎晩手を握らないと眠ることは無かった。
「カイク・・・。」
「よう。」
セイはカイクの出現にため息をついた。
またお前かと顔にありありと書いてあった。
「あなた・・・二人にしてください。」
「君たち知り合いだったんだね・・・。分かった。外にいるから何かあれば言いなさい。」
「ええ。」
セイが出てゆくとアヤはカイクを見た。
「あの子を・・・育ててくれてありがとう。」
「・・・最悪の環境だったがな・・・。」
「でも、あの子にはあの子を想ってくれる人がたくさんいる・・・。」
「・・・そうだな。」
カイクはアヤの頭に手を置いた。
「お前にも良い夫がいる。」
「そうね。あの人頼りないところもあるけれど・・・トオルのことだって必死になって考えて・・・。いい夫よ。愛してるの。」
「ああ。じゃあ、ハルはもらっていくからな。」
「ええ・・・。あの・・・カイク。」
アヤは昔の恋人の名を昔のように呼んでみた。いつも呼んでも微笑んでくれることはなかった。
今日もそうだった。
「ありがとう。」
カイクはアヤの頬を撫でると部屋からでた。
「妻は渡さんぞ。」
「あんな鬼嫁いらん。お前にお似合いだ。」
そう言って二人は鼻で笑った。
「で、この前のできること一つ聞いてやるって話だが・・・。」
「ああ、なんだ決まったのか?」
「お前らの組織の総裁と話がしたい。組織解体に向けてな。」
「解体?我々は国王を暗殺してるんだぞ?」
「お前らの交易ルート、開発能力が欲しい。これからの国のためにな。まだ表向きは国王は健在。影だっている。それは私がどうにかするさ。それで、トオルの恋人をこの家に迎えて。」
「お前の二世をつくるのか?」
「ああ。きっと気が合うぞ。あの女系家族のなかでやっと仲間が出来るんだから。」
カイクは目の前の男の肩を同情するように叩いた。




