第86話 二対一観客二人
「熱いですねえ。青春って感じで。」
「お前も混じるか?」
「いいえ。止めときます。」
ソウマの目に砂煙をあげて地面を転がるルカが見えた。
「痛そうですしね。」
シギはルカの転がる隙を狙ってきたトウヤの剣に鋼線を巻きつけ、引いた。
暫く力比べが続いていたが、そこに起き上がったルカが刀を捨て炎を腕に巻きつけ殴りかかる。
「でも、こう思うとルカも結構戦えますね。御剣にも暗部にも引けはとりません。」
「俺が育てたんだ。当たり前だろ?」
「・・・自信過剰ですね。」
ソウマは苦笑いを浮かべると退屈そうにその場に座り込んだ。
「お前も・・・また血の滲む努力しなおしだな。左右の体の均衡取れるまで。」
「ええ。そうですね。考えただけで涙が出ますがね。あれは本当に血のにじむ努力でしたね。そういえば・・・。何も出来なかったあの嫌な想い出を忘れたくて、我武者羅に。」
組織初の仲間を殺せなかった構成員と陰で言われたのは知っている。
むしろ規律違反の自分たちには連帯責任で死をという声があったことも知っている。
だからこそ我武者羅に練習をした。
「まあ、教え方がうまかったんだろうがな。」
「そうですか?気分で指導されてた気がしますが?」
「気のせいだろう。」
カイクの言葉と同じくしてルカが下段でまわし蹴りをくらわせる。
それをよけたシギはトウヤから殴られ鋼線を捨てた。
そして切れた唇を拭うと笑いながら型を作った。
「そういえば、お前にこの前、苦無投げつけられた返ししてないな。」
トウヤは仮面を外して投げた。
下の本当の顔は楽しそうに笑っていた。
「ハルに手をだしたお前が悪いんでしょ?」
「何だよ?何の話?」
「ん?ハルの初キス奪ったってお話。」
「アレお前か!ああ!すっげえムカつく!」
ルカも何故か笑っていた。
ルカが相手に飛び込み相手の防御を崩し、状況を見極めたトウヤが確実に攻撃を喰らわせる。
まるで昔のようだった。
決まってその時の相手はこの男だった。
「じゃあ、お前はここで援護頼んだぞ。俺は行く場所があるからな。」
メンターの言葉にソウマは頷く。
「ええ、心配なさそうですし。もうすぐ終わるでしょう。どうぞ、行ってきてください。」
ソウマは嬉しそうに三人を見ていた。




