第77話 揺れ動く乙女心
ソウマとカイクはまるで刃物のように自分自身を研ぎ澄ませて暫く見合っていた。
「それ、暗部に言えば恋人もろとも殺されるぞ。」
「させませんよ。そんなこと。」
(守りきれるわけない・・・。)
ハルはそう心の中で思った。
けれどそう言い切ったソウマがうらやましかった。
そんな強さが欲しかった。
「もし、生き抜いても、お前ら今まであの組織で生きてきたんだ。上から命令されて、考えることなく任務をこなす。じゃあ、それがなくなったら何をするんだ?何が出来るんだ?何がしたいんだ?」
「それは・・・。」
「好きな女が出来て、そいつと暮らしたとして生きていくためには金が必要だ。何をするんだ?それなら組織で任務をこなしているほうが楽に決まっている。一時の感情で動くと後で痛い目にあうぞ。」
「やってみないとわかりません。」
「青いな。お前がそこまで青いと思ってなかった。・・・まあ、いい。とにかく今のは聞かなかったことにしてやる。・・・トウヤちょっと来い。」
「ん?ハルとイチャイチャしたいのに。」
トウヤはから揚げを口に運ぶとカイクについていった。
二人が出て行った後、ハルはトウヤと顔を見合わせた。
「言っちゃいましたね・・・。」
「強いね。ソウマ。」
「口だけかも知れませんよ。いざとなったら土下座して泣きつくかもしれません。」
「ソウマが?」
「仲間も殺せない人間ですからね。でも、メンターの言ったことはもっともかもしれないです。今まで他の自分なんて考えたことなかった。少し考えてみましょうか・・。」
ソウマは迷いもなくそう笑った。
ハルは自分の裾を掴みながらソウマの方へと寄った。
「あのね、全然関係ないんだけど、ルカと喧嘩しちゃった。」
「食べ物でも取り合いましたか?」
「うんん。違う・・。イライラするの。」
「いつものことでしょう?喧嘩なんて。」
「本当はずっとトウヤのことしか考えてなかったはずなのに・・・トウヤが現れるといつでもルカのこと考えてるの。でも、そんな自分にイライラして。トウヤが好きじゃないといけないって自分に言い聞かせてるのに・・・。」
「いいじゃないいですか。どっちとっても組織の人ですし、結婚後も働けますよ。」
「そんなことじゃなくて!」
「じゃあ、どうしたいですか?」
ソウマは微笑んだ。
「心の大部分、占めているのはどっちです?」




