第76話 ソウマの決意
食事はアヤが数日もってきてくれていた。
「外は寒かったでしょう?今日は鳥のお雑炊よ。食べられる?」
ハルがベットに横たわると湯気の上がった器を持ってきた。
「ありがとうございます。」
頭を下げて受け取る。
アヤはにこっと微笑んでハルの隣に座った。
それを見たトウヤは椅子を少し動かし夕食に用意されたから揚げに手を伸ばした。
「器、持てる?」
「大丈夫です・・・から。」
甘えるには抵抗があった。
自分を捨てたくせに、今更母親になってもらわなくても良かった。
それに今甘えるとバネッサに余計嫌われる気がした。
「そう?熱いから気をつけて。」
「はい。」
レンゲで雑炊をすくった。
「どう?」
「おいしいです。」
「そう・・・、これは私の母親が教えてくれた味なの。」
そういわれてもピンと来なかった。
ただの雑炊でしかなかった。
「よう、お前ら。」
カイクの声だった。
それ以降、無表情なままそれ以上何も言うこともなくハルの側まで来ると髪がグシャグシャになるまで撫続けた。
「痛いよお。メンター。」
「黙って撫でられてろ。あ、何だ?から揚げ食ってんのか?」
カイクはハルから離れるとルカの皿から一つつまみ口に運んだ。
「思ったよりお前料理できるんだな。」
「失礼ね。貴方の分はありませんよ。じゃあ、私は帰ります。トオル行きましょう?」
「あ、はい。じゃ、ソウマさん。また明日。」
トオルはソウマに微笑み、名残惜しそうに手を離すと口付けて出て行った。
「ルカとシギは?」
「シギは仕事だそうで。」
「まあいい。」
「まさか・・・任務ですか?」
「そこまで鬼でもない。今、ほとんどの構成員が死んで系統が乱れているから、総裁が仕切る暗部しか機能してない。お前らは今のうちに休め。」
「休んだら・・・また仕事?」
ハルはベットの上から問いかけた。
「嫌か?」
(嫌なんて言えるわけない・・・。でも・・・。)
「嫌って言ったらどうなりますか?」
「言ってみれば分かるんじゃないか?」
カイクは意地悪く笑っただけだった。
ハルは言葉を失って器を置いた。
「とにかくお前らは早く治すことだけ考えとけ。それまでは俺が何とかしてやるから。」
(私は何で生き延びようと思ったんだろう。トウヤがいたから?皆に会いたかったから?でも、また組織に戻るだけなんて何も前と変わってない。またシギと戦ってトウヤは暗部に戻って、命を狙われて・・・。そんなために生きようとしたわけじゃない!皆で五人で生きたいから、話がしたいから!)
ハルは俯いて唇を噛んだ。
「私はもう組織に戻る気はありません。」
そうはっきり言ったのはソウマだった。




