第68話 現れた者
「しばらく見ないうちに随分図体でかくなったなあ。」
メンターはソファに埋まりながらトウヤに驚いた風ではなくいつもの飄々とした顔を向けた。
「ここメンターの持ち家の一つ?普通の家だからわかんないよ。こんな場所。」
トウヤは至って普通の家と変わらぬたたずまいをした家を眺めていた。
けれどルカは蒼白な顔で唇を震わせていた。
カイクはそれに気がつき、教え子に声をかけた。
「で?ハルは?」
ルカはハルを迎えに行くと元気よく出て行ったはずだった。
「何だ?どうした?」
「これ・・・落ちてた。」
ルカはローズクオーツの珠を見せた。
ハルの無事を聞き楽観していたカイクの眉間に皺がよる。
「あの人昨日暗部を連れて狩を行ったらしいよ。誰を狩ったのかメンターなら分かるね。」
トウヤはテーブルに腰をかけてカイクをまっすぐ見ていた。
カイクもトウヤの目を見ていたが、息を吐くと顔を傾け挑発するように声をかけた。
「お前は止めなかったのか?」
するとトウヤは唇に笑みを浮かべた。
「変な足止めくっちゃてさ。もちろん、俺を引きとめようとした奴を皆殺しにしたよ・・・でも間に合わなかった。」
「で、俺に何の用なんだ?」
「・・・神の御剣につれてって欲しい。」
「あそこで・・・生きてそうか?」
「さあ・・・。いるのかさえ分からない。」
メンターはため息混じりに何だそれと呟きうなだれた。
「でも、わかんねえけど町中、神の御剣で溢れてた。もしかしたら、いるかもしれない。シギだっているから、ひょっとしたらアイツがソウマのときみたいに。」
「シギか・・・。ありえんこともないか。」
するとメンターは立ち上がり、心配そうなルカと自分と同じくらい表情を変えることのないトウヤを見据えた。
「とにかく行くしかないか。トウヤ、その外套は置いていけ。目立つ。」
「ん〜分かった。ちょっと待ってじゃあ、着替えるから。」
「早くしろよ!何でトロイんだよ!一刻争うんだぞ!」
「うるさいなあ。ルカは。」
トウヤは血にまみれた外套を脱ぐとハルにもらったズボンとジャケットに着替えた。
「ハルがルカとおんなじサイズのズボン買ってくれたんだけど、ちょっと足短いんだよね。」
「はあ?んだと?」
ルカが睨みをきかせトウヤに迫ってゆくとメンターがルカの頭を叩いた。
「早く行くぞ。チンピラかお前!」
「いてえなあ!」
メンターを先頭にルカとトウヤは並んで歩いた。
「ハルって何だよ!お前会ったのか?」
「うん。連れ去ったの方が正しいかも。」
ルカは暫く何かを考えていたが、怒りのこもった瞳をルカに向けた。
「まさかと思うけど・・・ハルを撃った暗部ってお前か?」
「うん。俺。血糊のついた麻酔銃で撃った。」
「血糊?」
ルカはトウヤの頭をげんこつで殴った。
「なに?痛いなあ。」
「なんか心配してた分、すげえむかついた!で、二人でずっと一緒にいたのか?」
「うん。いたよ。ハルって痩せたよね。可愛かったなあ。甘えてさ。・・・なのに。」
トウヤはずっと握っていたローズクオーツの珠に更に力を込め前を見る。
一瞬にして殺気が膨らんだ。
「許さないよ。あの人。」
「あの人って誰?」
「総裁だ、ソーサイ!」
カイクが口を挟んだ。
「僕のリスト入りだよ。一番はシギで次はあの人かな。」
「ああ、シギぶちのめすってのは俺も賛成!」
「やっぱりルカとは気が合うね。」
「おう!」




