第67話 約束の場所で待つ者
ルカは公園までの道を歩いていた。
もうすぐ待ち合わせの時間、また一緒にいられる嬉しさがルカの笑顔からにじみ出ていた。
その日はやけに軍人の姿を街で見かけていた。
「なんだ?」
大通りから狭い路地の入り口では黄色のロープで区切り、神の御剣が集まっていた。
そっと見物人に混じり耳を傾ける。
「この毒が肺に・・・。」
毒と聞いて胸騒ぎがした。
すぐにハルが連想されて、ルカは慌てて視線を動かした。
神の御剣が拾い上げた数本の矢には少量の血がついていた。
「嘘だろ?おい・・・。」
さらに目を動かす。
それは微かな血痕。
逃げたのかその血痕は細い路地に伸びていた。
ルカはいつの間にかそれを追いかけていた。
狭い路地をいくつも抜け広場に出るとまた神の御剣が集まっていた。そこには血溜まりがあった。
「何があったんだ?」
慌てて踵を返すと何かを蹴った。
見た途端、心臓が激しく体を揺さぶり、こみ上げる吐き気を必死で堪えた。
それは血の付いた小さな球。
大切な女が大切に持っていたピンクの小さなローズクオーツがそこかしこに散らばっていた。
ルカは一粒、拾い上げた。
「嘘だ・・・。こんなこと・・・。」
ルカは全速力で待ち合わせの場所へと走り出していた。
走っている間中、冷や汗が体中から噴出す。
きっとあそこに行けばいるはずだった。
時間通りに必ず現れるはずだった。
そしてそこにちゃんと黒い外套をきた人間がいた。
「ハル!」
その声に外套の頭が動いた。
「何だ・・・。良かった。心配させ・・・。」
安心したルカはすぐに凍りついた。
そこにいたのはいるはずのない人間だった。
「嘘だろ・・・死神かよ・・・。」
「随分だね。」
見誤るはずのない金色の髪をした親友の姿だった。
「何・・・してる。ここで。」
「なんてものの言い方だよ。久しぶりなのに・・・。でも、ま、ここで待ってたのが正解だったね。」
「何が正解だ!おい!ハルは?ハル、どこやった!」
「・・・いない。」
トウヤはただ静かに呟いた。逆にルカの頭には血が上って押さえられなくなった。
何故ここにトウヤがいるのか皆目検討がつかなかった。
「いないって何だよ!何なんだよ!ってか、お前何してんだよ!生きてたのかよ。」
「うん。ま、後でそれは話すからさ。俺をメンターの所に連れてってくれないかな。ハル探してるんだ。」
「え?」
「メンターと話がしたいんだ。」
トウヤに笑みはない。
ただずっと堅く拳を握っていた。




