第65話 襲撃
「ん・・・。」
物音で目が覚めた。
ルカと別れ宿屋に戻った後、いつの間にかベットの上で布団もかけず眠っていたようだった。
もう日も暮れあたりは闇だった。
けれど今日は月明かりがあった。
物音を立てず体を起こし外套を羽織り、ブーツを履く。
まだトウヤは戻っていなかった。
「少ないな。」
銃の弾は底をついていた。
薬ももうほとんどない。
それでも抗わないわけにはいかなかった。
トウヤに話をして、明日二人と約束した場所に行かないと行けないんだから。
「・・・さてと・・・。」
ハルが一歩踏み出すのと同時に数回の発砲音と数発の弾丸が部屋の扉を銃弾が貫通した。
そして一度攻撃が止むとハルは窓を破って飛び出ていた。
瞬時に目を遣ると宿の周りは神の御剣たちに囲まれていた。
「多いよ。」
ハルは屋根から降りると大通りを走った。
そして充分敵を引き付けて路地へと入ると一列で追ってくる敵に銃を発砲した。
一人目は肩を打ちぬかれ悲鳴と共に倒れる。
絶対殺さないとは言わない。
ただもう極力人を殺したくはなかった。
(メンターに甘いって怒られるかな。)
屋根の上から風の切る音が聞こえた。
それは弧を描き落ちてくる矢だった。
間一髪、路地を曲がりよけると正面から来るのは待ち構えていた神の御剣の数本の矢。
外套をまわしそれを盾に身を守る。
けれど頬、腕、腿を矢がかすった。
四方そして屋根、ハルを取り囲むのはざっと二十人。
「・・・。」
明らかに弾の方が少ない。
補充している時間はもうない。
けれど皆がいる今、諦めたくはなかった。
(死ぬ気なんかない!)
ハルは白い小さな玉を敵が押し寄せる通路に投げつける。
それは壁に当たりで破裂し白い粒子となって男たちの上に降り注いだ。
すぐに男たちは次々に器官と肺に焼け付く痛みを感じ血を吐きはじめる。
苦しみもがく仲間を見て、弓隊は一瞬気がそれた。
ハルは外套に身を包みまた走り出した。
(剣使いになればよかった。弾切れなんかしなかったのに・・・。でも刃こぼれするか。)
そんなことを考えながら街を駆け抜けると小さな広場にたどり着いた。
(巻いた・・・かな?)
けれどすぐにハルは目の前の光景にただ立ちすくんだ。
暗闇に暗部が七人。
表情のない面をかぶり自分を見ていた。
ハルは無意識に青い目を探していた。
けれど、月を背にした彼らの目の色など分かるわけもなかった。
「神の御剣ではやはり役には立たないか・・・。お前には総裁からの殺害命令が出ている。」
「生きていることは罪なのだ。」
口々に暗部がハルを責めたがハルの心は妙に静かだった。
ハルは息を整えるとどうすべきか考えた。
弾は三発、薬の玉は二個、粉末が一袋、手榴弾一個あとは小刀。
ハルは人差し指に粉末を付けると小刀に擦りつけた。
構成員よりもさらに強く、精神も鍛えられている暗部相手にいったい何処まで出来るかわからなかったがむざむざ死ぬ気はなかった。
ほんの一瞬、静寂が支配した後、
カマイタチが襲う。
後ろに飛びのきよけると暗部の面が目の前にあった。
「!」
腹に拳が入り重い衝撃を受け息が詰まる。
ハルはそれでも相手を斬りつけた。
足にかすり男は退いた。
「げっほ・・・・。」
ハルは円の中心になるように取り囲まれ始めていた。
(死ぬ気はない!皆生きてるんだから。)
同時に二人が動いた。左は剣、右は棍棒だった。
けれど、その向こうでもう一人動いた。
(よけきれない!)
肉を裂く熱い痛みがはしり、ローズクオーツのブレスレットが切れて玉があたりに散乱した。




