第57話 過保護
「よう。」
「!・・・いつからここに?」
「お前に聞きたいことがあってな・・・。」
シギは任務を終え、部屋に入るなり堂々と神の御剣の自室に入っていた曲者に声をかけられた。シギの手は剣にかかっていた。けれど、それよりもカイクの動きは早かった。シギの喉に銃が当てられた。
「何です?」
「誰かここにいないか?」
「まさか、教え子探しに来たとか言うわけじゃないですね。過保護な。」
「過保護で結構!」
シギが剣から手を離すとカイクもそれを見て一歩はなれた。
「組織では全滅という話だったんですか?」
「ああ。」
「で、あなた自ら探しにきたと?」
もう一度シギは過保護と呟いた。
「まあ、ちょうどいいです、一人脱走させるので手伝ってください。」
シギが扉を開けるとカイクは変装もなしに大理石で出来た真っ白い廊下を歩いた。
「しかし、堂々とその黒服で歩くあたりあなたの根性もすごいものですね。」
「根性悪のお前に言われたくないさ。ところでここにいるのは一人か?」
「正確には二人です。一人は今動かすことは出来ません。そして一人は死にました。」
「誰が死んだ?」
カイクの足は止まっていた。発した声も少しかすれていた。
「・・・ハルです。ソウマは今治療を受けています。ですので、一番五月蝿い馬鹿をつれて帰ってください。」
「ハルを殺したのは・・・暗部か?」
「ええ。暗部に撃たれました。」
シギは地下へと続く階段を下った。中には何人か囚人がいた。
「おい!過保護な親が迎えに来たぞ。」
「メ、メンター!何、堂々歩いてんだよ!」
ルカは少しやつれた様子だった。無精ひげのせいで歳をいくつか経たように見えた。
「行くぞ、立て。ソウマには会えるのか?」
「トオル様がずっと付き添っておいでですが、まあ、どうにかしましょう・・・。ついてきてください。」
カイクはルカの鎖を外すと背中を叩いた。
階段を上がると、再び先ほどの廊下を通りさらに階段を上った。三階が病院となっているようで部屋には傷ついた兵士たちが眠っていた。
三人は奥までくると足を止めた。
そこには一番重傷者が収容される部屋だった。