第58話 御剣にて
扉を叩くとトオルが扉を開けた。
「シギさん・・・。」
トオルの顔はやつれていた。食事もほとんど取らず、ずっとソウマについていた。
「ご友人が・・・。」
トオルは土色の顔をして、ルカを見ると涙を落とした。
そして道を譲った。
中に男が一人横たわっていた。
「嘘だろ!おい!」
ルカは駆け寄って怒鳴りつけた。
頭に包帯を巻かれて呼吸器をつけられた男。
その男こそ今まで共に育ってきた仲間だった。
「おい!何だよ!お前、いつもみたいに無視ってんなよ!さっさと動けよ!」
トオルはそれを見て後ろで泣いていた。
「畜生・・・、畜生・・・。」
ルカはその場で膝をついて泣きじゃくった。トオルはルカを立たせ椅子に勧めた。
「ごめん・・・俺、泣いたりして・・・。」
「いえ・・・。皆さん賓度羅の方だったんですね。ハルさんも・・・?」
ルカは静かに頷いた、ハルという名を聞くだけでまた涙がこみ上げた。
「ハルさんは・・・?」
「死にました。」
シギの言葉にトオルは涙を落とした。
「あんなに仲良くてらしたのに・・・。」
「守ってやれなかった。あいつのこと・・・。目の前で倒れてるのに、それすら助けてやれなくて・・・俺、人間として最低だ。・・・あんたは怒ってないのか?ソウマのこと。」
ルカの言葉にトオルは涙を拭いた。
「だって・・・私を抱きしめてくださったんですもの・・・。あの爆撃の中、ソウマさんにに背を向けられたとき裏切られた気持ちで一杯になりました。ああ、騙されてたんだって、助けてって叫びました。ハルさんが助けようとしてくれて、それを見たソウマさんがハルさんを止めたとき私、恨んでやるって地の果てまで追いかけて恨んでやるって。本当は執念深い女なんです。」
そういうとトオルは笑った。
「でも、来てくれた。こられると申し訳ない気持ちで一杯でした。ソウマさんは側に来ると微笑んでくださったんです。それで十分だったんです。けれど、あの人は結局体を張って守ってくださって・・・。」
爆発の前にトオルの耳元でそっと呟いた。
(貴方を愛した私は幸せです。)
その言葉を聞いた後爆発が起こった。
「私も幸せです・・・。」
トオルは微笑んでソウマの手を握った。
その時、扉が開いた。
「・・・何してる?」
神の御剣長官は部屋にいた男たちに視線を送った。
「お父様、あの・・・。」
「お前が入れたのか?」
シギは静かに頭を下げた。しかし、頭のなかではどうすべきか考えているようだった。
「あの、お父様。」
長官は娘の肩に手を置いてカイクを見た。
「やはり・・・生きていたか・・相変らず黒服・・・。少し老けたな。」
「お前も白いだろうが、少し太ったな。あの鬼妻に毒でも盛られてるんだろ?」
「お前たちのせいだぞ!妻に家に入れてもらえない上に城を攻撃して!最後には陛下の崩御ときた!私の命をどれだけ削れば済むんだ!で、なんだ?」
「こいつを迎えに来た。」
カイクの視線の先にはルカがいた、ルカはどうしたものかと二人を見比べていた。
「今のは聞かなかったことにしよう・・・。勝手につれてゆけ。」
「あの。お父様・・・お知り合いなのですか?」
シギもトオルの質問に興味ありげに目を向けた。
「む。若い頃のライバルだったな?」
「さあな。一方的に付き纏われた気がするが?」
「私が神の御剣に入りたての二十の頃、組織で一番強かったのはこいつだった。だからこいつの動きを徹底的にマークし、思考を読み取った上で、出現場所を突き止めてはこいつと戦い続けた。お前にみせたかったなあ。あの勇姿を。この男を打ち負かしたあの日を。」
「脚色のしすぎだ。まあ、お前が俺をあの日打ち負かしたのは間違いじゃない。それは認めてやるが。」
そういうとカイクは男を見た。
「ソウマを頼めるか?」
「この男はお前の教え子か?」
「ああ、まじめな奴だ。その代わり何かできることがあれば一つ聞いてやる。」
「分かった。出来る限りのことはする。お前の頼みだからな。」
「お前でよかった・・・。ルカ行くぞ。」
「あ、うん。」
ルカは不思議そうに二人を見た後、一度トオルに頭を下げ出て行った。




