第27話 顔のない敵
先ほどまで閉まっていた窓が開き、カーテンが揺れていた。
「びっくりした・・・体に悪いなあ・・・。」
「質問に答えろ、ここで何してる?」
「家の前で貧血起こしたんだよ。だから入れてもらったの。ってゆうか、私のストーカー?」
「・・・で、ルカはこの屋敷を嗅ぎまわってるってわけか・・・。」
ハルにもトイレに行くといったルカが屋敷内を見て回っているのは容易に想像できた。
「城に入ったわけじゃないよ。だからまだ殺さないでよね。入っていいって言われたから来たんだし。」
シギは何を言うこともなく壁にもたれていた。
一方、ハルの足は震えていた。
この男の行動は全く読めず、また見られていたかと思うとゾッとした。
「おい、お前怖いのか?足が震えてるぞ。」
笑いながら髪をかきあげ近づいてくる。
昔から人をいたぶるのが大好きな男だった。
「別に怖くない。死ぬことだって平気。」
「へえ。」
「ねえ、それより、私をつけてるのってシギ以外に・・・。」
シギは瞬間的に動きハルをベットに倒した。
「教えて欲しいか?なら・・・。」
男の手が服を破り、唇に唇を重ねられた。
(や、やだ!何!)
感触など分からない。
ただ口を塞がれているだけのキス。
身をよじってもまるで動くことのない男の体を懇親の力で突き飛ばした。
「や!やめてよ!こんな冗談面白くないよ。」
「いいのか?そんな叫んで。人が来たらお前の正体ばらすぞ。」
唇は離れたが、胸元を更に破られた。
破れる音で更に恐怖心が増した。
「そうなればルカも一緒に殺してやる。」
「止めて!お願い止めてったら!」
「静かにしてろ。」
その時だった。何か黒いものがよぎった。
「ちっ!どっちを狙ってるんだ!」
黒い八方手裏剣が次々に打ち込まれる中、シギが体を起こし、窓から飛び出ると手裏剣は止んだ。
ハルは反射的に手裏剣の飛んできた方角を見て凍りついた。
「あ・・・暗部。」
黒い外套に白い面。
異様な風体の者がシギに今尚、手裏剣を打ち込んでいるようだった。
けれどほんの一瞬こっちを向いた。
恐怖だった。
「いやあ!」
「ハル!どうした!しっかりしろ!」
手を掴み、ハルを正気に戻したのはルカだった。
「ルカ・・・。」
「何があった?」
部屋に刺さった手裏剣を見て、ハルに目を落とした。
「どうしたんだよ・・・それ。」
破られた服とその際についたと思われる掻き傷。
ルカは言葉を失ってハルに触れようとしたがハルは身をすくめた。
すぐに騒ぎを聞きつけた人間の足音が聞こえ、ルカはハルを抱き上げ窓から出た。
「行くぞ!掴まれ!」
ハルは先ほど暗部のいたところをもう一度見上げた。
もう誰もいなかった。
(怖い・・・。シギも、暗部も何の為に。)
「大丈夫か?何かされたのか?」
言葉を返すことなくギュッとルカの体にしがみつく。
「もう・・・大丈夫だからな。」
ルカにしがみついて初めて少し安心できた。
「逃げられた・・・。あ〜あ。」
暗部は自嘲気味に言葉を発しながら手裏剣を握る。けれど、仮面の下の目は全く笑ってはいなかった。
「あいつ気にくわないなあ。早く死ねばいいのに。」
男はそう笑うと手裏剣を壁に投げつけた。




