モンスターの正体
最後にひとつ、オクトハーブ湖のモンスターの正体について、解説を加えておこう。
オクトハーブ湖のモンスターは、実は、今から50年ほど前の、運河及びオクトハーブ湖の拡張工事の際に、当時のオクトハーブ男爵(通称マッドバロン)により「ペット」として湖に放流されたものである。ただ、この拡張工事は、元々計画されていたわけではなく、その「ペット」を放流するため、急遽、行われたものであった。
南方トカゲ王国を旅行中であったマッドバロンは、蒸し暑くて寝苦しい夜、ふと月を見てみたくなって、現地語(の翻訳)で「とてつもなく深い湖」と呼ばれる湖の畔を散策することにした。そこで、マッドバロンは、象のように大きいイカのような生物(すなわち、モンスター)が湖面付近でカワイルカ(のような生物)を補食しているのを発見し、現地の漁師たち(現地の漁師組合)に大金を支払い、その生物を傷つけないよう捕獲してもらうことに成功する。
マッドバロンは思いついた、「そうだ、この大きなイカのようなモンスターを持ち帰り、オクトハーブ湖に放流してやろう。でも、このことは秘密だ。自分だけでこっそり楽しむんだ」と。ただ、どのように持ち帰るかはともかく、オクトハーブ湖に放流するとしても、どこまで大きくなるか、大きくなれば人を襲うこともあるのではないか等々の問題点が幾つかあった。
現地のガイドの話によれば、「このイカのようなモンスターは、成長すれば船よりもかなり大きくなり、肉食性なので泳いでいると襲われる可能性がある。しかし、普段は大人しく、攻撃されなければ暴れ出すことはなく、しかも、日中は水底付近であまり動かないでいる。夜の間だけエサを求めて活動するが、水面付近まで浮き上がることは滅多になく(その意味では、今日、この生物を捕獲できたことは奇跡である)、エサを絶やさなければ、飼育することはさほど困難ではないかもしれない」とのこと。
ガイドの話を聞いて狂喜したマッドバロンは、そのモンスターをオクトハーブ湖に持ち込み、ペットとして飼育することとした。モンスターが大きく成長した場合に備え、湖を水深70メートル以上に掘り下げ、世間に通る理屈を付けるため、運河の拡張工事も同時に行うこととした。資金は、南北大運河から得られる収入が莫大なため、潤沢にあった。
問題は、エサである。ただし、エサ代の出費ではない。エサをやる時に人目につけば、自分だけの密かな楽しみが他人に知られてしまうことが問題なのだ。しかし、その問題も間もなく解決した。マッドバロンは、港に入港する船舶に(モンスターのエサとするために)豚や牛を湖に投げ込むことを義務付ける条例を制定し、条例の根拠をそれらしく権威付けるために、運河と湖の神(町の守り神として当時も存在していた)に対するお供えという理屈を考え出し、さらに、イベントとして神を祀るためのお祭りも始めた。さらに、モンスターの排泄物を処理するため、(ジャイアントケルプがファンタジー的に巨大化した淡水産の)ウルトラ・ジャイアントケルプを購入し、オクトハーブ湖の西部に配置した。そうすることで、オクトハーブ湖内部で生態系が完結し、環境の悪化を避けることができる。
なお、お祭りの際、宝飾品など高価な品物を湖に投げ入れるのは、お祭りをそれらしく演出すると同時に、財産の隠し場所としても水深70メートル以上の湖の底は最適という判断であろう。遊泳や釣りなどは、湖への転落防止の観点から禁止しているので(これは、モンスターが発見されるリスクも減じるためでもある)、湖底をさらわれる危険はなく、万が一、そのような命知らずがいても、深い湖の底で人知らずモンスターの餌食とされるであろう。




