↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記 外伝 バーン・カニング列伝  作者: 小宮登志子
補論 モンスターの正体と運河地帯保安隊
57/57

モンスターの正体(続き)と運河地帯保安隊

 こうしてオクトハーブ湖に持ち込まれたモンスターであるが、当時のマッドバロンが徹底して秘密主義を貫いたため、記録が残されることもなく、モンスターの存在が口伝で子や孫に伝わることもなかった(単に言い忘れていただけとも考えられる)。したがって、男爵家の当主であったフランク・ヴィンセント・ハンフリー・オクトハーブにとっても、湖でのモンスターの出現は晴天の霹靂であり、戦いの中で命を落としたことは、まさに非業の死と言えるのではないか。なお、モンスターがどうして儀式の最中に出現したのかは謎である。チャーリーやバーンが泳いでいるのに気がついて、イルカなどと間違えて、つい水面付近に浮上してしまったのだろうか?

 ともあれ、以上が、バーンたち一行が絡んだことにより、とんでもない事件が引き起こされてしまった、オクトハーブの町での一部始終である。


 ついでにもう一つ、オクトハーブ前男爵に仕える戦士が意外と勇猛果敢にモンスターに立ち向かい、撃退に成功したことに対し、疑問を抱かれる向きもあるのではないか(通常、町の衛兵といえば、単なる「やられ役」に過ぎないのだから)。

 ただ、これは、理由のないことではない。

 本編中に紹介したように、オクトハーブ前男爵に仕えていた戦士たちは、男爵家がかつて帝都で金融業「幸せのハンフリー銀行」を営んでいた頃から仕えてきた譜代の家臣団である。また、そればかりではなく、運河を外敵による侵略から守るため、日夜、厳しい訓練にいそしんでいる。だから、ぶっちゃけ、「強い」ということである。

 では、どうして、運河地帯のさほど大きくはない町、オクトハーブ自由市を統治するために、そのように強力な軍事組織が必要となるのか。

 オクトハーブ男爵家が経営する運河会社は、南北大運河の船舶の航行を管理するのが仕事である。ただ、航行の管理といっても、何時にどこの船が運河を北上し、どこの船が運河を南下し、どこそこで行き違う等々……といった、単なる交通整理だけが(これも非常に重要な役目であるが)仕事のすべてではない。

 運河会社には、船舶の航行の安全を確保する責務があるが(誰しも、危険であれば利用を躊躇するだろうから)、安全の確保とは、運河の破損箇所の補修のような、設備面の話だけのことではない。結論的に言うと、帝国政府に国内の隅々まで目を光らせる実力がないという中世ヨーロッパ的な世界においては、運河会社にも、相応の実力・戦闘力を備えた軍事組織がどうしても必要となるのだ。目的は、航行する船舶間でのトラブルの仲裁やその防止のほか、ところ構わず出没する窃盗団・強盗団の取締りのためである。

 実は、オクトハーブ男爵家のご先祖(当時はハンフリー家)は、南北大運河の開通前から「幸せのハンフリー銀行」の番頭や使用人を中核として独自の軍事組織の整備を進めており、運河開通時に帝国政府から、運河地帯一帯の警察権の行使を認められるに至った。この軍事組織は、身分秩序の関係で「騎士団」を名乗ることは許されず、「運河地帯保安隊」と、実に安直な名称を与えられることとなったものの、「騎士団よりも騎士らしく」が合い言葉となるほど、その士気や実力は極めて高いものであった。

 運河地帯保安隊員が運河地帯に居住する住民のあこがれの的になったり、「彼氏にするなら運河地帯保安隊員、でも結婚はやめとけ」などと人々にささやかれたり、運河地帯保安隊にまつわる話も数多くあるが、ともあれ、以上のようなことが、オクトハーブ前男爵に仕える戦士が精強で、モンスターの撃退に成功した理由である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。