事件の結末
こうして、バーンとチャーリーにとって悪夢のような時間が終わった。
その後、詳細は省略するが、ともかくも「町一番の有力者宅における人質籠城事件」は解決した。その有力者の要請を受け、その地方一帯を治める領主が騎士団を派遣したからである。最初からそうしておけばよかったのだが、そう簡単にいかないところが「大人の事情」である。
人質にされていた令嬢は、身体的・肉体的には無傷であったが、世にもおぞましいものを見せつけられたこともあり、精神的にはかなりのダメージを負っていた。また、ラードは騎士団と戦うことなく逃亡し、行方をくらました。
こうして終わってみれば、バーンたち一行にとっては任務失敗。報酬は得られず、その代わりではないが、チャーリー・ウッズが非常に不本意な形で仲間に加わることとなった。おそらく、バーンもチャーリーも、お互い顔も見たくないというほど嫌い合っているに違いない(理由は説明するまでもないだろう)。しかし、二人の距離が30メートル以上離れると、お互いに猛烈な痛みに襲われるのだ。離れたくても離れられないという(もし、今後、マリーナがチャーリーと立場と入れ替えることができるなら、彼女は大歓迎かもしれないが)、そういう因果な関係になってしまった。
ただ、この事件が、パーティーメンバーにとって、絶対に思い出したくない事件であることは、間違いない。そこで、事件は、バーンたち一行の間では一種のタブー、アンタッチャブルとされ、口にしないことが暗黙のルールとなった。
さて、そろそろ話を現在に戻そう。
シーフギルドの前では、バーンたち一行がチャーリーを待っているところである。
突然、バーンが「うがぁ!」という声を上げ、転げ回って苦しみだした。マリーナはバーンに駆け寄り介抱しようとするが、これはラードの呪いによるものだから、バーンの痛みはどうにもならない。
「くっ、くそっ、あのコソドロめっ!」
程なくして痛みが治まったのか、バーンは立ち上がり、悔しそうに言った。なお、バーンと同時にチャーリーも苦しんでいるはずである。今ラードの呪いの効果が発動したのは、おそらくチャーリーの「うっかり」であり、悪気はなかったであろう。
バーンの痛みが治まって数分後、シーフギルドの入口のドアが開いた。
「待たせたな」
シーフギルドから出てきたチャーリーが、ぶっきらぼうに言った。
バーンは内心では、ラードの呪いの効果の発動に関してチャーリーに文句の一つでも言いたいところであっただろう。しかし、とにかくモンスターの情報が欲しくてたまらないバーンは、今回に限って大人の対応、
「いや、そうでもない。ところで、モンスターは? モンスターの裏情報は?」
「モンスターか、そうだな……」
チャーリーは、ふと口をつぐんだ。そして、どういうわけか、うつむき加減に腕を組み、何か考えている様子。
「どうした? モンスターだ、モンスターだよ!」
バーンはチャーリーの両肩をつかまえ、激しく揺すぶる。
しかし、チャーリーはバーンの手を振り払い、ひと言、
「悪いな。今日は疲れた。明日ゆっくり話してやるよ」




