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ザ☆旅行記 外伝 バーン・カニング列伝  作者: 小宮登志子
第4章 なかったことにされた過去
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伝説の男

 無法者集団の首領、キム・ラードは、シャリンと音を立てて錫杖で床を突き、立ち上がった。相当に頭に来ているのだろう、真っ赤になった顔を文字どおりクシャクシャにして、バーンをにらみつけている。

 しかし、バーンはラードの顔を指さし、露骨に嘲笑や侮蔑を浴びせかけるばかり。サイラスやマリーナが「いくらなんでも言い過ぎ」と、やめさせようとしても、バーンは「こんな、混沌のモンスターみたいな……(略)……」と、まったく聞く耳を持たない。

 やがてラードは、「とうとう堪忍袋の緒が切れた」といったところであろう、

「若いの、キサマだけは、絶対に許さんぞ!」

 と、錫杖を高く差し上ると、その先で思い切り床を突き、魔法の言葉であろう、何やら意味不明な叫び声を上げた。


 すると、不思議なことに……

「うっ……!?」

 瞬間、バーンはうめき声を上げた。しかし、ただ、それだけであった。どういうことかというと、ラードが叫び声を上げた次の瞬間には、バーンの体は麻痺し、口を動かすことさえできなくなっていたのだ。

 のみならず、動けなくなったのはバーンだけではなかった。サイラス、マリーナ、エディ、ジギスムントも、その場にフリーズ、すなわち固まってしまった。

「若いの、チャンバラの真似事しかできないくせに、言ってくれるじゃないか」

 ラードは錫杖をバーンの胸元に突き入れた。バーンはバランスを失い、同じ姿勢のまま、その場に後ろ向きに(仰向けに)倒れ込む。

 ラードは、サイラス、マリーナ、エディ、ジギスムントをひととおり見回すと、

「キサマら、仲間の過ちはパーティー全体の過ちでもある。つまりは連帯責任だな。この私、キム・ラードを怒らせるとはどういうことか、その身をもって知るがいい!」


「……!」

 その「キム・ラード」という名を耳にしたとき、サイラスはハッとした(しかし、麻痺の魔法にかかっていて、口は動かせない)。その名前は、「どこかで聞いたような……」という程度のものでは、なかった。サイラスが学んだ魔法アカデミーにおいて、耳にタコができるほど聞かされていた名前であった。

 ラードはサイラスに目をやり、

「おい、そこの魔法使いさんよ、あんたがモグリでなければだが、この私の名前くらい、知ってるよな」

 と、ニヤリ。実は、キム・ラードの名は、「魔法アカデミー始まって以来の俊英」、「魔法アカデミー歴代最高実力者ベスト10」などの勇名をもって、魔法アカデミーに轟いていた。特に、ラードが「一身上の都合」により魔法アカデミーを去ろうという日、彼を闇討ちにしようと待ち構えていた師範数名を、反対に返り討ちにして半殺しにしてしまったことは、魔法アカデミーでは伝説として語り継がれていたのだ。

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