かなり格上の魔法使い
「さて、どうしてくれよう……」
ラードはバーンを見下ろし、考えている。ラードにとって、魔法の力によってバーンを消し去ること程度なら、極めて簡単なことである。
しかし、簡単に終わりにするのでは面白くない。できるなら、苦痛や屈辱を味わいつつ、無力感にさいなまれながら憤死するように持って行きたい。ただ、自分から見ても分かるくらい、ほとんど素人の戦士とも言えるバーンに、それほど手間をかけるのも面倒である。なので、「どうしたものかな」といったところ。
なお、ある魔法使いが別の魔法使いに対して魔法をかける場合は、原則として、魔法をかけられた相手の魔力がより強力であれば、その魔法は効力を発揮しない。また、例えば不意打ち等の事情により、一時的に魔法が効果を現したとしても、かけられた相手は、事後的に魔力を行使することで、発効中の魔法を無効化することができる。
つまり、サイラス、マリーナ、エディも魔法を使うことができるので、仮に彼らの魔力がラードより強力であったとしたら、ラードの金縛りの魔法にはかからなかったということである。しかし、実際には、サイラスもマリーナもエディも、ラードの金縛りの魔法によって、まったく手も足も出ない状態。したがって、実力的には、ラードの方がかなり格上の魔法使いということになる。
ラードは「う~ん」と腕を組み、その場で短い距離を行ったり来たりしていたが、
「ん? そうだ、こいつもいたんだな」
と、縛られて転がされている風采の上がらない男に顔を向けた。ラードは、その男を縛っているロープをほどくと(正確には、小型のナイフでロープを切断すると)、顔を激しく歪ませてニヤリとし、
「そういえば、おまえ、コソドロさんよ、さっきはウンコしたいと、言ってたな」
すると、「コソドロ」呼ばれた風采の上がらない男は、少しムッとしたのか(ラードは、先刻、既に縛られていたこの男には、金縛りの魔法をかけなかった)、
「俺はチャーリー・ウッズだ。『コソドロ』はやめてくれ」
「なんだと、チャーリーだって? まあ、別に、なんでも構わんがな。じゃあ、チャーリーさんよ、あんた、さっきはこの小僧にボロクソに言われただろう。だからな……」
そして、ラードはチャーリーの耳元で、何やらゴニョゴニョとささやいた。
チャーリーは、最初のうちはラードの話を「うんうん」とうなずいて聞いていたが、やがて、顔を真っ赤にして、
「ち、ちょっと待て! そっ、そんなこと、できるか!!」
「どうした、イヤなのか? しかし、おまえさんには、選択肢はないんだぜ」
ラードは、右手の指をパチンと弾いた。すると、チャーリーは「うがっ」と両手で頭を抱え、苦痛に顔を歪ませ、右に左に転がりだした。実は、これも、チャーリーに耐え難い苦痛を与えるという、ラードの魔法である。




