残るはひとり
バーンが剣を抜くと、無法者たちも同様に各々の剣を抜き、「問答無用」とばかりに襲いかかってきた。バーンは「うぉ-!」と叫び声を上げ、斬り込んでいく。声の大きさだけなら、バーンは一人前、いや、それ以上に一級品である。
そして、例によって毎度のパターンであるが、マリーナ、サイラス、エディ、ジギスムントも「しょうがない」という顔でバーンに続いた。
なお、現在の状態において戦闘行為に入るということは、人質にされている令嬢の目の前で、流血や殺害等の好ましくない状況が展開されるということであるが、バーンはそこまで考えが回っていない。
そして……
「よしっ! 悪者め、思い知ったか!!」
戦闘は、やはり例によって、バーンの活躍は皆無(いや、むしろマイナス)であったが、バーンたち一行の勝利に終わった。バーンというお荷物やエディのような直接戦闘に不向きのメンバーを抱えながら、自分たちと同数以上の敵を撃破するのだから、マリーナ、サイラス、エディ、ジギスムントのそれぞれの得意分野における実力は、相当なものと評価できるだろう。
こうして、剣を持った無法者が成敗されたことにより、残るは、黒いフード付きローブの人物ただひとりとなった。しかし、その人物は右手に錫杖(魔法の杖としてであろう)を持ち、慌てず騒がず悠然として、玉座のような椅子に腰掛けている。ただ、その表情は、頭をスッポリと覆うフードに隠れていて見えない。
勝ち誇ったバーンは、黒いフード付きローブの人物に剣を突きつけ、
「さあ、仲間たちは、全員、やっつけた。残るはおまえだけだ。今すぐ降参するなら、命だけは助けてやってもいいぞ!」
「ふっ…… 威勢がいいねえ、若いの」
しかし、黒いフード付きローブの人物は、まったく動じる様子がない。
その時、サイラスが、何を思ったか、一歩前に歩み出てバーンを制し、
「彼……バーンの言うとおり、降伏するなら今のうち。それはそうですが、ところで……」
サイラスは、玉座のような椅子の前で縛られ転がされている風采の上がらない男に、ちらりと目をやった。
「ところで、この男…… 女性は人質にされているという令嬢なのでしょうが、この男は、一体、何者なんですか?」
「何、この男だって??」
予想外の問いに、黒いフード付きローブの人物は少々面食らっているようだ。
サイラスの質問は、非常につまらない……通常一般人にとっては、別にどうでもいいような話である。しかし、美人以上に知識の収集を好むサイラスにとっては、疑問点の解消は至上命題であり、どんなささいなことであっても疑問を解かなければ先に進めないということが、往々にしてあった。




